目次
はじめに――序章に代えて
第一章 国民革命挫折前後の中国人日本留学生の動き
第二章 一九三〇年代日本における中国人日本留学生の文学・芸術活動
第三章 「日本特支」事件
第四章 「東京左連」
第五章 成立期の「東京左連」の活動
第六章 「九・一八事変」前後の「東京左連」
第七章 「九・一八事変」勃発後の「東京左連」の活動
第八章 「東京左連」と「プロレタリア詩人会」、「日本プロレタリア文化連盟」
おわりに――終章に代えて
[関係論文]「東京左連結成前史(その一)(補一)―夏衍の再来日をめぐって、夏衍と藤森成吉のことなど」
[資料]内務省警保局『外事警察報』第一〇七号(昭和六年六月)「中国共産党日本特別支部の検挙」
内容説明
【はじめに――序章に代えて】、【あとがき】より
本書は、私がこれまで行ってきた一九三〇年代日本における中国人日本留学生の文学・芸術活動に対する掘り起こし作業のうち、国民革命挫折前後から九・一八事変勃発後までの中国人日本留学生の文学・芸術活動を、国民革命挫折前後の中国人日本留学生の動向、社会科学研究会、青年芸術家連盟、「東京左連」(中国左翼作家連盟東京支部)の活動などを中心にまとめたものである。
一九三〇年代日本における中国人日本留学生の文学・芸術活動について、それを正面から取り上げたのは、本書がはじめてである。一九三〇年代日本における中国人日本留学生の文学・芸術活動が孕む問題は多岐にわたる。 東京左連をはじめとする一九三〇年代日本における中国人日本留学生の文学・芸術活動が明らかにされていくことは、左連、及び左連に代表される中国「三〇年代文芸」の持つ豊かさの検証につながるだろうし、同時にそれはまた日中近代文学の交流、日中プロレタリア文学の交流、さらには中国人日本留学生史研究などに新たな光を投げかけるであろう。
一九三〇年代日本における中国人日本留学生の文学・芸術活動に関する研究は、いまようやく緒に着いたばかりである。本書が今後の一九三〇年代日本における中国人日本留学生の文学・芸術活動に関する研究、中国人日本留学生史、三〇年代日中近代文学の交流、「三〇年代文芸」研究の一助となれば幸いである。一九三〇年代日本における中国人日本留学生の文学・芸術活動に関しては、これから明らかにされていかなければならない問題が数多く残されている。一次資料、関係資料の発掘も不十分である。こうした研究は地道な掘り起こし作業の上に成り立つものである。そうした作業が日中の双方で進められ、研究の「空白部」が少しでも埋められていくことを願ってやまない。