目次
清初における浙江沿海の秩序形成と地方統治官 山本英史
裁かれた海賊たち――祁彪佳・倭寇・澳例―― 三木 聰
明清都市民変研究の再検討――集合行動の角度から―― 巫 仁恕(吉田建一郎訳)
清初の江南における文武の権力関係 ピエール・エティエンヌ・ヴィル(梅川純代・大道寺慶子訳)
民間家族文書から見た清代台湾海峡両岸における移民のパターン 陳 支平(吉田建一郎訳)
地方官と辺彊行政――十九世紀前半期、中国雲南・ベトナム西北辺彊社会を中心に―― 武内房司
社会規範としてのベトナム『国朝刑律』の可能性――書誌学的考察より―― 八尾隆生
ベトナム黎鄭政権の地方統治――十七~十八世紀鉢場社の事例―― 上田新也
ベトナム阮朝の辺陲統地――ベトナム・中国国境沿海部の一知州による稟の検討―― 嶋尾 稔
近世琉球の「地方官」と現地妻帯――両先島を例として―― 渡辺美季
スペイン領フィリピンの中国人統治
――支配の正統性原理と総督府あるいは「マニラ市」の利害の交錯するところ 菅谷成子
内容説明
【編者のことば】
十七~十九世紀の東アジア海域世界とは、それ以前の約百年に及ぶ過熱したブームが過ぎ去り、西洋や日本の自立的勢力が姿を消した反面、中国商人の商業活動が活発化し、周辺地域へのヒトとモノの大量進出がそれぞれの地域の政治、経済、文化に大きな影響を与える時代であった。それゆえ、この時代の東アジア海域世界でなお中核の役割を維持し続けた中国の政治組織や統治観念がいかにして周辺および外縁に伝えられ、受容され、変容されて、それぞれの地域形成・秩序形成に影響を及ぼしたかという問題を解明することは、前後の時代の海域世界との比較の点において特有の意義をもつ。
本書はそうした背景から、「移動する各種の中国系の人々」の管理統制と「移植される政治制度・規範」の受容のあり方に具体的な焦点を当て、東アジアの中核で形成された地方統治の規範がそれぞれの現場でどのように実現したかを問うたものである。