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浙江の茶文化を学際的に探る 東アジア海域叢書8 新刊

浙江の茶文化を学際的に探る

◎小島毅 監修 『東アジア海域叢書』 8 第15回配本 最新刊!

著者 高橋忠彦
ジャンル 東洋史(アジア)
東洋史(アジア) > 宋元
東洋史(アジア) > 明清
シリーズ 東アジア海域叢書
出版年月日 2023/09/27
ISBN 9784762929489
判型・ページ数 A5・532ページ
定価 9,900円(本体9,000円+税)
在庫 在庫あり
 

目次

序(高橋 忠彦)

第一部 浙江茶文化の形成
『茶経』を中心とした浙江茶文化の研究(高橋 忠彦)
日本緑茶遺伝資源の渡来とその経路(山口  聰)
陶瓷史よりみた浙江の茶文化
  ――『茶経』〝盌の条″に記される〝盌″と〝甌″(水上 和則)
飲食生活における茶――唐宋の浙江を中心として――(関 剣 平)

第二部 浙江茶文化の諸相
  『斎居紀事』――文人生活の手引書に見る硯屏と喫茶法――(舩阪富美子)
  浙江の乳茶文化(祁 玫)
本草から見た浙江茶文化と日本(岩間眞知子)
茶文化と空間――東アジアの伝統建築再考(松本 康隆)

第三部 資  料
茶経全訳注(高橋 忠彦)

