目次
一 「律令」の初見と秦律
二 新出土簡牘で確認できる律令と三国隋唐の律令
三 張家山呂后『二年律令』の『□市律』は『関市律』か『市律』か
四 張家山呂后『二年律令』に見える皇帝と人民
五 律令の運用――黄河流域と長江流域との裁判制度
六 律令と日常生活――春秋戦国秦漢時代の裁判例
七 「以吏為師」のための公的学校制度
八 律令時代初期の生活環境
第一章 中国古代の律令と習俗――『日書』に見える「亡」と「盗」
一 「亡、不得」と亡罪
二 「盗、不得」と盗罪
三 「法律令」と「民習俗」
第二章 秦漢時代の『日書』と吏人
一 『日書』に見える違法行為
二 里吏の任免
三 『日書』から見た吏人の職場環境
第三章 漢代を遡る奏讞――中国裁判における審級制の起源
一 奏讞制の導入
二 張家山漢簡『奏ゲン書』
第四章 里耶秦簡の治獄について
はじめに (遷陵県の置県と治安 里耶秦簡)
一 爰書
二 睡虎地秦簡の爰書
三 爰書作成と郷里吏
四 治獄の課題
おわりに (野鳥(水鳥)の宝庫 まとめ)
第五章 里耶秦簡の郷里吏について
一 遷陵県と屯戍
二 郷吏
三 里吏
四 郷部嗇夫と曹
五 睡虎地秦簡の郷里吏
おわりに (遷陵県郷里の戸数と墾田面積 まとめ)
第六章 尹湾漢簡の県吏と郷里吏
一 東海郡の県郷の統属関係
二 東海郡の郷亭里吏
第七章 秦漢時代の戸籍について
一 版本史料に見える戸籍
二 戸籍をめぐる先行研究
三 『二年律令』戸律と戸籍編成
四 戸籍と『戸曹計録』
第八章 岳麓書院蔵秦簡『関市律』を得て
はじめに (岳麓書院蔵秦簡)
一 睡虎地秦簡『関市律』
二 岳麓書院蔵秦簡『関市律』
三 『金布律』と『関市律』
第九章 稿本の怪――『楊熊合撰水経注疏』稿本と傅斯年
はじめに――台北行
一 『水経注疏』稿本の商務印書館への入稿
二 『水経注疏』の出版方針
三 入稿後の『水経注疏』稿本の所在
附 簡牘釈文の文字異同をめぐって
後 記 附『从出土簡牍出发挑战〝都市国家论″(抄録)』
英文目次
中文目次
索引
内容説明
【後 記 より】
本書は、ここ一〇数年の間で学会誌・論文集等に発表した論文を中心としている。これまで関心を持ってきた分野については、『中国古代の聚落と地方行政(汲古叢書三三)』汲古書院、二〇〇二と『中国古代の律令と社会(汲古叢書七八)』汲古書院、二〇〇八とで、一応の纏めを行ってきたが、本書に収録した小文は、この両書と関連する課題であり、機会を得て両書を補完したものである。
最近は中国の経済発展も関わり、引き続き大量の簡牘が地下から出土し、学界に活気をもたらしてくれている。本書中、第九章を除く各章は、これら簡牘を中心に、これまでの課題を補完したものであり、従来の研究テーマとの関係で、「律令」と「地域支配」との両語を用い、本書書名を『中国古代の律令と地域支配』とした。
第九章は、中央大学大学院文学研究科の演習で、在職中、長年、『水経注疏』を読んできて、中国各地の地域社会を意識する上で、『水経注疏』からは大きな恩恵を蒙ってきた。このため『水経注疏』に関係する一文は、簡牘を中心とする本書において、簡牘と直接関係することはないが、中国の「地域支配」を理解する上で必須の課題と考え、『水経注疏』出版に至る経緯を扱った本章を、巻末に入れることとした。
Lüling and Local Rule in Ancient China