目次
第Ⅰ部 研究の視角と方法
第1章 中国経済のあゆみと課題
1 中国経済史をなぜ学ぶか
2 急成長の歴史的背景
3 長い歴史と近代化の立ち遅れ
4 中国経済の特質をめぐって
第2章 戦間期中国経済史の研究視角をめぐって――「半植民地半封建」概念の再検討
1 毛沢東の「半植民地半封建社会」論
(1)帝国主義の侵入と中国経済の資本主義化の関係
(2)中国資本主義の特質
(3)中国経済の中の封建制と資本主義との関係
2 1930年代の諸論争
(1)「中国社会性質論戦」とその後の研究
(2)「中国統一化」論争と日本でのその後の研究
3 戦後日本における中国研究
(1)「近代化」論批判と中国研究
(2)小谷―高橋論争をめぐって
第3章 近現代中国の企業経営史研究
1 経営制度と会社法
2 製造業の企業経営
(1)綿紡績業の企業経営
(2)製糸業の企業経営
(3)その他の製造業の企業経営
3 その他の分野の企業経営
第Ⅱ部 経済発展の過程
第1章 中国の工業生産指数、1912-49年
1 1936年以前の綿糸生産量の改訂
2 1936年以前の綿布生産量の改訂
3 戦時綿糸布生産量の再推計
4 生糸、絹人絹織物の生産量と生産額の推計
5 製粉業の生産量と生産額の推計
6 各種の補訂作業
7 結果の検討
第2章 近代中国における機械工業の発展――1860-90年代の上海造船業を中心に
1 中国近代工業の研究史
2 19世紀香港及び上海の外資系造船業の発展
(1)香港地域の造船業
(2)長江航路の発展と上海の造船業
(3)日本の船舶修理業、造船業
3 1860-90年代上海のボイド造船とファーナム造船
(1)ボイド、ファーナム両社の創設
(2)両社の造船事業の展開
(3)両社の経営者、技術者、労働者
(4)両社の経営
おわりに――グローバル経済史への含意
第3章 戦時中国の工業発展
1 重慶政府による鉱工業統計
(1)経済部統計処の鉱工業生産統計
(2)工業生産指数
2 重慶政府統治地域の鉱工業
(1)鉱工業発展の概観
(2)鉱工業発展の隘路
3 中国戦時経済の全体像
4 戦時経済から戦後経済への展開
第4章 戦時重慶の綿紡績業と国民政府
1 戦時重慶における工業の発展
(1)利用可能な統計データ
(2)統計データの含意
2 民間企業と重慶への工場移転問題:1937-38年
3 「意想外の成功」と重慶の活況、1939-41年
4 統制経済下における民間企業、1942-45年
第5章 企業管理公司の再検討
1 1930年代の企業管理公司
2 誠孚信託公司の経営
(1)成立の経過
(2)成立の背景
(3)経営の内容
3 企業管理公司に対する歴史的評価
第6章 20世紀中国農業の発展
1 近代中国経済史に対する見方をめぐって
2 工業化の進展から見た四つの局面
3 農業の発展をどう位置づけるか
第Ⅲ部 国民経済と地域経済
第1章 近代的国民経済の形成
1 市場構造の変容
2 都市と農村
3 沿海と内陸
4 開かれた経済と閉ざされた経済
おわりに――市場圏の重層構造
第2章 内陸開発論の系譜
1 歴史的に形成された内陸地域
2 抗日戦争に備える内陸開発論、1930年代
3 西北開発論をめぐる中央と地方、1930年代
4 内陸開発優先論の台頭とその抑制、1950年代
5 先鋭化した内陸開発優先論、1950年代末~70年代
第3章 日本の侵略前夜の東北経済――東北における中国品の動向を中心に
1 中国の中の東北――東北経済の分析視角をめぐって
2 東北市場における中国品の進出
3 中国品進出の諸要因
(1)生産面における競争力の強化
(2)流通面における従来からの優位の保持
(3)民族主義的な民衆運動と経済政策の効果
(4)大恐慌・銀価暴落など国際経済からの影響
4 九・一八事変の勃発と高まる反日の波――中国品進出がもった歴史的意味
第4章 近代山東経済とドイツ及び日本
1 全般的な趨勢
(1)1861~1897年
