目次
東海異界小考 高西成介
近代日本における唐宋文言小説の受容――静嘉堂文庫蔵『太平広記』を手掛かりに―― 塩 卓悟
日本版『西遊記』に関する一考察 ――二つの明治期講談速記本を中心に―― 佐々木睦
井上紅梅の研究――彼の生涯と受容史から見たその業績を中心として―― 勝山 稔
清末諸家の漢文教材 木村 淳
語学教科書としての『紅楼夢』 ――東京外国語学校時代の書入を中心として―― 森中美樹
元雑劇と能楽の影響関係について――日中古典演劇比較論争再考―― 林 雅清
内容説明
【編者のことば】
本書は、戯曲小説等の通俗文化の検討を中心に構成している。 冒頭では、まず研究フィールドとなる古代の中国人における海域の認識を古典小説から確認を行い、そして中心的論題となる中国戯曲小説の日本に於ける受容の動態について、文言小説(『太平広記』『夷堅志』)や白話小説(『今古奇観』『西遊記』『金瓶梅』) から事例研究を行う。このような考察を経て、中国の様々な通俗文化が、どのような機会や経緯を経て日
本に受容され、自国文化として受け入れられるようになったのかを考察する。
また、受容された文化が日本独自の文化として変容する過程を、明治期の漢文教科書や語学教科書の事例から検討を試みる一方、更に日本に受容され独自発展を遂げた文化が、再度中国へ逆輸入され、まさに日中間で文化交流が行われる事例についても分析を試み、歴代行われた海域交流の実像を、小説芸能の分野から多角的にアプローチを試みたい。