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詳注全訳水滸伝 第一巻

詳注全訳水滸伝

◎原文の味わいをいかに伝えるか。渾身の『水滸伝』訳注書発刊!

著者 小松 謙
ジャンル 中国古典(文学)
中国古典(文学) > 唐宋元
中国古典(文学) > 明清
シリーズ 詳注全訳水滸伝
出版年月日 2021/08/18
ISBN 9784762966804
判型・ページ数 A5・320ページ
定価 7,700円(本体7,000円+税)
在庫 在庫あり
 

目次

 全十三巻(全一百回)
 
 第一巻  第一回配本(二〇二一年七月刊)
引 首  
第一回 張天師 疫病を祓(はら)い  洪太尉 誤って妖魔を放つ       
第二回 王教頭 私(ひそ)かに延安府に走り 九紋龍 大いに史家村を鬧(さわ)がす
第三回 史大郎 夜 華陰県より走り 魯提轄 拳もて鎮関西を打つ   
第四回 趙員外 文殊院を重修し 魯智深 大いに五台山を閙(さわ)がす
第五回 小覇王 酔って銷金の帳に入り 花和尚 大いに桃花村を鬧(さわ)がす 
第六回 九紋龍 赤松林に剪逕(おいはぎ)し 魯智深 火もて瓦罐寺を焼く

 第二巻  第二回配本(二〇二一年十二月刊行予定)
第七回 花和尚 倒(さかさ)に垂楊柳を抜き 豹子頭 誤りて白虎堂に入る      
第八回 林教頭 滄州の道に刺配され 魯智深 大いに野猪林を鬧(さわ)がす
第九回 柴進 門に天下の客を招き 林冲 棒もて洪教頭を打つ     
第十回 林教頭 風雪山神廟 陸虞候 火もて草料場を焼く
第十一回 朱貴 水亭に号箭を施し 林冲 雪夜梁山に上る       
第十二回 梁山泊に林冲落草し 汴京城に楊志刀を売る
第十三回 急先鋒 東郭に功を争い 青面獣 北京に武を闘わす

 第三巻
第十四回 赤髪鬼 酔いて霊官殿に臥し 晁天王 義を東渓村に認む
第十五回 呉学究 三阮を説きて撞籌(なかまいり)させ 公孫勝 七星に応じて聚義す
第十六回 楊志 金銀担を押送し 呉用 智もて生辰綱を取る     
第十七回 花和尚 単(ひと)り二龍山を打ち 青面獣 双(ふたり)ながらに宝珠寺を奪う
第十八回 美髯公 智もて挿翅虎を穏(なだ)め 宋公明 私(ひそ)かに晁天王を放つ
第十九回 林冲 水寨に大いに併火(なかまわれ)し 晁蓋 梁山に小泊(やや)を奪う   
第二十回 梁山泊に義士 晁蓋を尊び 鄆城県に月夜 劉唐を走らす

 第四巻
第二十一回 虔(とりもち)婆(ばばあ) 酔いて唐牛児を打ち 宋江 怒りて閻婆惜を殺す
第二十二回 閻婆 大いに鄆城県を閙(さわ)がせ 朱仝 義もて宋公明を釈(ゆる)す
第二十三回 横海郡に柴進 賓をとどめ  景陽岡に武松 虎を打つ
第二十四回 王婆 賄を貪りて風情を説き 鄆哥 不忿(いか)りて茶肆を閙(さわ)がす
第二十五回 王婆 計もて西門慶に啜らせ 淫婦 薬もて武大郎を鴆す
第二十六回 鄆哥 大いに授官庁を閙(さわが)がせ 武松 闘いて西門慶を殺す

 第五巻
第二十七回 母夜叉 孟州道に人肉を売り 武都頭 十字坡に張青と遇う 
第二十八回 武松 威もて安平寨を鎮め 施恩 義もて快活林を奪う
第二十九回 施恩 重ねて孟州道に覇たり 武松 酔いて蒋門神を打つ
第三十回 施恩 三たび死囚牢に入り 武松 大いに飛雲浦を閙(さわ)がす
第三十一回 張都監 血は鴛鴦楼に濺ぎ 武行者 夜蜈蚣嶺を走る    
第三十二回 武行者 酔うて孔亮を打ち 錦毛虎 義もて宋江を釈す
第三十三回 宋江 夜小鰲山を看(み) 花榮 大いに淸風寨を閙(さわ)がす

