目次
第一部 東アジアの平泉
平泉起源考 ………………………………………………………………………………………… 藪 敏裕
平泉「北方王国」と平泉の三つの富 …………………………………………………………… 斉藤利男
中尊寺文書正和二年衆徒申状の周辺――鎌倉後期の中尊寺権別当―― …………………… 菅野文夫
平泉 音の古層――中尊寺供養願文のサウンドスケープ―― ……………………………… 木村直弘
《蝦夷王義経誕生》序説 ………………………………………………………………………… 中村一基
世界文化遺産平泉の調査を振り返って ………………………………………… 林 士民(大井さき訳)
世界遺産教育「平泉」の可能性 ……………………………………………………………… 今野日出晴
第二部 東アジアにおける平泉庭園
飛鳥から平泉へ――発掘庭園史から―― ……………………………………………………… 三浦謙一
平泉の「都市」計画と園池造営 ………………………………………………………………… 佐藤嘉広
平泉造園思想に見る仏教的要素――平泉庭園と仏会―― …………………………………… 誉田慶信
魯国古池の現在位置について――文献学的視角からの考察を中心に―― …… 陳 東(栗山雅央訳)
「壺梁」の意義の解明に向けて ………………………………………………………………… 劉 海宇
唐代東都の庭園遺跡及び造園の特徴に関する研究 …………………… 李徳方、馬依莎(渡辺雄之訳)
済南霊岩寺と神通寺の水景配置について ……………………………………… 崔 大庸(黄 利斌訳)
あとがき 藪 敏裕
執筆者紹介・英文目次
内容説明
【編者のことば】
平泉研究は多方面にわたり、汗牛充棟のごとき成果があり、すべて論じ尽くされたかのようである。しかしながら平泉と東アジアとの歴史的・空間的な結びつきを検証する視点からの研究は未着手に近い。たとえば、平泉の庭園や遺跡群は、十二世紀の状態がそのまま残り、世界史的に見ても当時の仏国土(浄土)の理想郷を今日に伝える数少ない事例とされる。したがって平泉研究は、未発掘のままの中国唐代以前の庭園の実態や、平安期庭園の実態解明など、東アジアにおける庭園の空間構成を学術的に解明する上で、独創的な観点を提供する絶好の素材ともなりうるものである。
本書はこのような問題意識のもと、平泉文化、特に庭園を中心に、比較文化史・交流史の観点から、主に海域交流を通じて形成された平泉の「国際性」とその本来の「地域性」に注目し、日本という枠を超えた、「東アジアの平泉」の実像を捉え直そうとしたものである。
読者の皆さんには、平泉が、また東北が、深く東アジアと結ばれていたことを再認識していただきたい。