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『夷堅志』訳注 丁志上 新刊

『夷堅志』訳注

◎宋代の民間説話・社会経済資料の宝庫を平易な現代語訳と丁寧な注釈で提供する!

著者 齋藤 茂
田渕 欣也
福田 知可志
安田 真穂
山口 博子
ジャンル 東洋史(アジア)
東洋史(アジア) > 宋元
中国古典(文学)
中国古典(文学) > 唐宋元
中国思想・哲学
中国思想・哲学 > 宋元
出版年月日 2024/07/17
ISBN 9784762965364
判型・ページ数 B5・322ページ
定価 8,800円(本体8,000円+税)
在庫 在庫あり
 

目次

   巻一
王浪仙
僧如勝
左都監
許提刑
夏氏骰子
治挑生法
挑氣法
南豐知縣
金陵邸

巻二
鄒家犬
張敦夢醫
管樞密
小孤廟
富池廟
濟南王生
海鹽道人
二鼈哦詩
張通判
孫士道
潮州孕婦
張注夢
劉道昌
李家遇仙丹
劉三娘
興國獄卒
丘氏豕禍
宣城死婦
白沙驛鬼
李元禮

巻三
武師亮
王通判僕妻
雲林山
孫光祿
江致平
嵩山竹林寺
陸仲擧
洛中怪獸
翁起予
胡大夫
窗櫺小婦
韶州東驛
海門鹽場
揚州醉人
海門主簿
南豐主簿
謝花六

巻四
孫五哥
司命府丞
劉士彦
蒋濟馬
皁衣髽婦
沅州秀才
德淸樹妖
郭簽判女
鎭江酒庫
胡敎授母
戴世榮
京西田中蛇
建昌井中魚
王立火鹿鴨

巻五
三士問相
陳通判女
四眼狗
師逸來生債
張一償債
呉輝妻妾
句容人
荊山莊甕
員家犬
威懷廟神
靈泉鬼魋
魚病豆瘡
石臼湖螭龍
陳才輔
張琴童

巻六
和州毛人
王文卿相
奢侈報
陳元輿
高氏飢蟲
翁吉師
陳墓杉木
永寧莊牛
犬齧綠袍人
葉德孚
茅山道人
泉州楊客
僧化犬賦
張翁殺蠶

巻七
戴樓門宅
林氏壻婢
王厚蘿蔔
天台玉蟾蜍
濟州逆馬
南京龜蛇
秉國大夫
朱勝私印
大渾王
張氏獄
湯史二相
荊山客邸
夏二娘
華陰小廳子
武昌州宅
大庾疑訟

巻八
華陽洞門
雷撃王四
南豐雷媼
泥中人跡
宜黄人相船
頬瘤巨虱
胡道士
趙監廟
亂漢道人
和旨樓
呉僧伽
何丞相
鼎州汲婦
瑞雲雀

巻九
太原意娘
許道壽
滕明之
西池游
舒懋育鰍鱓
陳媳婦
河東鄭屠
張顏承節
龍澤陳永年
錢塘潮
陝西劉生
要二逆報

巻一〇
鄧城巫
徐樓臺
符助敎
水陽陸醫
秦楚材
建康頭陀
洞元先生
天門授事
大洪山跛虎
張臺卿詞
新建獄
潮州象
劉左武

『夷堅志』のテキストについて(田渕欣也)

索引

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内容説明

【「甲志上」前言より】(抜粋)
 不思議な出来事の記録は、古くから史書の中に残されてきた。『春秋左氏傳』には「大豕」が人立して啼き(莊公八年)、晉の魏楡で石が物言う(昭公八年)ことが記され、また『史記』巻一〇七「魏其武安侯傳」では、田蚡が竇嬰と灌夫の霊に取り殺されたことを窺わせている。不思議なことでも、あり得べきと認識されれば史実に含められて記録されたのである。そうであれば、現存する最古の小説集と言われる『搜神記』が、西晉の史官である干寶の手によって編纂されたのも、むしろ当然の成り行きと言えるのかもしれない。そして同様の書物が次々と生まれ、不思議な出来事、珍しい話を記すことが、「志怪」と呼ばれる文学ジャンルとして独立する。そこに『世說新語』に代表される、人物の言行を記録した所謂「志人」小説の流れが加わり、また仏教説話も加わって、小説の世界は六朝後期には豊かな内容を備えるに至る。唐代に入ると、題材の珍しさ、不思議さだけでなく、それを記す叙述の巧みさにも関心が向くようになり、記録性のみならず文学性をも重視されるようになった。さらに九世紀前半には男女の愛情が大きなテーマとなり、元稹の「鶯鶯傳」、白行簡の「李娃傳」など著名な文学者の手になる作品も多数生まれて、ここに「伝奇」と呼ばれる新たなジャンルが登場した。「小説」を近代的な概念に則して考えるなら、この「伝奇」に至ってそれに近いものが現れたと言って良い。恋愛譚だけでなく、変身譚、胡人採宝譚など、テーマも多岐に亙っている。しかし、文章力を問われる「伝奇」は唐王朝の衰退と共に作品数を減少させ、宋代に入って巷で流行していた語り物が都市部の勾欄での芸能へと発展するに伴い、やがては白話小説に主役の座を奪われることになる。宋の太宗の勅命を受け、太平興國三年(九七八)に李昉らがそれまでの「志怪」「伝奇」小説を集めて『太平廣記』五百巻を編纂したが、それは流行がひとつの区切りを迎えたことを象徴する出来事でもあった。事実、その後しばらくは低調となるが、靖康の難による宋室の南遷という事態を背景として、新たな「志怪」小説集が登場する。それが洪邁(一一二三―一二〇二)の編纂した『夷堅志』である。

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