目次
序論 佐藤仁史
第Ⅰ部 解題論文篇
藤野真子「中国江南における宣巻の上演状況」
緒方賢一「呉江宣巻のテクストについて――朱火生氏の宝巻を中心に」
佐藤仁史「江南農村における宣巻と民俗・生活――藝人とクライアントの関係に着目して」
太田 出「太湖流域漁民と劉猛将信仰──宣巻・賛神歌を事例として」
第Ⅱ部 口述記録篇
口述記録説明
口述記録目次/口述記録(12名分)
第Ⅲ部 宝巻篇
宝巻整理説明
朱火生氏宝巻(9種)、付録(2種)
英文目次
内容説明
【内容要旨】
本書は、太湖流域社会史調査班が進めてきた調査の成果のうち、宣巻という民間藝能に関する口述記録と藝人から提供された宝巻を中心とする資料をまとめたものである。現地調査班は、江南地方における市鎮―
農村関係やその変容、民間信仰を取り巻く社会関係のあり方の変化(廟会組織・香会組織など)、民俗文化の復興の実態に関する調査を実施してきた。成果の一部は、太田出・佐藤仁史編『太湖流域社会の歴史学的
研究――地方文献と現地調査からのアプローチ』(汲古書院、2007 年)、佐藤仁史・太田出・稲田清一・呉滔編『中国農村の信仰と生活――太湖流域社会史口述記録集』(汲古書院、2008 年)として既に世に問
うているが、民間信仰や民俗生活と不可分の関係にある宣巻については十分に掘り下げることができなかった。その原因は現地調査班のメンバーがともに歴史学者であることから宣巻藝人や宝巻について専ら社会史から接近していたために、文学史、宗教史、藝能史など多角的な調査を展開できなかったことに因る。その後、新たな調査メンバーの加入によって中国哲学・中国演劇研究の立場からの調査を進められたことに加え、呉
江市八坼鎮の朱火生氏をはじめとする多くの宣巻藝人から多くの協力を賜ったことから、関連諸分野において裨益すると思われる貴重な成果をえることができた。本書は、調査で得た情報をオープンにすることによって関連分野の研究者の参考に資することを期するものである。