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明淸江南社會文化史研究

明淸江南社會文化史研究

◎民間文化をたどりながら明清の江南を活写する!

著者 大木 康
ジャンル 中国古典(文学)
中国古典(文学) > 明清
出版年月日 2020/09/29
ISBN 9784762966675
判型・ページ数 A5・788ページ
定価 16,500円(本体15,000円+税)
在庫 品切れ・重版未定
 

目次

はじめに


第一部 俗文學をめぐって

 第一章 嚴嵩父子とその周邊――王世貞、『金瓶梅』その他
  一、籍没された嚴氏の宋版書籍    
  二、王世貞筆下の嚴氏父子   
  三、嚴氏父子と王世貞
  四、嚴嵩批判の文學作品       
  五、『金瓶梅』と『天水氷山録』

 第二章 明末惡僧小説初探
  一、惡僧小説資料について 
   (1)公案小説 
   (2)「三言二拍」
   (3)『水滸傳』『西遊記』
   (4)『僧尼孽海』
   (5)笑話集
  二、僧の犯罪       
   (1)僧の個人的犯罪     
   (2)寺院による組織的犯罪
  三、不義密通の場所としての尼庵   
  四、僧の色欲と破戒の物語
  五、破戒僧の肯定          
  六、笑話の中の僧尼

 第三章 中國民間の語りもの『紅娘子』について
  一、『紅娘子』の物語         
  二、『紅娘子』の表現と構成   
  三、實在の紅娘子
 
 第四章 明清小説の中の俗曲「西江月」
  一、「西江月」の前史         
  二、「三言」における「西江月」 
  三、酒色財氣
  四、小説作者の創作になる「西江月」 
  五、物語の中で重要な位置を占める「西江月」
  六、「西江月」の作者は誰か     
  七、『水滸傳』における「西江月」
  八、妓樓と「西江月」        
  九、その後の「西江月」

 第五章 晝像資料から考える中國明清の歌唱文化
  一、女 樂             
  二、男性歌手         
  三、『九青圖詠』

 第六章 明清文學における道教・神仙思想に關する覺え書き
  一、明清の文學作品における道教・神仙思想(槪觀)
  二、皇帝と道教、そして『水滸傳』  
  三、士大夫文人たちのオカルト趣味
  四、生活術についての思想      
  五、庭園の問題        
  〔文獻目録〕

 第七章 十六、十七世紀 世界の文學
  一、小説の時代           
  二、俗語の文學        
  三、人間の文學
  四、ユマニスムと古文辭派      
  五、世俗の文學       
  六、文學作品の發表形態

 第八章 日本江戸時代の「洒落本」と中國文學
  一、從來の學説の檢討 その一 漢文作品の輕視   
  二、從來の學説の檢討 その二 豔史
  三、洒落本の書名          
  四、『聖遊郭』       
  五、『兩巴巵言』


第二部 文人をめぐって

〔陳繼儒〕

 第九章 山人陳繼儒とその出版活動
  一、陳繼儒の人物像 
  二、陳繼儒における書物編纂過程 
  三、陳繼儒の校訂と文人ネットワーク

 第十章 蔣士銓『臨川夢』の中の湯顯祖と江南文人
  一、なぜ湯顯祖か 
  二、陳繼儒 
  三、袁枚のこと 
  四、曇陽子 
  五、呉梅と青木正兒による評價


〔錢謙益〕

 第十一章 錢謙益と程嘉燧
  一、程嘉燧と錢謙益の交遊     
  二、錢謙益の文學思想    
  三、『列朝詩集』と程嘉燧
  四、錢謙益、柳如是と程嘉燧


〔冒襄〕

 第十二章 冒襄における杜詩
  一、冒襄の周圍にあった女性たちと杜甫
  二、冒襄の詩における杜甫 
   (1)冒襄が單獨で作った詩 
   (2)友人たちと唱和して作った詩
  三、冒襄の散文に見える杜甫

 第十三章 彭劍南の戯曲『影梅庵』『香畹樓』とその時代
  一、『影梅庵』傳奇の内容      
  二、『影梅庵』傳奇の版本その他  
  三、彭劍南について        
  四、『影梅庵』から『香畹樓憶語』へ 
  五、『香畹樓』傳奇について    
  六、陳裴之の周邊


