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汲古叢書187 日中戦争期上海資本家の研究  新刊

汲古叢書187 日中戦争期上海資本家の研究

◎戦時期の上海資本家の活動を日中双方の立場から具体的に検証し明らかにする!

著者 今井 就稔
ジャンル 東洋史(アジア)
東洋史(アジア) > 近現代
シリーズ 汲古叢書
出版年月日 2025/02/20
ISBN 9784762960864
判型・ページ数 A5・320ページ
定価 9,900円(本体9,000円+税)
在庫 在庫あり
 

目次

序 章 問題の所在
  Ⅰ 中華民国期の上海              Ⅱ 日中戦争期の上海
Ⅲ 日中戦争期上海研究の課題          Ⅳ 本書の構成
第Ⅰ部 上海資本家と対日協力――綿紡績業の事例から
  第1章 日本占領下の上海における敵産処理の変遷過程と日中綿業資本
Ⅰ 日中開戦と上海の中国紡工場の接収
Ⅱ アジア・太平洋戦争期における「新敵産」と「旧敵産」
Ⅲ 対華新政策と委任経営工場返還の挫折
第2章 戦時期上海における中国紡と日中合作事業――棉花の買付けを事例として
Ⅰ 棉花の買付けに関する合作成立の背景     Ⅱ アジア太平洋戦争の開戦と日中合作の新展開
Ⅲ 商業統制総会の成立と日中綿業資本の合作
第Ⅱ部 戦時期上海の企業経営
第3章 日本占領下の上海におけるマッチ製造業
Ⅰ 日中戦争勃発の影響と日本のマッチ製造業支配 Ⅱ 統制下のマッチ製造業
第4章 永安紡織の戦中戦後
Ⅰ 永安紡と日中戦争
Ⅱ 永安紡の各工場と日中戦争――アジア太平洋戦争勃発まで
Ⅲ 日中戦争後期の永安紡     Ⅳ 日中戦争後の永安紡     Ⅴ 永安第三工場の戦中戦後
第Ⅲ部 戦時期上海と南洋・大後方――上海租界の貿易構造
第5章 日中戦争前期の虞洽卿によるサイゴン米の買付け活動
はじめに――虞洽卿と上海社会
Ⅰ 戦時期上海租界の米事情           Ⅱ 戦時期上海の米行政と虞洽卿の活動
Ⅲ 虞洽卿によるサイゴン米買付け活動推論
第6章 抗戦初期重慶国民政府の経済政策と上海租界――禁運資敵運滬審核辦法の成立過程と上海の商工業
Ⅰ 日本占領地と上海租界
Ⅱ 禁運資敵物品条例・査禁敵貨条例から禁運資敵運滬審核辦法へ
Ⅲ 貿易ルートの変化と辦法の制定
終 章――経済の論理と地域・国家
補 論 日中戦争前夜中国のマッチ製造業と日本――カルテル結成をめぐって
Ⅰ マッチ製造業の不振と生産・販売統制への道
Ⅱ カルテルの運営をめぐる対立         Ⅲ 統税脱税問題とカルテル
文献目録/あとがき/索引/中文要旨・目次 

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内容説明

【序章より】(抜粋)
 1937年8月に日中両国間で激しい市街戦が展開されてから1945年8月の終戦まで、近代中国最大の商工業都市であった上海は、軍事的にも政治経済的にも日本の強い影響下にあった。……この時期の上海を全体として日中戦争期の上海、ないし戦時期の上海と本書では呼ぶことにする。本書のテーマは戦時期の上海において活動した中国人商工業資本家の分析を行うことである。彼らの経済活動と社会活動を具体的に検証し、その活動の歴史的な意味を解明するとともに、戦時期上海経済の性格についても中国近現代経済史や日中戦争史上に位置付けることを目的とする。
 ……本書においては、経済活動や企業経営の主体としての側面と、地域社会における政治的・社会的活動の担い手としての側面の2つを併せ持った存在として「資本家」ということばを使用している。……その出自はさまざまであるが、およそ資本家である以上、その本分は企業活動を通じて利益を出し、企業を安定的に持続・発展させることである。一方、……国の存亡をかけた厳しい戦争中、とりわけ戦争相手国である日本に占領された上海において、中国人である彼らが民族意識や愛国心、そしてそれに根ざした利他的な行動と無縁であったわけでもない。経済的な利益追求の根底にある利己的な行動と民族意識などに基づく利他的な行動との間で、上海の資本家たちは戦時中、どのようなことを考えながら行動し、日本側と向き合っていたのだろうか。……日本の占領という非日常的な環境においては両者はなんらかのかたちで緊張関係にあったのではないだろうか。資本家ということばの選択にはそうした問いかけが込められている。上海の資本家といっても企業の経営規模や業態はもとより、社会活動への関わり方も多様である。本書で登場する資本家はそのごく一部に過ぎないが、経済史的視点と社会史的観点を織り交ぜながら彼らの行動を検証し、戦時期を生き抜いた彼らの歴史的な性格を明らかにすることが本書の課題である。
 第Ⅰ部「上海資本家と対日協力――綿紡績業の事例から」では、上海を代表する産業であった紡績業界における対日協力を扱う。
 第Ⅱ部「戦時期上海の企業経営」では、戦時期の困難な環境下での企業活動の実態について、生産・販売の統計や会計史料を使って明らかにしたい。
 第Ⅲ部「戦時期上海と南洋・大後方――上海租界の貿易構造」では、戦時期の上海経済を他地域とのつながりのなかで考えようとしたものである。
 なお、補論「日中戦争前夜中国のマッチ製造業と日本――カルテル結成をめぐって」は、日中戦争前のマッチ製造業における、対日姿勢の模索を検討したものである。

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