 第六巻
第三十四回 鎮三山 大いに青州道を閙(さわ)がせ 霹靂火 夜瓦礫場を走る
第三十五回 石将軍 村店に書を寄せ 小李広 梁山に雁を射る
第三十六回 梁山泊 呉用 戴宗を挙げ 掲陽嶺 宋江 李俊に遇う   
第三十七回 没遮攔 及時雨を追趕し 船火兒 大いに潯陽江を閙(さわ)がす
第三十八回 及時雨 神行太保に会い 黑旋風 浪裏白跳と闘う     
第三十九回 潯陽楼に宋江 反詩を吟じ 梁山泊に戴宗 仮信を伝う
第四十回 梁山泊の好漢法場を劫し 白龍廟に英雄小聚義す
 
 第七巻
第四十一回 宋江 智もて無為軍を取り 張順 活きながらに黄文炳を捉う
第四十二回 還道村 三巻の天書を受け 宋公明 九天玄女に遇う
第四十三回 仮(にせ)李逵 剪徑(おいはぎ)して単身を劫し 黒旋風 沂嶺に四虎を殺す
第四十四回 錦豹子 小逕にて戴宗に逢い 病関索 長街にて石秀に遇う
第四十五回 楊雄 酔うて潘巧雲を罵り 石秀 智もて裴如海を殺す
第四十六回 病関索 大いに翠屏山を閙(さわ)がせ 拼命三 火もて祝家荘を焼く
第四十七回 撲天鵰 双つながら生死の書を修め 宋公明 一たび祝家荘を打つ

 第八巻
第四十八回 一丈靑 単(ひと)り王矮虎を捕らえ 宋公明 両(ふた)たび祝家荘を打つ
第四十九回 解珍解宝 双(ふた)りながら獄を越え 孫立孫新 大いに牢を劫す
第五十回 呉学究 双つながら連環の計を掌り 宋公明 三たび祝家荘を打つ
第五十一回 挿翅虎 枷もて白秀英を打ち 美髯公 誤りて小衙内を失う 
第五十二回 李逵 殷天錫を打死し 柴進 高唐州に失陥す  
第五十三回 戴宗 智もて公孫勝を取り 李逵 斧もて羅真人を劈る   
第五十四回 入雲龍 法を闘わせて高廉を破り 黒旋風 穴を探りて柴進を救う
第五十五回 高太尉 大いに三路の兵を興し 呼延灼 連環馬を擺布す

 第九巻
第五十六回 呉用 時遷をして甲を盜ましめ 湯隆 徐寜を賺(すか)して山に上す
第五十七回 徐寜 鈎鎌鎗を使うを教え 宋江 大いに連環馬を破る  
第五十八回 三山 義を聚めて青州を打ち 衆虎 心を同じうして水泊に帰す
第五十九回 呉用 金鈴弔掛を賺し 宋江 西嶽華山を閙(さわ)がす  
第六十回 公孫勝 芒碭山に魔を降し 晁天王 曾頭市に箭に中る
第六十一回 呉用 智もて玉麒麟を賺(すか)し 張順 夜 金沙渡を閙(さわ)がす  
第六十二回 冷箭を放ちて燕青 主を救い 法場を劫して石秀 楼を跳ぶ
第六十三回 宋江 兵もて北京城を打ち 関勝 議して梁山泊を取らんとす

 第十巻 以下目次省略

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内容説明

【本書の特色】

 ◎原文の雰囲気を可能な限り自然な日本語に移すことを目指した。

 ◎底本は、完全な本文を残す最古本「容與堂本」(中国国家図書館所蔵)を使用。「容與堂本」本文に問題がある場合は、注釈において指摘し、他本の本文を採用した。

 ◎本文は原則新字を使用。注釈であげる書名は繁体字(正字)、引用は伝統詩文については繁体字、『水滸伝』本文を含む白話文学については、原文の用字をできるかぎり正確に再現した。