〔侯涵〕

 第十四章 侯涵の生涯――生き殘った者の辛苦
  一、侯涵の生涯  
  二、侯涵の文學 
  三、侯涵の交遊  
  四、侯涵と冒襄


〔その他〕

 第十五章 文人趣味の教科書
  一、書齋と文房四寶についての書物の誕生   
  二、明代文人の好み
  三、陳繼儒と李漁――明末江南の山人たち   
  四、社會的背景について

 第十六章 明清文人たちの樂園――江南の園林
  一、區切られた「園」      
  二、陶淵明の二つの樂園      
  三、園林の精神
  四、架空の理想庭園        
  五、王朝と隔絶した空間


第三部 科擧をめぐって

 第十七章 明清時代の科擧と文學――八股文をめぐって
  一、八股文とは――その形式と來歷 
  二、八股文と古文
  三、かつての中國知識人の教育課程――宗族という背景           
  四、擧業と學問

 第十八章 宋眞宗の「勸學文」について
  一、宋眞宗「勸學文」と科擧     
  二、中國の文學作品に見える宋眞宗「勸學文」
  三、宋眞宗「勸學文」の來歷     
  四、なぜ眞宗か


第四部 書物をめぐって

 第十九章 明清兩代における鈔本
  一、著者による草稿  
  二、刊本を冩した鈔本  
  三、鈔本の流通  
  四、商品としての鈔本

 第二十章 明清における書籍の流通
  一、官刻本の流通   
  二、家刻本の流通    
  三、坊刻本の流通 
  四、黄丕烈の場合――特に「書友」について

 第二十一章 線装本の普及とその背景
  はじめに――線装以前  
  一、線装の誕生と普及についての諸説  
  二、線装本の普及のはじまり
  三、明代の出版狀況   
  結び――装幀法の變化の背景

 第二十二章 明末における「畫本」の隆盛とその市場
  一、明末の「畫本」   
  二、像傳について   
  三、山水圖    
  四、畫譜  
  五、繪と文字の關係   
  結 び――市場をめぐって

 第二十三章 中國の博物誌・百科事典
  一、百科事典の原型としての字書        
  二、單科事典の誕生とその系譜
  三、再び總合的博物志  
  四、類書の誕生    
  五、通俗的日用類書の誕生

 第二十四章 江戸と明の小説と圖像をめぐって
  一、日本への書物の輸入と影響  
  二、江戸時代の中國圖像  
  三、繪入り本における中國と日本

 第二十五章 作者の肖像――東アジア圖書史の一斷面
  一、中國書籍史における明末  
  二、書物と圖像     
  三、明代の書物と圖像
  四、文集の肖像     
  五、書物の中の肖像のはじまり  
  六、肖像の機能
  七、圖の贊について   
  八、朝鮮における狀況      
  九、日本の江戸時代における狀況

あとがき
索引(人名・書名作品名)
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内容説明

【はじめにより】(抜粋)

  明清時代、とりわけ明末から清初に至る時期、南京、蘇州、杭州、揚州などの大都市を擁する江南地方では、經濟的な活況を背景に、文化の花が咲き誇った。傳統的詩文についてはいうまでもなく、書畫や庭園などの藝術、優雅な文人趣味の世界など、明末時期の江南には、多くの文學者、藝術家があらわれ、活躍している。そしてまた出版業の發展を背景に、傳統的な雅文學ばかりではなく、戯曲、小説、俗曲などの通俗文藝が隆盛をきわめたのも、この時代の特色である。かくのごとき綾錦のような世界が、明王朝の滅亡、續く清軍の南下によって、たちまち修羅の巷と化すことになる。命をかけて清軍に抵抗を試みるか、それとも髪をそり、辮髪を結って清に仕えるのか、はたまた明の遺民として世を送るのか、當時の知識人は嚴しい選擇の前に立たされることになる。こうした人間模様が見られるのも、この時代ならではのことである。本小著が、こうした明清の時代相を浮き彫りにする一助となれば幸いである。



Studies on Society and Culture of the Ming and Qing Jiangnan

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