目次
第一部 馮夢龍人物考
第一章 馮夢龍傳略
第一節 萬曆年閒
第二節 泰昌・天啓年閒
第三節 崇禎年閒以後
第二章 馮夢龍人物評考
第一節 馮夢龍を詠じた三首の詩
第二節 畸人
第三節 多聞・博物
第四節 情癡
第五節 政簡刑淸
第六節 文苑之滑稽
第三章 前近代における馮夢龍の讀者とその評價
第一節 「三言」
第二節 「智囊」と「古今譚槪」
第三節 史部書
第四節 經部書
第五節 その他
第二部 馮夢龍作品考
第一章 「三言」の編纂意圖――特に勸善懲惡の意義をめぐって――
第一節 馮夢龍の位置
第二節 馮夢龍による書きかえ
第三節 「三言」の倫理性
第四節 勸善懲惡の意義
第五節 「三言」序の問題
第二章 「三言」の編纂意圖(續)――「眞情」より見た一側面――
第一節 問題の絲口――「精華」と「糟粕」――
第二節 假說の檢證
(イ)戀愛に關する話
(a)幽靈・妖怪
(b)私奔
(c)貞節
(ロ)友に關する話
第三章 『古今小說』卷一「蔣興哥重會珍珠衫」について
第一節 因果應報のコード
第二節 人閒心理への興味
第三節 原據からの視點
第四節 商人小說として
第五節 もう一つの深層
第四章 馮夢龍「三言」から上田秋成『雨月物語』へ――語り物と讀み物をめぐって――
第一節 中國白話小說の形式的特徴
第二節 語りの內在的特徴
第三節 怪談か愛情か
第五章 馮夢龍「三言」の中の「世界」
第一節 蒙古・女眞(滿洲)・雲貴・西域等
第二節 日本
第三節 インド
第四節 東南アジア・西アジア
第六章 馮夢龍「敍山歌」考――詩經學と民閒歌謠――
第一節 馮夢龍の「敍山歌」
第二節 朱子以前の詩經觀
第三節 朱子の詩經觀
第四節 元人の詩經觀
第五節 明初の詩經觀
第六節 弘正・嘉萬における詩經觀
第七節 民閒歌謠採集の先驅
第七章 俗曲集『掛枝兒』について
第一節「掛枝兒」の槪要
第二節 馮夢龍『掛枝兒』の版本
第三節 馮夢龍の『掛枝兒』について
(1)『掛枝兒』の構成
(2)『掛枝兒』の性格
第八章 馮夢龍の批評形式
第一節 馮夢龍の著作の評點形式
第二節 馮夢龍の評點の傾向
(1)評點を施した書物と施さない書物
(2)題上の圈點
(3)標抹について
第三節 時期による變化
第九章 馮夢龍と音樂
第一節 馮夢龍の『山歌』編纂
第二節 馮夢龍の『掛枝兒』編纂
第三節 馮夢龍と散曲
第四節 馮夢龍と戲曲
第十章 馮夢龍と妓女
第一節 馮夢龍の白話小說中の妓女
第二節 馮夢龍の散文中の妓女
第三節 馮夢龍の詞曲の妓女
第三部 馮夢龍と俗文學をめぐる環境
第一章 明末における白話小說の作者と讀者――磯部彰氏の所說に寄せて――
第一節 磯部氏の所論とその問題點
第二節 「三言」の編者馮夢龍その人
第三節 白話小說の讀者について
第四節 白話小說の作者について
第五節 生員について
第二章 通俗文藝と知識人――中國文學の表と裏――
第一節 小說をめぐって
第二節 知識人と通俗文學
結びにかえて――中國文學における表と裏――
第三章 明末士大夫による「民衆の發見」と「白話」
第一節 白話とは何か
第二節 なぜ「白話」か? 上から下へ
第三節 なぜ「白話」か? 下から上へ
第四章 藝能史から見た中國都市と農村の交流――ひとつの試論――
第一節 『盛世滋生圖』に見える藝能
第二節 蘇州の藝能
(1)山歌・俗曲
(2)語り物藝能
(3)祭りの藝能
(4)演劇
第三節 藝能の歷史的展開
第四節 藝能における中央と地方
第五章 庶民文化・民衆文化
はじめに――「庶民」か「民衆」か――
第一節 「庶民文化」へのまなざし
第二節 「白話=庶民」の檢討――方言への關心――
第三節 「庶民」の細分
第六章 中國小說史の一構想――陳平原氏の『中國小說敍事模式的轉變』に寄せて――
第一節 張恨水の『啼笑因緣』から
第二節 巴金・趙樹理
第三節 小說史の社會構造
附錄 書評紹介二篇
Antoinet Schimmelpenninck
Chinese Folk Songs and Folk Singers――Shan'ge Tradition in Southern Jiangsu
David Johnson,AndrewJ.Nathan,Evelyn S.Rawski 編
Popular Culture in Late Imperial China
あとがき
索引(人名・書名作品名)
英文目次
中文目次
内容説明
【はじめに より】(抜粋)
今日では短篇白話小說集「三言」の編者として最もよく知られる、明末蘇州の文人馮夢龍(明萬曆二年 一五七四〜淸順治三年 一六四六)が、終始わたしの中國文學硏究、中國社會文化史硏究の中心に位置している。中國文學史における明末は、戲曲・小說など、いわゆる俗文學が隆盛をきわめたことを、その特徴として擧げることができるであろう。この時代に俗文學が隆盛をきわめたのは、當時の文人たちが、從來蔑視の對象に過ぎなかった庶民的な文藝に關心を持ち、それらを取り上げたことを、背景の一つとして數えることができる。しかしながら、俗文學に積極的に關わった文人についての具體的な情報はきわめて少ないのが實情である。そうしたなかで、馮夢龍は、その傳記資料が比較的多く殘る、きわめて稀な例である。馮夢龍を考えることは、明末文學を考える大きな手がかりとなりうるであろう。……ここにまとめたのは、馮夢龍その人について、馮夢龍の作品について、また馮夢龍と俗文學をめぐる當時の環境についての文章である。
Feng Menglong and Popular Literature in the late Ming