 ◎「容與堂本」・「金聖歎本」に附された批評は、中国・日本文学に与えた影響を鑑み全文を翻訳。

 ◎主要版本間の異同を原則としてすべて示し、異同が生じた原因についても可能な限り考察を加えている。

【解説より】(抜粋)

『水滸伝』は中国白話小説の古典として古くから重んじられてきた。「四大奇書」として『三国志演義』『西遊記』『金瓶梅』と並称されるものの、その筆頭が『水滸伝』であることについてはほぼ異論がないといってよい。これは内容のすばらしさゆえというより、白話文という新たな文体、更には白話小説というジャンルが『水滸伝』によって確立されたことに由来するものであろう。
 影響力という点でも、『金瓶梅』『紅楼夢』『儒林外史』など、後続する白話小説は、いずれも『水滸伝』なくしては生まれえなかったといってよい。これらの小説が中国の近現代文学の母体となっていることを考えれば、『水滸伝』はその後の中国文学の源流ともいうべき位置を占めることになる。日本においてもその影響は絶大であり、曲亭馬琴『南総里見八犬伝』をはじめとする読本の多くは『水滸伝』、更には『水滸伝』に附された金聖歎批評の影響を強く受けている。そして、読本が近代日本文学の重要な母体であったことを考えれば、日本においても『水滸伝』の影響は今日にまで及んでいるといってよい。言語の面においても、馬琴などを通して導入された『水滸伝』の白話語彙の多くは、そのまま日本語に定着し、今日もなお用いられている。それゆえ『水滸伝』は、司馬遷の『史記』や杜甫の詩とも肩を並べる中国文学の古典として、中国のみならず、日本においても認識されてきた。しかし『水滸伝』について『史記』や杜甫の詩に対して行われているような、本文に厳密な校訂を加え、詳細な注釈を加える作業は、中国においても、日本においても、これまでなされたことがない。これは、いかに古典的作品であろうと所詮は白話文学であり、文言の諸作品に対するような取り組みを必要とするものではないという意識がどこかに残っているためかもしれない。また、特に中国においては、『水滸伝』の本文は現代中国語に近いものであるだけに、注釈がなくても読めると一般に考えられていることも一因であろう。
 『水滸伝』の本文について、大まかに意味を取ることがそれほど難しくないのは確かである。しかし、厳密に読もうとすれば多くの問題点に遭遇することになる。更に、文中に見えるさまざまな名称の意味となると、それを正確に理解している読者はほとんどいないであろう。しかも、本文中に挿入された詩詞韻文には典故を踏まえた表現が多く認められ、これらの読解については古典詩文を読む時と同様の方法が要求される。
 もう一つの問題は、白話文学作品の一般的な例に漏れず、『水滸伝』も版本により本文がかなり異なることである。それらの異同の多くは単なるミスではなく、編集者・刊行者の意図が強く反映されたものである。従って、『水滸伝』の全体像を把握しようとすれば、各版本における異同の状況をも知る必要がある。幸い、『水滸伝』の本文異同はおびただしい量に上るものの、『三国志演義』のように異同が多すぎて校勘記を作ることが不可能という水準には達していない。
 以上のような点から、著者は『水滸伝』にも厳密な校勘を加えた上で、詳細な注釈を加える必要があると考えてきた。そして、全文を完全に日本語訳する必要がある。完全な翻訳とは、原文のすべての箇所に対する解釈を明示することを意味し、これ以上の注釈はありえない。
 第一巻は引首から第六回まで、プロローグに当たる伏魔殿から、王進物語・史進物語・魯智深物語と続くくだりである。楊志の登場と生辰綱物語から宋江の登場へと続く梁山泊物語の中核に先立つ、いわば前置き的な部分であり、元雑劇「還牢末」や周憲王朱有燉の雑劇「豹子和尚」に史進や魯智深に関する全く違う物語が見える点から考えても、『水滸伝』の中では遅れて成立した部分と考えられるが、名高い魯達の「三拳打鎮関西」をはじめとして、非常に人気のある部分でもある。叙述の妙と、時には深読み過ぎるとも思える金聖歎の批評にご注目いただきたい。

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