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梁の蕭兄弟  新刊

―昭明太子・簡文帝・元帝―

梁の蕭兄弟

◎六朝文学を彩った三人の皇子の数奇な運命――本邦初の評伝風研究!

著者 福井佳夫
ジャンル 中国古典(文学)
中国古典(文学) > 漢魏六朝
出版年月日 2024/03/07
ISBN 9784762967368
判型・ページ数 A5・616ページ
定価 16,500円(本体15,000円+税)
在庫 在庫あり
 

目次


まえがき


昭明太子

 Ⅰ 評伝

  第一章 天下は仁に帰す
   一 王筠「昭明太子哀策文」   
   二 美的行文         
   三 過褒ぎみの美文

  第二章 寛容な人がら
   一 乾坤一擲の大勝負  
   二 監国撫軍の日々   
   三 弟たちとの交流    
   四 東宮の老師たち
   五 気くばり名人    
   六 曹丕への敬慕    
   七 文雅をたのしむ貴公子

  第三章 君子の文学
   一 「示徐州弟詩」   
   二 とぼしい個性    
   三 七ジャンルの娯楽性  
   四「七契」のかたさ
   五 君子然とした作風  
   六 哀悼書翰の卓越   
   七 君臣をこえた哀悼

  第四章 中庸の文学観
   一 文質彬彬      
   二 常識的な発想    
   三 風教を助くる有り   
   四 明哲保身
   五 明をみて暗をみない

  第五章 「文選序」の主張
   一 沈思翰藻      
   二 出色の選集序    
   三 選録の偏向
  
  第六章 『文選』の編纂
   一 王筠のかたり    
   二 編纂の開始     
   三 太子のそばで     
   四 おしよせる困難
   五 完成前夜 

  第七章 とつぜんの死
   一 蠟鵝事件      
   二 玄圃園の後池

 Ⅱ 附篇

  第八章 「沈思翰藻」の典拠をめぐって
   一 文学非文学の弁別  
   二 卞蘭「賛述太子賦」 
   三 蕭統の曹丕比擬    
   四 蕭綱の曹丕比擬
   五 創作心理

 昭明太子略年譜 


簡文帝

 Ⅰ 評伝

  第九章 土をのむ夢
   一 あせる侯景     
   二 王偉の入れ知恵   
   三 天子の廃立     
   四 土嚢による圧死
   五 壁にかかれた詩文  
   六 褒貶決しがたし

  第十章 わが家の東阿
   一 蕭綱の生まれ    
   二 少年時の詩文    
   三 幼にして出鎮    
   四 徐摛の補佐
   五 七励の創作

  第十一章 雍州刺史の日々
   一 はりきる新刺史   
   二 北伐の勝利     
   三 辺塞詩をつくる   
   四 辺塞詩と艶詩
   五 望郷の情

  第十二章 とつぜんの立太子
   一 友于兄弟      
   二 廃嫡立庶      
   三 立太子の内幕    
   四 班剣をわたす
   五 快活な皇太子    
   六 亡兄の集序

  第十三章 精力的な活動
   一 政務への尽力    
   二 学問への関心    
   三 永明体への共感   
   四 戯れとしての艶詩 
   五 『玉台新詠』の編纂 
   六 兄弟の文学志向

  第十四章 不運な晩年
   一 侯景の乱      
   二 蕭綱の奮闘     
   三 兄弟の不和     
   四 さまざまな野心
   五 艶詩と亡国     
   六 胆力ある主従    
   七 運のわるいひと
 
 Ⅱ 附篇

  第十五章 息づく叙景─蕭綱詩の美質
   一 清麗な叙景     
   二 雍州での戦争体験  
   三 息づく詩句     
   四 艶詩中の叙景
   五 息づく美女

 簡文帝略年譜


元帝

 Ⅰ 評伝

  第十六章 文武の道は絶えたり
   一 江陵をめざせ    
   二 梁廷の油断     
   三 市内突入      
   四 書物炎上
   五 陥落の夜      
   六 甥の罵倒      
   七 最期の日々     
   八 元帝の処刑

  第十七章 隻眼の劣等感
   一 蕭繹の生まれ    
   二 母阮修容      
   三 優秀な兄弟     
   四 片目の失明
   五 隻眼へのからかい  
   六 つよい劣等感    
   七 母子一体

