目次
凡例
第一章 『古事記』と緯書
一 『古事記』成書の謎
二 反正記の小さな糸口
三 神々の風貌
四 各種文献に見る異常な歯
五 『日本書紀』の天皇描写
六 古代中国の異常風貌
七 反正記の表現と緯書
八 「貫珠」が意味するもの
九 『古事記』における異常風貌説の機能
十 記紀における緯書の受容
(一)神武東征伝承と緯書
(二)「ながひと」考――建内宿禰伝承と讖緯思想
十一 『懐風藻』の場合
第二章 『古事記』と朝鮮史料
一 反正記と尼師今伝説
二 朝鮮史料・渡来説話と緯書
三 脱解王伝承が語るもの
四 骨品と緯書
五 『三国史記』に見る井戸と龍
六 『三国遺事』に見る龍
七 井戸と王権・符命
八 井戸、池、川、海と崑崙の水界
第三章 『古事記』と神仙思想
一 瑞井と変若水・醴泉と天つ水
二 上代文献に見る井戸
三 孤立した仙境
四 「登岐士玖能迦玖能木実」伝承の意味
五 洞天・地脈・水界を持たぬ日本の龍
六 龍との関係を絶たれる反正天皇
七 龍と「天つ日嗣」の天下
八 龍と革命の思想
九 異常風貌説の変容――「長人」から土蜘蛛・酒呑童子へ
十 古代東アジアにおける神秘思想のあり方
第四章 『古事記』と『帝王世紀』
一 『古事記』は歴史書か
二 『古事記』の核心は何か
三 「帝紀」とは何か
四 反正記と『帝王世紀』の接点
五 『帝王世紀』の歴史叙述
六 『帝王世紀』の内容構成と『古事記』
七 『帝王世紀』の源流――葉書・牒
八 『帝王世紀』の達成
九 『帝王世紀』の生成論と緯書
十 「有聖徳」の継承、発揚と緯書
十一 『古事記』の生成論と緯書
十二 『古事記』の文章表現と『帝王世紀』
十三 『上宮聖徳法王帝説』の場合
十四 太安万侶が果たした使命
参考文献
あとがき
人名索引
内容説明
小著は、『古事記』の成書過程を、古代東アジアの神秘思想との交流の中において捉え直そうとするものである。特にこれまであまり重視されなかった緯書や朝鮮史料、更に『帝王世紀』をはじめとする中国の史書との関係を検証しながら、『古事記』の成立という根源的な問題をはじめ、その東アジアにおける歴史的、思想史的位相についても検討してみたいと思う。……そして試行錯誤を重ねながら、小著が少しでも『古事記』の研究者や愛読者のために問題解決の新たな糸口を提供し、または意義ある問題提起を示すものとなることを願っている。
The Formation of Kojiki and East Asian Mysticism