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「古典中國」における史學と儒教

「古典中國」における史學と儒教

◎中国における「史學」の確立と、儒教からの自立、成立、展開の過程を追う

著者 渡邉 義浩
ジャンル 東洋史(アジア)
東洋史(アジア) > 殷周秦漢
東洋史(アジア) > 魏晋隋唐
中国思想・哲学
中国思想・哲学 > 先秦漢
中国思想・哲学 > 魏晋隋唐
出版年月日 2022/06/23
ISBN 9784762967030
判型・ページ数 A5・756ページ
定価 13,200円(本体12,000円+税)
在庫 在庫あり
 

目次

序 章 中国史学史の課題
 一、『春秋』と『尚書』の継承
 二、「史」の自
 三、「正」と「統」

第一章 『史記』における『春秋』の継承
 一、伯夷列伝と孔子への疑義
 二、司馬遷の『春秋』観
 三、「史の記」と『春秋』
 四、発憤著書

第二章 『漢書』における『尚書』の継承
 一、班彪『後伝』の『史記』批判
 二、諸侯の『春秋』と王者の「典・謨」
 三、王莽伝と『尚書』秦誓篇

第三章 『古史考』と『帝王世紀』――儒教に即した上古史と生成論――
 一、『史記』批判と蜀学の伝統
 二、上古史の再構築
 三、万物の根源

第四章 『三国志』と正統の所在
 一、賛から評へ
 二、西晋の正統化を優先
 三、未来を指し示す
 四、二つの讖文
 五、季漢の正統を潜ませる

第五章 『続漢書』と「古典中国」
 一、史書と正統性
 二、漢家の故事
 三、鑑としての史書

第六章 「春秋左氏伝序」と「史」の宣揚
 一、素王から筆削者へ
 二、周公の尊重
 三、杜預の方法論

第七章 葛洪の歴史認識と政策の提言
 一、葛洪と陸機
 二、鈞世篇と呉失篇
 三、王導の江東政策と漢過篇
 四、察挙への提言

第八章 干宝の『晋紀』と「左伝体」
 一、干宝の『晋紀』と天人相関説
 二、『春秋左氏伝』への傾倒
 三、杜預の『春秋左氏伝』宣揚

第九章 常璩の『華陽国志』にみえる一統への希求
 一、蜀学の継承
 二、大一統の尊重
 三、上計から郡望表へ

第十章 東晋における史論の尊重と袁宏の『後漢紀』
 一、あるべき史を描く
 二、曹魏と蜀漢の正統性
 三、「党人」・荀彧批判
 四、覇者と貴族の自律性

第十一章 習鑿歯の『漢晋春秋』における「正」と「統」
 一、習鑿歯と「正」・「統」
 二、晋承漢統論
 三、諸葛亮と桓温

第十二章 「史」の自立
 一、人物評価
 二、別傳の盛行
 三、史料批判

第十三章 「史」における「記言の体」──裴松之『三国志』注の懊悩──
 一、発言の記録者と「史」の伝達
 二、「理」による史料批判
 三、懊悩する裴松之

第十四章 「史」の文学性──范曄の『後漢書』──
 一、范曄と『後漢書』
 二、事は沈思より出づ
 三、義は翰藻に帰す

第十五章 『文心雕龍』の史学論
 一、宗経
 二、史評
 三、直筆

第十六章 沈約『宋書』と南朝意識
 一、正史の原型
 二、貴族の「史」
 三、貴族の要件
 四、貴族制の形成
 五、貴族の「鑑」
 六、革命の容認
 七、天下概念

第十七章 北魏をめぐる史書の展開
 一、国史の獄
 二、『十六国春秋』と大一統
 三、穢史

第十八章 班孟堅の忠臣──顔師古『漢書』注にみる「史」の「経」への回帰──
 一、異聞尊重への批判
 二、「史」を「経」の高みに
 三、他派の排斥と皇帝への「史」の収斂

第十九章 『晋書』の御撰と正史の成立
 一、『晋書』の編纂意図
 二、太宗の史論
 三、『晋書』の評価と『世説新語』

第二十章 『隋書』経籍志の史学論
 一、史官の役割
 二、史官の堕落
 三、正史と古史

第二十一章 李延寿「南北史」の「大一統」
 一、「南北史」の体裁と原史料
 二、『貞観氏族志』の編纂と正史
 三、史書による大一統

第二十二章 『後漢書』李賢注における引證注の導入
 一、劉訥言と「前書音義」
 二、李善『文選』注の継承
 三、引證注

第二十三章 『史通』の経書批判と『論衡』
 一、王充の『論語』批判
 二、劉知幾の『尚書』批判
 三、劉知幾の『春秋』批判

第二十四章 『史通』の実践性と『文心雕龍』
 一、史学論
 二、史評
 三、実践性

第二十五章 劉知幾の史学思想
 一、執筆動機と史官の資質
 二、直書と『春秋左氏伝』
 三、異聞と史料批判

第二十六章 『史記』三家注の特徴について
 一、『史記集解』の「史」的方法論
 二、『史記索隠』の補史
 三、『史記正義』と「経」の方法論

終 章 中国史学の展開と儒教
 一、五徳終始説の否定
 二、史学としての正統
 三、正統と道統

文献表
あとがき
人名索引


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内容説明

【序章より】

 日本における中国史学史は、西欧近代史学への近さを基準として、そこへの到達度を計るものであった。劉知幾の『史通』や章学誠の『文史通義』への高い評価は、それに一因があろう。しかし、前近代中国における「史」部の関心事は、国家の正統化に置かれており、両者は明確に異なる。とりわけ、「史」部が確立した「古典中国」における儒教の影響力は圧倒的であり、史学のあり方は儒教との関係性の中でしか、論ずることはできない。「古典中国」における史学と儒教との関係を明らかにすることが、中国史学史の課題であろう。
 なお、「古典中国」は、「儒教国家」の国制として後漢の章帝期に白虎観会議により定められた中国の古典的国制と、それを正統化する儒教の経義により構成される。そして、中国史に内在する「古典中国」の主体的把握に基づく時代区分を設定すると、中国史は、「原中国」(先秦。「古典中国」成立以前)、「古典中国」(秦から唐。「古典中国」の成立)、「近世中国」(宋から清。「古典中国」の展開)、「近代中国」(中華民国以降。「古典中国」からの脱却)の四期に時代区分することができる。
 本書は、これに基づき、「古典中国」における史学と儒教の関係を考察する。すなわち、本書は、儒教経典、具体的には『春秋』と『尚書』を継承するために著された『太史公書(史記)』と『漢書』を嚆矢とする中国の史学が、いかにして経学とは異なる独自の方法論を生み出し、やがて経学に代わって国家の正統化を担うに至るのかを論ずるものである。

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