目次
序 論 学説史整理と問題の所在
韋昭の生涯/韋昭の注釈とその諸研究/孫呉政権と韋昭の著述
第一篇 学者としての韋昭
第一章 『国語解』考
注釈の系譜/韋昭注の傾向/鄭学の流入/外傳と内傳
第二章 『国語』旧注考―賈逵・唐固注との比較―
賈逵と唐固について/注釈の比較/比較結果より見る韋昭注の特徴
第三章 『漢書音義』と孫呉の「漢書学」
三国時代における『漢書』受容/注釈の特徴/『漢書』の師法と孫呉の治世
第四章 韋昭と神秘性―鄭学との関わりを中心として―
『国語』の神秘的記事と韋昭注/韋昭と六天説/瑞祥と孫呉の感生帝説
第二篇 孫呉人士としての韋昭
第一章 「博弈論」と儒教的理念
儒教の強調/孫和の焦り/二宮事件の果て
第二章 「呉鼓吹曲」と孫呉正統論
鼓吹曲の性質とその作詞者/曹魏への対抗意識/正統性主張における相違
第三章 『呉書』の偏向とその検討
孫呉政権における韋昭の位置/孫堅と孫邵に関する偏向/陳寿との差異/未完の「正史」
結 論 希代の知識人
「経」と「史」/正統論との関わり/鄭玄と韋昭
附 篇 「呉鼓吹曲」譯注
序・第一曲~第十二曲:「炎精缺」・「漢之季」・「攄武師」・「烏林」・「秋風」・「克皖城」・
「關背徳」・「通荊門」・「章洪徳」・「従暦数」・「承天命」・「玄化」・結
参考文献表・あとがき
内容説明
【本書より】(抜粋)
相次ぐ短命皇帝の輩出により宦官・外戚の跋扈を惹起した漢は、次第に国家運営に歪みを生じ、約四百年という長い寿命を終える。続いて訪れる三国時代は、曹魏・蜀漢・孫呉の三国が同盟や離反を繰り返しながら覇権を争った。わずか百年にも見たぬ間のことながら、日本でも人口に膾炙していることは周知のとおりである。この三国時代を含む魏晋南北朝期は、中国史における一大変革期とされ、その内容は体制・制度・文化など多岐に渡る。儒教一尊であった漢の崩壊により、人々はそれに代わる新たな価値観を求め、生み、受容していった。本書で取り上げる韋昭(二〇四~二七三)は、かかる変革期を生きた知識人である。韋昭にはもっぱら二つの面がある。一つは代表的著作たる『国語』の注釈をはじめ、種々の文書・著述・学術的成果を残した、言わば学者としての面であり、もう一つは、揚州・荊州を拠点とする孫氏の政権を支えた孫呉人士としての面である。これを踏まえ、本書は韋昭の著述内容を中心に、その学問的特質を探求し、また当時の孫呉政権を取り巻く文化および政治的状況との関わりを通じて、総体としての韋昭を論ずることを目的とする。