目次
第一章 近代中国における孫文
第二章 辛亥革命の理論と実際
第三章 辛亥革命と帝国主義―孫文・宮崎滔天の反帝国主義思想
第四章 孫文の平均地検論
第五章 辛亥革命と孫文・宋教仁―中国革命同盟会の解体過程
第二部 世界史における辛亥革命
第一章 世界史における辛亥革命
第二章 世界史の中で辛亥革命を考える
第三部 孫文と日本
第一章 孫文の対日観
第二章 『支那革命外史』の実証的批判
第三章 孫文と「満州租借交渉」・「日中盟約案」再考
第四章 一九二四年、孫文・頭山満会談再考
第四部 孫文の日本同志
第一章 萱野長知の基礎的研究
第二章 『革命評論』廃刊後の萱野長知
第三章 萱野長知の中国観
第四章 『萱野長知・孫文関係史料集』からみた新事実―宋慶齢との結婚など―
第五章 『中華民国革命秘笈』の研究
第六章 梅屋庄吉の基礎的研究―『永代日記』を中心に―
第七章 孫文・梅屋庄吉とインド革命家の交流
第八章 樋口一葉を哀悼した中国革命家陳少白―伊東夏子・副島八十六・片山潜・孫文を結ぶもの―
第九章 孫文と大月薫・宮川冨美子
第五部 雑 録
日本における辛亥革命遺跡めぐり/中国同盟会発祥の地に関する考察/劉大年先生とともに/
辛亥革命七十周年訪中記/孫中山研究国際学術討論会参加記/劉大年先生を偲んで/
田中先生と話したこと/中村義さんを偲んで
あとがき・初出論文一覧・索引
内容説明
【本書より】(抜粋)
私は1960年代に中国近代史の研究を志し、辛亥革命・孫文の研究も始めてから四〇年前後になり、発表した論文も多数になった。著書出版は私なりの辛亥革命百周年の記念行事である。しかしながら、私の当初の研究は毛沢東理論の影響が強い時代に始められたもので、当然ながら、研究を支えた発想や結論は現在では「時代遅れ」になっている部分が多い。それでも、以前の研究成果を基本的にはそのまま著書として公にするのは、一種の「居直り」の心境からである。本書に収録する論文を選んでみて、私は自分の問題意識が「時代遅れ」になっていることに忸怩たる思いを持つとともに、それぞれの論文に紛れもなく時代の刻印が打たれていることをも自覚し、却って安堵感を抱いた。私は歴史現象としての「革命」は、本来は「革命」を望む側と望まない側とのあるいは中間派との「合力」で形成されると考えてきた。従来の研究では革命を望む側の「革命派」・「革命運動」ばかりが研究されて、革命される方の、例えば清朝の制度や実態の研究がまったく不充分だったと思っていた。近年は日本においてばかりでなく、中国の学界において、教条主義的観点から脱した実証的な清朝史・清末史や立憲史が活発になっていることは、大変喜ばしい。こうして、歴史事象としての革命の全体的把握ができるようになると私は期待している。