目次
第一章 開国功臣家と靖難の役
一 徐達の女たち
二 徐達の息子たち
第二章 靖難の役と雲南諸衛
一 沐昂とその子孫、ならびに西平侯沐晟
二 靖難の役と雲南諸衛との関係
(1)靖難の役の痕跡
(2)靖難の役・燕王軍・建文軍
三 沐晟・沐昂それぞれの靖難の役
第三章 靖難の役と貴州・湖広
一 靖難の役と貴州諸衛
二 靖難の役と湖広諸衛
三 近接地域からの動員
第四章 靖難の役と河南・浙江・江西
一 河南・浙江・江西の事例とその翻刻及び訓読
二 河南・浙江・江西の事例分析
三 河南・浙江・江西の事例の人々
第五章 永楽政権の成立と復活人事
一 永楽政権の成立
二 復活人事とその類型
(1)謫戍からの復活
(2)左遷からの復活
(3)閑住からの復活
(4)獄中からの復活
(5)黜民からの復活
三 永楽帝の人事策と復活人事
第六章 永楽政権と雒僉事件
一 北京行部尚書雒僉事件始末
二 燕王府官から永楽官僚へ
三 政策決定の諸相と旧燕王府官
第七章 燕王府官から永楽官僚へ
一 既知史料にみえる燕王府の女直人
二 碑文資料にみえる燕王府の女直人
三 永楽政権における燕王府出身女直人の地位
結 語
あとがき・索 引
内容説明
【序語より】
本書を構成する各章は、『中国明朝档案総匯』所収の衛選簿を繰り返し繙読する過程において発想したテーマに対して、種々考証を加えたものである。建文政権から永楽政権へというきわめて短いスパンを対象にしているが、ここで論じられたことは、先行研究に付して種々再検討したという類のものではなく、本書において初めて提起した諸論点を考究・深化したものである。
第一章では開国功臣第一とされた徐達の子女それぞれの立場から靖難の役を、第二章・第三章・第四章では地方軍たる在外衛所の動向から靖難の役を、第五章では復活人事というファクターを通して永楽政権の人的特質を、第六章では北京行部尚書雒僉が誅殺された事件を手掛かりに永楽政権における政策決定の有り様を、第七章では燕王府出身の女直人を対象に燕王府官から永楽官僚への陞進状況から永楽政権の人的構造の特徴を論じた。
前著『明代建文朝史の研究』を縦軸、本書を横軸とみなせば、両書が相俟って、明代初期最大の激動期ともいうべき建文・永楽交替期が生み出した様々な問題に、区聞陬見とはいえ、筆者なりの見取り図を呈示しえたのではないかと思量するものである。博雅の諸賢のご教正を賜れれば幸いである。