目次
第一章 調査の目的と経過 ………………………………………… 山川 均
第二章 日本国内の宋風石造物
一 東大寺石獅子 …………………………………………………… 大江綾子
二 泉涌寺開山無縫塔 ……………………………………………… 大江綾子
三 その他の宋人石工の作例 ……………………………………… 岡本智子
第三章 中国における石造物調査
一 寧波周辺の石造文化財 ………………………………………… 楊 古城
(鵜木 基行 訳)
二 東銭湖周辺の墓前石像群 ……………………………………… 佐藤亜聖
三 東銭湖周辺以外の墓前石像群 ………………………………… 佐藤亜聖
四 寧波周辺の石材 ………………………………………………… 佐藤亜聖
五 東銭湖石造群の制作地について ……………………………… 鵜木基行
六 天童寺・阿育王寺・保国寺の石造物 ………………………… 辻 俊和
七 寧波周辺の石造物に見られる制作技法 ……………………… 西村大造
第四章 荷葉蓮台牌について ……………………………………… 大江綾子
第五章 北宋皇帝陵の石獅子から東大寺石獅子へ ……………… 藤澤典彦
第六章 石材加工技術の交流 ……………………………………… 佐藤亜聖
第七章 寧波の石造文化と日本への影響(総論) …………………………………… 山川 均
あとがき(山川 均)・執筆者紹介・索引・英文目次
内容説明
【編者のことば】
鎌倉時代初頭、大陸から渡来した石工たちがいた。彼ら宋人石工は、戦乱で焼亡した東大寺の復興に従事したのである。復興が一段落ついた後、彼らやその子孫たちは、この国に優れた多くの石造物を残した。
本書は、彼らの出自を寧波と措定し、彼の地における石造文化の実態を探った、三年にわたる調査の報告である。
この調査により、寧波には今まで知られていなかった優れた石造文化が存在していたことを日本の学界に明示することができた。さらに、渡日した宋人石工の故地と、その技術的背景を明らかにした。
鎌倉時代は、日本の石造文化における最大の転換期であった。しかし大陸に起源を有する文化は早々に爛熟を迎え、続く南北朝時代には早くも衰亡の途を辿った。
本書がトレースする日本石造文化の根源とその定着に関するプロセスは、ひとり石造文化のみならず、造形文化というものが歩むモデルケースの一つとしても興味深い。ご一読いただければ幸いである。