目次
第一部 日常文化と環境
海をとりまく日常性の構造 岡 元司
寧波地域の仏教寺院と茶文化の興隆――寧波地域の地理環境と社会―― 山口 聰
第二部 渡海と環境
〝風をつかみ海流にのり又のりこえる〟 吉尾 寛
朝鮮使行の海路朝貢路と海神信仰――『燕行録』の分析を通して―― 徐 仁範(渡 昌弘訳)
東シナ海域における航海信仰 山内晋次
進貢船航海に関する工学的検討(福州―那覇) 八木 光
十六―十七世紀の台湾海峡を通過した人々と環境 松浦 章
第三部 海洋環境と近代
清代中国の海洋観略論 黄 順力(土居智典訳)
〈黒潮〉の認知と東アジアの近代 吉尾 寛
内容説明
【編者のことば】
本書は、東アジア海域とそれをとりかこむ中国大陸・朝鮮半島・日本列島の地理・気候の環境について日常文化(日常性の構造)と関わらせて明らかにするものである。
陸域については、地域開発、農業技術、医学の展開、ならびに仏教寺院と茶文化の関わりに即して述べる。
海域に関しては、過去の海域交流の諸活動を季節風や黒潮等海流の観点から概括的に特徴づけた上で、四つの主な航路即ち朝鮮使行船における黄海ルート、遣明船等々における寧波―博多ルート、進貢船における福―那覇ルート、および台湾海峡ルートに即して、航海信仰、操船技術、渡海環境のあり方について述べる。
そして、清代・東南部沿海地域の知識人の海外世界に対する探求意識、航海者たちが黒潮をはじめとする海流等を認知していく過程を通して、東アジア海域世界の近代への道のりを示そうとするものである。