目次
――大阪府立図書館本・故宮博物院本・旧北平図書館本との比較――
一 第一本(第一冊―第二冊)の梗概及び対校 二 第二本(第三冊―第五冊)の梗概及び対校
三 第三本(第六冊―第八冊)の梗概及び対校 四 第四本(第九冊―第十冊)の梗概及び対校
五 第五本(第十一冊―第十三冊)の梗概及び対校 六 第六本(第十四冊―第十六冊)の梗概及び対校
七 第七巻(第十七冊―第十八冊)の梗概及び対校 八 第八巻(第十九冊―第二十冊)の梗概及び対校
九 第九本(第二十一冊―第二十二冊)の梗概及び対校
十 第十本(第二十三冊―第二十四冊)の梗概及び対校 十一 岳小琴本と諸本との対校による総括
あとがき/索引
内容説明
【はじめに より】(抜粋)
岳小琴本『昇平宝筏』の宮廷演劇における位置づけとその大要については、別個の形で詳しく検討してまとめている。本書はそれと重なる部分が多い内容ではあるが、戯曲書誌から見て必要性のある基礎的研究であるので、多少後代に役立つこともあろうかと考えて、別冊で出版することとした。とりわけ、本書で重視したのは、『昇平宝筏』の成立が康煕年間にあるのか、或は、乾隆年間なのかという点である。その視点から、各テキスト相互の比較に加えて、それぞれのテキストに見られる文字にも注目した。以下に列挙する各齣での指摘には、自身で確認した箇所を取り上げているが、原本での該当する具体的な葉数や行を記してはいない。それは、『昇平宝筏』諸本は、岳小琴本をはじめとして分量が多く、厳密な意味で逐一的に校勘した箇所を明記するのは現実的ではなく、事実上不可能であることに因る。本書に疑義を生じる点があれば、必要に応じて、原本を参照していただきたい。
岳小琴本『昇平宝筏』の〔梗概〕と〔対校〕の記載は、岳小琴本が十本各二十四齣仕立てになっている。そのため、本書では、第一本から第十本までを本数ごとに区切り、各本の第一齣から第二十四齣までを箇条書きの形式でまとめ校勘表の形に準拠して提示することとする。なお、書誌的には、岳小琴本は全二十四冊であるが、巻立ては第一本から第十本まで本単位を採用することから、本書では「本」単元を採用し目録にその実冊分けの本数を記す。本書は、岳小琴本『昇平宝筏』二四〇齣の内容紹介と『昇平宝筏』諸本の対校から岳小琴本の特徴を導き出すことを主とした検証からなる。各本最後には、各巻の性格をまとめ、編者や編集上の独自の方針などを推測した。岳小琴本が果たして『昇平宝筏』の原稿本か否かは以下の〔対校〕等で証明して行くこととして、康煕時代に一応の完成体を見た『昇平宝筏』の構成や特色を明白にするため、各本には、本ごとの小結を置くが、あくまでも『昇平宝筏』二四〇齣の部分的なまとめと断片的な状況を示し、最後に全体の総括を示した。
【凡例】
〔梗概〕では、各齣の簡単な内容を紹介する。なお、本書の梗概は、大阪府立図書館本や故宮博物院本の先行研究で全幕のあらすじは比較的詳しくまとめてあるので、頁数の関係から、作品梗概の一部を省いた齣もある。
〔対校〕では、『昇平宝筏』諸テキスト間の相互の異同に焦点を当て、岳小琴本の特徴を摘出する。岳小琴本の対比に用いる鈔本は、『昇平宝筏』のテキストの内、太宗親征の話を持つ北京故宮博物院本を主に取り上げ、必要に応じて故宮博物院本に先行する大阪府立中之島図書館所蔵本などを用いて対比をした。