内容説明
【編者のことば】
本書は、日本江戸期の中庸注釈を中心として、四書の学とその注釈学を東アジア海域文化交流の展開の中に位置づけ、東アジア近世儒学を捉える視座を革新しようとするものである。
第一部は、四書注釈の特質とその意義を、それがもと生まれた中国を中心化した視座からではなく、中国、朝鮮、琉球、江戸期日本の、相関する東アジア海域文化の全体的展開という視座から論じる。二〇〇八年一二月に大阪大学で開催した国際シンポジウム「東アジアにおける近世の『知』と四書注釈」の論議を発展させたものである。
第二部は、江戸期の代表的な中庸注釈もしくは中庸論について、第一部の論議の成果を取り込みつつ個別に論じる。各書物や議論の内容や論点のポイントを読者に精確に伝えるように配慮し、研究の基礎解説として使用できるように論述した。
序 説 編者 市來津由彦
第一部 東アジア海域文化交流からみる四書注釈論
中国における中庸注釈の展開
――東アジア海域交流からみる―― 市來津由彦
王権と中庸――朝鮮朝における―― 朴 鴻圭
徳川儒教と中庸 田尻祐一郎
東アジアの中の林羅山
――四端七情説をめぐって―― 龔 穎
荻生徂徠の中の「中国」
――「古」の創出―― 王 青
近世琉球と朱子学 中村春作
第二部 江戸期の中庸注釈・中庸論
山崎闇斎と崎門学派 田尻祐一郎
山鹿素行 前田 勉
伊藤仁斎 田尻祐一郎
荻生徂徠 中村春作
懐徳堂学派 中村春作
大田錦城 市來津由彦
寛政正学派 前田 勉
陽明学派 本村昌文
附録 朱熹『中庸章句』『中庸或問』論点一覧表 市來津由彦