あとがき(高橋 忠彦)          
執筆者紹介          
英文目次

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内容説明

【序より】(抜粋)
 本書は基本的に、特定領域研究「東アジアの海域交流と日本伝統文化の形成――寧波を焦点とする学際的創生」の「茶文化班」の成果として作成されたものである。ただ、喫茶文化全体から考えると、寧波周辺に限定するより、浙江全体、場合によっては江南全体を視野に入れる必要があると判断し、「浙江の茶文化を学際的に探る」と題したものである。今回は、「茶文化班」のメンバーに加え、新進気鋭の研究者にも依頼し、浙江の茶文化の全体像を学際的に捉えようと試みたが、多様な視点を読者に提供するのが目的であり、相互間の見解を調整することはしなかった。全体を三部構成とした。
 第一部「浙江茶文化の形成」は、浙江茶文化の全体像を捉えようとしたもので、四篇の論考からなる。高橋の「『茶経』を中心とした浙江茶文化の研究」は、文献を中心にして、漢より明に到る中国茶文化を概観し、その中で浙江の茶文化が重要な位置を担っていたことを明らかにしたものである。全体は三章に別れ、第一章「唐代以前の茶文化の展開」では、唐以前のチャの呼称の地域性に注目し、四川発祥の「荈」文化が、 中原の古典文化の「荼」と習合しながら、浙江を含む江南の土着の「茗」文化との競合の中で消滅に向かうことを論じた。……第二章で論じたように、「煎茶」文化が、陸羽の手によって湖州で完成したことは、茶があくまでも江南文化の一部として成熟し、その後全国に普及したことを示している。白居易が、茶を文人生活の重要な要素と認識したことは、後世へ決定的な影響を与えたが、その時点ですでに、茶は江南文化として認識されていたと思われる。第三章の「宋代以降の茶文化と浙江」では、福建に茶文化の重心が移行した宋代に於いても、浙江を中心とした江南では、「草茶文化」が隆盛していたことを明らかにした。……
 山口聰氏の「日本緑茶遺伝資源の渡来とその経路」は、植物学の専門家である筆者が、東アジア各地に渡る茶樹の現地調査に基づいて考察したものである。中国と日本の茶文化の関係を論ずるなら、端的に言って、中国のどの地域の茶樹が日本に導入されたかを明確にする必要がある。その問題に関し、筆者は、杭州から寧波にかけての茶樹調査を行い、雄蕊の形態や、コーロ種の発現等の観点から、そのあたりの茶樹が、日本の茶樹と近似した特徴を持つことを確認したものである。……
 水上和則氏の「陶瓷史よりみた浙江の茶文化――『茶経』の〝盌の条″に記される〝盌″と〝甌″」は、浙江省の陶磁史を、青磁の生産で知られる越窯を中心に論述し、更に『茶経』に見える茶碗つまり「盌」と「甌」が、具体的にどのような器物として理解できるかを論じている。茶器の形状の違いは、『茶経』に記されている喫茶法と密接に関わるものであり、重要な問題である。……
 関剣平氏の「飲食生活における茶――唐宋の浙江を中心として――」は、喫茶文化を、飲食文化という、より広い視野から、通時的に、また共時的に捉えようとしたものである。……本論の主たる部分は、唐宋の茶の生産加工と流通消費に関する社会経済史的考察であり、顧渚茶と日鋳茶という名茶の生産、臨安の喫茶文化等、浙江が重要な地域であったことが確認できよう。
 次に第二部「浙江茶文化の諸相」として、四篇の論考を収めた。舩阪富美子氏の「陸游『斎居紀事』――文人生活の手引書に見る硯屏と喫茶法――」は、陸游の名を冠した『斎居紀事』に基づき、その詳細な読解を通じて、文人生活の具体相を論じたものである。特に重視されるのは、文房具・調理・喫茶である。特に本書の中心的課題である喫茶文化に関して言えば、黄庭堅が述べた、草茶を点茶法で飲用する方法を、継承発展させていることが明らかにされているのが、殊に興味深いところである。
 祁玫氏の「浙江の乳茶文化」は、茶文化における乳製品の位置付けに関し、通時的な論考を行ったものである。伝統的な理解では、中国の洗練された喫茶文化は、『茶経』を出発点として、明の文人茶の完成期に至るまで、純粋な茶の味の追求に終始している。つまり、生薑や胡椒といった、ハーブ・スパイスはもとより、乳酪製品も排除されていく傾向になる。茶に他の夾雑物をいれない習慣は、「清茶文化」といわれる。これに対し、祁玫氏は、乳製品を茶に入れる文化を「乳茶文化」と名づけ、その重要性を指摘しているものであり、茶文化を多角的に見ることを教えてくれている。……
 岩間眞知子氏の「本草から見た浙江茶文化と日本」は、本草学と茶文化の関わりを通時的に論述している。前半の中心になるのは陶弘景の『神農本草経集注』に於ける茶文化の記述であり、従来見過ごされてきた諸問題を論じている。……明清時期の浙江は、緑茶の産地として知られるようになるが、後半部で、それらの茗茶について、『本草綱目拾遺』の記事を紹介されているのは、近世の浙江茶文化の資料として重要である。
 松本康隆氏の「茶文化と空間――東アジアの伝統建築再考」は、中国の茶文化と建築文化が、日本に与えた影響を論じたものである。第一章「浙江の茶文化と園林建築」では、中国の茶人(杭州の許次紓が一つの典型とされる)が理想とした喫茶空間の実現としての、明清に発展した江南(浙江・江蘇)の庭園建築(園林建築)を調査・分析したものである。それを承けた第二章「近代日本の茶文化空間に見る中国文化空間の影響」は、近代日本の茶室建築論を通時的に論述し、「明・清時代の中国茶文化空間の影響は、抹茶室、煎茶室を含む幕末以降の日本の茶文化空間全体に及んでいる可能性」を指摘している。題名にも「再考」とあるように、従来の「抹茶室」を核とした茶室論に対し、中国と日本の文化状況を踏まえた、より重層的な視点を提言している。
 第三部は、浙江茶文化を考える上で重要な古典として、『茶経』の訳注を、資料として掲載したものである。



East Asian Maritime World Series Vol.8

Interdisciplinary Studies of Tea Culture in the Zhejiang Area







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