(2)1898~1913年
(3)1914~1945年
2 ドイツの影響下の発展
3 日本の影響下の発展
4 中国の経済勢力と日本の経済勢力
第5章 華北地域概念の形成と日本
1 書名に現れた華北地域
2 日本語文献の華北地域概念、1870~1900年代
3 日本語文献の華北地域概念、1910~1930年代
4 日本人の華北概念形成の背景
おわりに――日本人の華北認識の歴史的意味
第Ⅳ部 日本による工業調査
第1章 興亜院の中国実態調査
1 中国調査の機構と課題
2 興亜技術委員会
3 華北工業立地条件調査報告
4 華中方面の重要国防資源調査
第2章 戦時華北の工場調査
1 概要
2 調査の精度
3 汪敬虞推計について
4 工場規模と生産性-42年調査による華北工業分析の試み
5 国民所得推計作業との関連性
第3章 日本の戦時華北調査――『華北調査研究機関業績綜合調査』(1945年)をめぐって
1 編纂の経緯
2 本書の構成と内容
3 華北鉱工業の調査
4 その他の実態調査
第Ⅴ部 戦後の展開
第1章 対外貿易における変動と連続性、1940‐1950年代
1 戦前から戦時にかけての貿易構造
2 戦後初期の変動
3 1950年代の貿易構造
第2章 1950年代の中国綿業と在華紡技術
1 1950年代初めの綿糸布増産
2 紡織機械製造業と在華紡技術
3 増産の鈍化と統制策の導入
第3章 戦後東アジア綿業の複合的発展
1 東アジア綿業の起源と展開
(1)19世紀末までの発展
(2)20世紀前半の中国綿業
(3)第二次世界大戦後の東アジア綿業
2 香港の勃興
(1)栄家グループ系3社の設立
(2)その他の上海・江南系有力3社
(3)香港の綿糸需要と政庁の支援策
(4)香港綿業の制約条件
3 台湾の綿業振興政策
(1)政府系5工場と有力民間3社
(2)大陸・台湾の小資本が設立した工場
(3)戦後台湾綿業の課題と政府の支援策
4 華北内陸への工場新設
(1)民生重視の綿業振興策
(2)内陸綿業の発展方針
5 江南農村の小工場群
(1)戦時に生まれた小工場群
(2)戦後に小工場がたどった道
第4章 1940‐50年代の中国経済と日中関係
1 大戦終結前後の中国経済と日中経済関係、1940年代
2 1950年代の貿易構造と対外依存性
3 対外依存性克服の努力、1940‐50年代
4 1950年代の日中経済関係
第5章 戦後中国の経済自由主義
1 第二次大戦期英米における経済思想
2 『新路』創刊
3 『新路』執筆陣とその論調
4 『新路』の経済自由主義
5 1949年以降の『新路』グループ
第6章 経済学者の社会主義憲政論――1957年の意見書草稿をめぐって
1 人民共和国成立期の経済と経済学者
2 百家争鳴と経済学者意見書草稿
3 意見書草稿をまとめた6人の経済学者
4 意見書草稿に対する批判と批判者たち
5 その後
結び
史料・文献一覧
事項索引
人名索引
あとがき
内容説明
中国はいまや世界第2の経済大国となった。しかし20世紀初頭の中国経済は欧米諸国に比べて大きく立ち遅れていた。この100年の間に、中国経済にどのような変化が生じ、またそれはなぜ起きたのか。本書はこうした問いに答えるべくさまざまな角度から20世紀中国経済の歴史を分析・解明したものである。
本書は、経済発展に関わる統計的な事実を認識の基礎におき、長期的な見通しのなかで20世紀中国経済を位置づけ、経済発展の要因を資本・技術・人材などが国境を越えて展開した中で把握することの重要性を説いた。本書には、著者によって作成された200近くの経済統計の図表が示される。なかでも最も重要な先行指標とされてきたJohn K. チャン(章長基)の工業生産指数を、著者による推計によって修正を加えて新たな工業生産指数を編成した、第Ⅱ部第1章「中国の工業生産指数、1912-49年」の図表類は圧巻である。本書により20世紀の中国経済の実態が浮かび上がる。