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汲古叢書124 東アジア古代における諸民族と国家

汲古叢書124 東アジア古代における諸民族と国家

◎世界最大の民族となる漢民族の形成過程と、それに対峙・成長した古代日本を明らかにする

著者 川本 芳昭
ジャンル 東洋史(アジア)
東洋史(アジア) > 殷周秦漢
東洋史(アジア) > 魏晋隋唐
シリーズ 汲古叢書
出版年月日 2015/03/12
ISBN 9784762960239
判型・ページ数 A5・532ページ
定価 13,200円(本体12,000円+税)
在庫 品切れ・重版未定
 

目次

【主要目次】
序 言
第一篇 漢唐間における北中国の動向―民族問題を中心として見た―
第一章 北朝国家論
 孝文帝による改革以前の北魏/「部」体制国家の形骸化と中国王朝への転身/同化と中華の理解をめぐって
第二章 北魏文成帝南巡碑について
碑陰原文「復元」/研究史の整理/南巡碑陰についての若干の私見〔「内侍」の実態について・『魏書』
の記載をめぐって〕
第三章 鮮卑の文字について―漢唐間における中華意識の叢生と関連して―
 『隋書』経籍志に見える「国語」/鮮卑の文字について/国語を用いた書物存在の意味するもの
 第四章 三国期段階における烏丸・鮮卑について―交流と変容との観点から見た―
  前漢・後漢期の状況―属民化と傭兵化―/後漢末・魏晋期の状況―自立化と融合の始まり―〔固有の
風俗の存続・自立化と融合の始まり(自立化・混淆化)〕
第五章 北魏内朝再論―比較史の観点から見た―
 北魏内朝についての近年の研究に対する若干の私見/内朝に関わる比較史の試論―北魏と倭国、および
漢―
第二篇 漢唐間における東アジアの動向と古代日本の国家形成
第一章 漢唐間における「新」中華意識の形成―古代日本・朝鮮と中国との関連をめぐって―
 古代日本における中華意識の形成/古代朝鮮諸国の場合〔高句麗の場合・百済の場合・新羅の場合〕/古
代日本・朝鮮における中華意識形成の先駆け/魏晋南朝の世界秩序と北朝隋唐の世界秩序
第二章 隋書倭国伝と日本書紀推古紀の記述をめぐって―遣隋使覚書―
 裴世清のもたらした国書をめぐる記述について/『日本書紀』の遣隋使関係史料の信憑性について/小野
妹子の失書
第三章 倭国における対外交渉の変遷について―中華意識の形成と大宰府の成立との関連から見た―
 魏志倭人伝以前の外交〔奴国の外交/倭国の成立/伊都国と邪馬台国〕/倭の五王以降の日本と外交〔倭
の五王の半島進出と沖ノ島・那津官家の設置〕/大宰府の成立をめぐって〔筑紫大宰と大宰府・大宰府と
倭国の中華意識〕
第四章 倭の五王の自称と東アジアの国際情勢
 倭の五王時代における官号自称と除正/倭王の自称と治天下大王
第三篇 漢唐間における西南中国の動向
第一章 漢唐間における雲南と日本との関係について―比較史の観点から見た―
 滇王之印と漢委奴国王印/その後の西南中国の歴史展開―隋唐帝国出現以前―/隋唐の拡大と北中国・
西南中国の動向
第二章 民族問題を中心として見た魏晋段階における四川地域の状況について
 四川西南部の状況/四川東部の状況/四川北部の状況
第三章 民族問題を中心として見た五胡十六国南北朝期段階における四川地域の状況について
 南朝期の四川〔劉宋時代の四川・南斉時代の四川・梁時代の四川〕/北朝期の四川―北魏・西魏時代の
四川―
第四章 民族問題を中心として見た北朝後期段階における四川地域の状況について
 北周時代の四川/隋時代の四川/唐時代以降の推移
第四篇 漢唐間の民族をめぐる諸問題と東アジア
第一章 民族問題を中心として見た魏晋南北朝隋唐時代史研究の動向
 朴漢濟氏の所説をめぐって/当該時代における中国中南部地域の民族問題
第二章 遼金における正統観をめぐって―北魏の場合との比較―
遼の正統意識について/金の正統意識について/北魏の場合との比較
第三章 崔致遠と阿倍仲麻呂―古代朝鮮・日本における「中国化」との関連から見た―
唐朝官僚としての崔致遠の自他意識/阿倍仲麻呂と科挙登第/阿倍仲麻呂にとっての中国と日本/阿倍仲
麻呂・崔致遠に対する後世の評価と国制の変遷
第四章 中国前近代における所謂中華帝国の構造についての覚書―北魏と元・遼、および漢との比較―
 遼との比較/漢との比較
あとがき―所謂「少数民族」の理解をめぐって―      索 引