  第十八章 貪欲な読書魔
   一 上昇意欲      
   二 熱心な読書     
   三 地方官の日々    
   四 湘東苑の遊び
   五 詩文の腕も達者   
   六 蕭績への哀悼    
   七 蕭綱との親交

  第十九章 名声と野心
   一 名声をめざす    
   二 著述をめざす    
   三 劉敬躬の乱     
   四 母の死 
   五 野心きざす     
   六 蕭綸の狼藉     
   七 西帰内人

  第二十章 即位と骨肉の争い
   一 救援軍の混乱    
   二 鬱勃たる野心    
   三 二甥との戦い    
   四 西魏の参入 
   五 蕭紀の野心     
   六 兄弟対決      
   七 兵威を逞しくせよ

  第二十一章 なぜ書物をやいたか
   一 根源は劣等感    
   二 体面をかざる    
   三 被害妄想      
   四 衝動的な焚書
   五 名声をあげる道具  
   六 書物への怒り    
   七 文化史上の蛮行

 Ⅱ 附篇

  第二十二章 玄覧賦─あざとい巨篇
   一 野心勃々たる巨篇  
   二 十の章段      
   三 紀行賦の流れ    
   四 自信満々 
   五 国家的規模の自慢  
   六 漢賦ふう雄大さ   
   七 ごった煮      
   八 紀行から言志へ 
   九 あざとい印象

 元帝略年譜


参考文献一覧
あとがき
索引

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内容説明

【まえがきより】(抜粋)
 本書は、梁武帝(蕭衍)の三人の息子、蕭統、蕭綱、蕭繹をとりあげ、その生涯や人となり、さらに詩文の特色等について、叙したものである。この三人は、政治史でも登場する人物であるが、本書ではもっぱら文学史の立場から記述してみた。
 六世紀中国、蕭衍が樹立した梁朝は、南朝文化の最盛期を現出させた。この梁は、仏教が弘通したことで著名だが、文学もたいへん盛行し、この三人の兄弟は、詩人としても、また文人としても、よくしられている。長兄の蕭統(昭明太子)は、『文選』編者としてとくに著名だし、ふたりめの蕭綱(簡文帝)は宮体詩を唱道し、『玉台新詠』編纂を命じたひとである。また最後の蕭繹(元帝)はたいへんな学問ずきで、隻眼でありながらおおくの著作をつづった人物としてしられる。
 私はこれまで、六朝やその周辺の文章や文体(ジャンル)などの、作品論あるいはスタイル論ふうの研究に従事してきた。それらのテーマは、やりがいがあり、たいへん興味ぶかいものだったが、しょせんはものに関する研究であり、ひとを相手にしたものではなかった。……今回は研究テーマをすこし変更し、ものでなくひと、とくに文人のほうに移行させてみた。甲という文人が、この世にうまれ、なにごとかをなし、褒貶さまざまに評され、そして死んでいった事跡をたどりつつ、おりおりにつづった詩文を引用して、文学史的な意義や価値を論じてゆく――そうした「ひととその文学」ふうの研究に、はじめて挑戦してみたのである。
 最初に手をつけたのは、蕭繹だった。蕭繹は三人中、もっとも劇的な生涯をおくった人物だが、私には、彼の言動やそれをなした理由が理解しやすく、かきやすかったからである。つづいて、蕭統こと昭明太子をとりあげた。彼については、以前から「文選編纂の実態はどうだったのか」の問題に関心があったので、それを中心にかいてみた。三人目の蕭綱には、当初かなり苦労した。彼の人物イメージがつかめず、叙述の方向性がきまらなかったからだ。ただ、彼の晩年(侯景の乱の時期)の事迹をしらべるうちに、「運のわるいひと」という蕭綱像が脳裏にうかんできた。この人物イメージがきまると筆がすすみだし、一気にかきあげることができたのだった。
 本書がとりあげた三兄弟は、いずれも文学史上で著名な人物であるが、日本語で手がるによめる評伝ふう研究は、まだ出現していないようだ。本書が、その欠をうめることができれば、たいへんしあわせにおもう。

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