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明清貢納制と巨大都市連鎖 

―長江と大運河―

明清貢納制と巨大都市連鎖 
著者 川勝 守
ジャンル 東洋史(アジア) > 明清
出版年月日 2009/02/20
ISBN 9784762928611
判型・ページ数 B5・770ページ
定価 16,500円(本体15,000円+税)
在庫 在庫あり
 

内容説明

本書は中国各地の全体的理解を企図した従来の著作に加え、以下の点を加味した新研究であることを追記しておきたい。すなわち著者の研究は戦後明清史研究の二大成果である商品生産の研究と賦役制度史研究の両者の研究から多くの知見を得ている。(略)

 長江大運河の物流幹線の成立は事態を急速に推進せしめた。物と人の流れが物流と呼ばれる条件は一つには物資輸送が双方向的であり、往き荷も復り荷も貨物が存在することが必要である。宋元時代は穀物、茶、等々といった北行きは満杯だが、北から南は空では物流にならない。長江を下る荷があれば、上る荷もある。上海付近の綿布は上り荷である。また両淮塩の販売地区も四川省を除く長江一帯に西送された点に意味がある。

 第二次商業革命の新要点の第四に、会館、公所に集まる各種商人・職人のギルド規則や法制的あり方が進展、 新境地が出現したことがある。これには各地の会館等に残る金石碑文や牙帖など、分析研究が今後も必要である。同郷会館や商人会館は北京・上海だけでなく、蘇州・南京の他、重慶・漢(武漢)・蕪湖・済寧・天津等の連鎖都市群に成立していることを把握すべきである。それ以下の県城クラスや市鎮といった市場町(マーケット=タウン)の商人ネットワークの分析も重要である。【結語】より

【内容目次】

序 章 中国近世の経済システムと都市網の形成

第一節 中国における二回の商業革命

第二節 明清期農業の発展、特に商業性農業の進展

第三節 明清期江南手工業と商品生産の展開

第四節 明清時代における江南都市網の形成

第五節 明清時代における江南都市の社会構造

前 編 明代貢納制と諸物産流通構造の展開

第一章 明朝国家における人口・資源センサス

 第一節 明太祖の戸口・田土統計と特殊戸規定

 第二節 明初の逃戸と太祖の農民政策

 第三節 明初の移徒と太祖の農民政策

第二章 明代塩法の流通構造

 第一節 明初の塩法と行塩区画

 第二節 明初行塩地方のその後の変更

 第三節 明代地方志にみる戸口食塩法

 第四節 明代行塩地方の局地的事例

 第五節 明代地方志戸口統計の男子・婦女数と戸口食塩法

 第六節 明後期における戸口食塩法の地域的展開

第三章 明代戸籍制度の地域的考察

 第一節 元代諸色戸計と明代戸籍制度の関係

 第二節 明代における諸色戸籍の地域的考察

 第三節 明代地方志に雑役戸の名称が見える地域について

第四章 明代匠戸制の地域的考察

 第一節 明初匠戸の就役規定―洪武二十六年「諸司職掌」について―

 第二節 明代匠戸の就役規定の展開―正徳『大明会典』について―

 第三節 明代における匠戸の地域的事例

第五章 明前期、御用物品の流通構造

    ―工部・内府関連事例をめぐって―

 第一節 明太祖覇業過程における行政実績

 第二節 「諸司職掌」における用度規定と産物指定

 第三節 正徳『大明会典』工部の用度事例と産物指定

第六章 明代前期における歳進・歳弁上供の流通構造

 第一節 「諸司職掌」における野味・皮張・翎毛の産地指定

 第二節 正徳『大明会典』工部における野味・皮張・翎毛の産地指定

 第三節 明代地方志に見る野味・皮張・翎毛等の御用・国用情況

 第四節 明代地方志に見る歳進・歳弁・歳造物品の銀納化

第七章 明代前期における河泊所と魚課

    ―江南河川資源の流通構造について―

 第一節 明代前期における河泊所について

 第二節 明代地方志に記載された河泊所の事例

 第三節 明代地方志に記載された河泊所による魚課徴収の事例

第八章 明代地方志に見る商税・課程の地域史研究

 第一節 明代華北地方の商税・課程について

 第二節 明代華中地方の商税・課程について

 第三節 明代華南地方の商税・課程について

第九章 明代地方志物産貨之属の研究 

 第一節 宋元時代地方志物産の項目分類と貨類

 第二節 華北地方における明代地方志物産貨之属

 第三節 華中地方における明代地方志物産貨之属

 第四節 華南地方における明代地方志物産貨之属

 第五節 西南中国における明代地方志物産貨之属

後 編 長江・大運河流通の展開と巨大都市連鎖の形成

第一章 明代、雲南・貴州両省の成立

 第一節 元代における雲南行省州県

 第二節 元代における貴州省分湖広行省州県

 第三節 明太祖による雲南・貴州両布政使司の設置

第二章 明代、長江・大運河水運の流通構造

 第一節 明清時代における長江・大運河の物産流通の動きと

     収取体制の展開

 第二節 明代採木の長江・大運河流通

 第三節 明代船隻用材調達の長江・大運河流通

第三章 清、乾隆『欽定戸部鼓鋳則例』に見える雲南銅の京運規定

 第一節 『欽定戸部鼓鋳則例』雲南銅規定目録及び

     京運正加耗額並銅本銅価規定

 第二節 京運銅斤の雲南銅廠・四川瀘州間の運送規定

 第三節 雲南銅の長江大運河京運と沈銅稽査規定

 第四節 雲南銅京運船隻過境出境奏報等と沈銅稽査規定

第四章 清、乾隆期雲南銅の京運問題

 第一節 雲南銅の登場

 第二節 乾隆期、雲南銅の採弁額の変動

 第三節 乾隆期、雲南銅の京運規定―『銅政便覧』について―

 第四節 乾隆十年代~四十二年間、雲南銅京運の実態

第五章 清、乾隆初年雲南銅の長江輸送と都市漢口

 第一節 乾隆三年、銅銭流通の改善と雲南銅の増産政策の展開

 第二節 乾隆三年、長江水運システムの改善―「救生船」の設置―

 第三節 長江水運システムと都市漢口

 第四節 清中期、長江流域における生産・流通と都市社会の形成

     ―漢口について―

第六章 中国近世、巨大都市漢口と『漢口叢談』

 第一節 『漢口叢談』の成立とその凡例

 第二節 漢口の環境と都市景観

 第三節 漢口の都市行政と地域社会

 第四節 漢口の宗教施設と商業活動

 第五節 『漢口叢談』中の人々

第七章 長江・大運河流通と巨大都市連鎖の形成

 第一節 重慶・漢口・蕪湖・天津

 第二節 重慶・漢口・蕪湖・天津の巨大都市連鎖

結語・跋・索引・

中文梗概 中国史上的両次商業革命及中国社会経済的発展

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