目次
前 言
凡 例
第1章 唐代都督制と貞観十道制
1.唐の総管府制と六行臺
(1)唐の総管府の構造
(2)総管の呼称と総管府の軍務
2.軍政機関「行臺」の設置と職掌
(1)唐六行臺の設置
(2)行臺の職官と職務
3.唐の都督府体制
(1)五大総管府から五大都督府へ
(2)諸州都督の戦闘軍務と兵站業務
(3)都督府制と貞観十道体制
(4)都護府制と貞観十道体制
第2章 唐代前期節度使の権力構造
1.広域軍政長官「節度使」の成立
(1)節度使職の創設と任官
(2)軍事使職の兼帯と節度使「定額」
2.都督鎮戍組織と節度使軍管区
(1)節度使軍管区の成立
(2)都督府の官属組織と開元三級制
(3)節度使軍管区の軍事施設
――鎮戍軍・守捉軍・城・鎮・戍・関――
3.鎮兵召募制の展開と役兵制の終焉
(1)鎮戍兵士の3系統
(2)鎮兵の召募制――“分割召募”から“全面召募”へ――
(3)鎮兵“全面募兵”と“常駐軍団”の成立
第3章 唐代後期節度使の権力構造
1.後期節度使の権力構造
(1)刺史の“軍戍”――防禦使・団練使の兼職――
(2)節度使の採訪使兼務と節度観察使
(3)都団練観察使・都防禦観察使の任官
(4)遥領節度使と行営節度使
2.後期節度使の軍政と行政
(1)新置節度使の軍管区の構成
(2)節度観察使の官属
(3)節度観察使の任務と権限
第4章 五代節度使の権力構造
1.禁軍建設の進展と節度使体制
(1)禁軍将校と節鎮武職の相互任官
(2)節度使の強制転任「移鎮」の展開
2.節鎮の人事権・統兵権の制限と地方政府軍化の進行
(1)節鎮管区の固定と「支軍」の創設
(2)知州の設置と管内属州の軍政・民政
(3)節鎮管州の軍事序列化と「軍事格」
――節度州>団練州>防禦州>刺史州――
第5章 宋代禁軍・廂軍の軍事構造
1.宋代禁軍の任務と配置
(1)宋代禁軍の創設と禁軍指揮の増設
(2)宋代禁軍の統制と禁軍指揮の配置
(3)宋代禁軍の任務
2.宋代廂軍の任務と配置
(1)宋代廂軍の創設と軍団の編制
(2)宋代廂軍の役務
(3)宋代廂軍指揮の増設と廂軍の配置
第6章 宋初の節鎮再編と府州軍監
1.宋初の軍事行動と節鎮対策
(1)太祖朝の行営と直隷州
(2)太宗朝の属州解除と行営編制
2.節鎮再編と府州軍監体制
(1)「軍事格」と節鎮武職の任官
(2)県級軍・監、同下州軍の設置と知軍・知監の任官
(3)知州の任官
3.路制の整備と諸路転運使の配置
(1)行営の編制と随軍転運使
(2)路制の整備と諸路転運使の設置
(3)諸路転運使・路内知州の同時任官と転運使の権限拡大
後 記
事項索引
英文目次
※図表資料多数!
内容説明
【「前言」より】(抜粋)
本書は唐宋変革研究会『唐宋変革研究通訊』(以下『通訊』と略)に2016年から2022年にかけて掲載した6篇の論文の各篇を、刊行年次順に収録して全6章に編成したものである。一書として刊行するに当り、原載論文の本文と表・付表・別表に含まれる誤りや不正確な説明を訂正・修正し、行論の不備を補うために必要な説明を加え、また叙述の順序を変更した箇所もあるが、各章とも論旨は変更していない。
原載『通訊』の各篇には冒頭に「概要」欄を設け、執筆者の主張を要約して読者に提供していたが、本書においてもこの体裁を踏襲し、各章ごとに原載「概要」をキーワードとともに再録した。各章に設定した諸課題を「軍政史」の観点から整理して上に掲げた6章を立て、表題を『唐宋軍政史研究』とした。
実は『通訊』に連載を始めたころ、唐宋時代の兵制の変遷を再確認しながら、“唐・五代・宋兵制史”として兵制の通史を叙述する計画を立てていた。副題の「唐宋時代の軍制と行政」は、この時代の兵制と軍事行政との関係を総点検し、兵制史を唐宋変革論の観点から再構築せんとする意図から出たものである。
しかし執筆を進めるうち、これまでの兵制史研究は遺憾ながら、軍事史上の重要事項を年代順に接続する“唐宋時代の軍事の歴史”になっていて、「軍事史」として必ずしも統一的・系統的に捉えられていないことを痛感した。かと言って我々の周囲に現在、中国軍事史研究の基礎概念と方法論が備わっているわけではない。
言うまでもなく、軍事は徴税・刑罰等と並んで国家の存亡に係わる必須の業務であり、行政の重要な分野として軍事全般を執行するのが軍政military administrationである。
本書は唐から五代を経て宋に至る時期、すなわち唐宋変革期を対象として、軍制・兵制・兵站の三 分野における軍政の展開過程を検証することを目的とする。
A Study of the History of Military Administration in the Tang and the Song Period