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内容説明

【序言】より(抜粋)

筆者は先に小論を集めた『魏晋南北朝時代における民族問題』(一九九八年・汲古書院)と題する拙著を刊行した。該著において筆者は、第一に、中国の魏晋南北朝時代における北方民族の中国への流入が、それまでの中国のあり方にどのような影響を及ぼしたのかという研究の深化につとめ、第二に、同時期における中国南方の非漢民族の実態を追求し、また、第三に、古代朝鮮や日本への中国文化の流入、人の移動がどのような変化を当該地域に引き起こしていったのかという問題の解明につとめた。…本書は、前著刊行後の成果に拠りながら、東アジア古代における諸民族と国家の構造、およびそれらの関連について論じようとするものである。本書は次の四篇から構成される。

第一篇は、北魏史を中心としながら漢唐間における北中国の動向について考察したものである。とりわけ北魏前期の部族と国家の実態に関わる問題(「部」体制国家の実態)、およびその持つ歴史的意義について論じたものであり、その関連で、新出史料の問題、鮮卑の使用した文字の問題などについて論じ、また時代を遡った北魏より前の時代における烏丸や鮮卑の問題、北魏内朝と初期国家の関連などについて考察した。

 第二篇は、漢唐間における古代日本や朝鮮の動向について論じたものであり、大陸の状況と古代日本の動向とが密接に絡んでいることを、中華意識、遣隋使、倭の五王の問題などを取り上げて具体的に論じた。中華意識の問題に関しては、古代日本や朝鮮におけるその形成と当該時代における大陸の状況が関連していることを指摘し、五胡諸朝に生じた中華意識がその淵源と考えられることを論じた。遣隋使に関しては、中華意識を形成しつつあった倭国が、遣隋使段階において、中国再統一を果たした隋との間でどのような交渉を展開したのかの具体相を追求し、倭の五王に関しては、その自称が、使持節都督諸軍事・安東大将軍などの自称と、治天下大王の自称の併存という形で存在していたことの意味などを追求した。

 第三篇は、当該時代の中国西南地域がどのような状況にあったのか、という点を解明しようとしたものである。北魏(代国)や倭国は漢帝国が崩壊した後の国際状況の中で、中国王朝の冊封を受けつつ、一方で自立の道を歩むが、本篇では、これと同様の状況が生じていた中国西南部の歴史がどのように展開していたのかを具体的に追求し、それを主に雲南と四川の地域についてやや巨視的な観点から論じ、合わせて両地域のもつ古代日本との関連を追求した。

 第四篇は、当該時代以外の時代、地域をも含め考察した際、どのようなことがらを窺うことができるかについて論じたものである。所謂征服王朝と称される遼・金と北魏とがどのように関連しているのかという問題、唐・宋を分期とする時代区分の問題と民族問題とがどのように関連しているのかという問題、南北朝時代を経て建国された唐帝国に留学した崔致遠(新羅)、阿倍仲麻呂(日本)という個別の人間において中華、あるいは民族といった意識がどのような形で存在していたのかという問題、所謂内朝の問題を中華帝国の構造に関わる問題ととらえ、非漢民族国家である遼や元、あるいは漢民族国家の祖型ともいうべき漢と比較したとき、どのような点が明らかとなるのかといった問題について考察したものである。

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