内容説明
【「改訂増補版あとがき」より】
本書の初版が刊行されてから三十年が経過した。
小さな事典ではあったが――小さいが故でもあったが、幸い多くの利用をいただいたことに感謝している。
利用者からは、誤記の訂正や新しい情報の提供を、特に水田紀久・小谷恵造の両先生には、常に暖かいご助言をいただいた。
本書編纂の目的は、養父の初版の序にもあるように、古書目録編纂時に遭遇する撰者・編者・書写者とその書物の成立の時期を確定することの困難さを解決することにあった。
故に、本書は、単なる人名事典ではなく、目録編纂時に必要な情報を集積し、簡単に検索出来るように配慮した所に形式上の大きな特徴をもっている。この『儒家小誌』を参考とする形式は、『和学者総覧』にも採用されることとなり、今回の改版にも踏襲することとした。
一方、肝心の情報に関しては、初版刊行時に比べて、その後数多くの人物に関する事典類が編纂・刊行され、現物資料以外からも情報を収集することが可能となった。それでも、目に出来る資料には限りがあるが、可能な限りそれらも参考に、利用者からのご指摘を加えて成ったのが本「改訂増補版」である。
単純に所載の標目数を比較しても一・三五倍強となっている。これは、参考とする資料が増加したためだけではなく、三十年間の編目作業に係わる中で、以前には見落としていた情報の中にも、必要と判断する情報が存在したことにもよっている。各地で、未整理のまま埋もれている古書の中には、漢学者・漢文学者が直接関与する漢籍だけでなく、準漢籍や純粋な国書も存在する。これらに等しく日の目を与えるためには、国学者・国文学者に関する情報も必要である。詳しくは『和学者総覧』などに委ねるとしても、漢学を兼学した国学者くらいは必要でないかなどと欲を出したことも一つの理由である。
旧来の項目の中にも増訂したものも少なくないが、蔵書印を集成して刊行された『新編蔵書印譜』などの資料を参考に書斎号や文庫名を加えた。これによって、旧蔵者の探索に役立つものと期待している。
【本書の内容・特色】
◎江戸時代を中心に、その前後、明治以降最近の物故
者に至るまで、6711名を収録した最大・最新の大事
典。
◎漢学者・漢文学者から、漢詩及び書に秀でた人はも
ちろん、関係図書(書誌)学者・蔵書家まで、更に
地方在住者も可能な限り収録。
◎標目は原則として「姓-号」で表わし、50音順に排
列、異なる読み方・修姓からも引けるよう配慮。
◎備考欄に本姓・親子関係・仕官藩名・開塾地・活動
分野・修姓・私諡等関連事項をできるだけ記入。
◎索引は名・号・通称・字等あらゆる項目より引ける
ようにし、これにより姓号が不明でもすべて判明。
◎各項目の各欄の内容を注記した表面と、江戸時代の
年号を時代順に印刷した裏面をもつ栞と、江戸時代
から現在までの元号・西暦・干支の一覧表を付載。
◎日本史学・国文学・書誌学・地方史研究者はじめ、
広く近世以降の日本学研究者必携の事典である。