目次
前書き
郭店楚墓竹簡の発掘・構成と『老子』の書名/郭店一号墓の下葬年代――通説とそれへの批判/本書執筆の経緯――前著と本書の成立事情
凡例
第一編 形成途上にある最古のテキストとしての郭店楚墓竹簡『老子』
始めに/章と段について/第六十四章における上段と下段/第二十章上段と第十三章の聯続と断絶/第十八章における一文の追加/終わりに
第二編 郭店楚墓竹簡『老子』甲本譯注
第十九章/第六十六章/第四十六章中段・下段/第三十章上段・中段/第十五章上段・中段/第六十四章下段/第三十七章/第六十三章上段・下段/第二章/第三十二章/第二十五章/第五章中段/第十六章上段/第六十四章上段/第五十六章/第五十七章/第五十五章上段・中段・下段/第四十四章/第四十章/第九章
第三編 郭店楚墓竹簡『老子』乙本譯注
第五十九章/第四十八章上段/第二十章上段/第十三章/第四十一章/第五十二章中段/第四十五章/第五十四章
第四編 郭店楚墓竹簡『老子』丙本譯注
第十七章/第十八章/第三十五章/第三十一章中段・下段/第六十四章下段
第五編 郭店楚墓竹簡『老子』の主要思想
始めに
郭店楚墓竹簡『老子』の政治思想
「無知」「無為」によって「天下を取る」/「聖人の無為」により「万物の自然」を通じて「天下を取る」/「道」「徳」によって「国」「天下」を治める/戦争や戦争政策に対する批判
郭店楚墓竹簡『老子』の倫理思想
「無知」「無学」による否定超出/「美悪」「善不善」の区別を超えて/欲望追求の否定/「無為」による人生の成功/柔弱の提唱と堅強の否定
郭店楚墓竹簡『老子』の養生説
「道」「徳」に基づく養生/新しいタイプの養生
郭店楚墓竹簡『老子』の哲学思想
世界における「万物」の否定超出/「万物」を主宰する「道」「徳」/「万物の自然」を根底に置いて
終わりに
第六編 郭店楚墓竹簡『老子』諸章の上段・中段・下段
――『老子』のテキスト形成史の中で
始めに
上段を缺く諸章の検討
甲本第四十六章/甲本第六十四章と丙本第六十四章/甲本第五章/乙本第五十二章/丙本第三十一章
中段を缺く諸章の検討
甲本第六十三章/甲本第三十章
下段を缺く諸章の検討
甲本第十五章/甲本第十六章/甲本第五十五章/乙本第四十八章/乙本第二十章
終わりに
郭店楚墓竹簡『老子』は最古のテキストである/想定される三つの可能性
第七編 郭店楚墓竹簡『老子』の儒教批判
始めに
原本『老子』の成書
『史記』老子列伝の問題点/戦国時代末期に編纂された『老子』/形成途上にある馬王堆漢墓帛書『老子』/最古のテキスト郭店楚墓竹簡『老子』
郭店楚墓竹簡『老子』の儒教に対する批判
郭店楚墓竹簡『老子』の「聖人」「君子」に対する批判/郭店楚墓竹簡『老子』の「不知足」に対する批判/郭店楚墓竹簡『老子』の「学」に対する批判/郭店楚墓竹簡『老子』の「為」「事」に対する批判/郭店楚墓竹簡『老子』の「美」「善」に対する批判/郭店楚墓竹簡『老子』の『禮記』大学篇「八條目」に対する批判/郭店楚墓竹簡『老子』の「孝慈」に対する批判/郭店楚墓竹簡『老子』の「仁義」に対する批判
郭店楚墓竹簡『老子』丙本第十七章と丙本第十八章/郭店楚墓竹簡『老子』丙本第十八章の思想内容と逆説表現/馬王堆漢墓帛書『老子』第十八章における一文の追加
終わりに
附 編 郭店楚墓竹簡『老子』著書目録
論文集の部/著書の部
後書き/索引
内容説明
【本書より】(抜粋)
本書は、荊門市博物館『郭店楚墓竹簡』(文物出版社、一九九八年。以下、本書を『郭店楚簡』と略称し、またその中に収められている十六種類の文献を「郭店楚簡」と略称する。)所収の『老子』甲本・乙本・丙本について譯注を施しつつ、関聯する若干の問題を検討した研究書である。本書の基礎をなす拙著は『郭店楚簡老子研究』であり、その執筆の開始は一九九八年三月である。
本書『郭店楚簡老子の新研究』の出版を思い立ったのは、二〇〇八年の春であった。その主な動機は、以下のとおり。――この八年間、郭店『老子』について論文を執筆・口頭発表することを通じて、筆者の郭店『老子』に対する理解が深まり、前著を大幅に改めたいという気持ちを持つようになったこと、日本には郭店『老子』についての論文はあるけれども、専著がただ前著『郭店楚簡老子研究』の一種類しか存在せず、日本の学界の一員として内心に忸怩たる思いがし続けていたこと、好意的な読者から本書を出版してほしいという要望が寄せられ、その声が次第に強まってきていたが、筆者の年齢から言ってこの声に応えるチャンスを逃すべきではないと考えたこと、などである。その後、二〇〇八年の冬、執筆を開始した。執筆の実際は、前著『郭店楚簡老子研究』を基礎にしてその内容を活かすというやり方に従ったが、前著の内容を大幅に改めただけでなく、新たに「第五編」「第六編」「第七編」を追加することになった。
本書は、郭店楚墓竹簡『老子』という重要な新出資料についての、ささやかな研究成果である。本書の内容が関心を有する研究者によって検討され、国内外の諸分野の研究の進展に多少なりとも貢献することができるならば、筆者の喜びはこれに勝るものはない。