目次
第一節 鮮卑拓跋部の国家形成とその展開――支配構造の分析
第二節 北朝概念とその理解――政治体制の分析
第三節 北朝国家の秩序づけ――国制原理の分析
第四節 本書の構成
第一部 支配構造編
第一章 北魏建国以前の鮮卑拓跋部
第一節 拓跋初期政権の構成要素
第二節 拓跋初期政権の展開とその特徴〔拓跋力微から拓跋猗廬へ/拓跋什翼犍政権〕
第三節 代国の再建と拓跋珪政権の構造
第二章 前期北魏国家の支配構造――西郊祭天の空間構造を手がかりとして
第一節 北魏の西郊祭天について
〔北魏における二つの祭天儀礼/天賜二年西郊祭天儀礼の内容と空間構造〕
第二節 垣内の参列者――代人について
〔代人の構成/代人の形成過程――部落解散について/「國語」の形成について〕
第三節 垣外の参列者〔外朝臣について/諸部大人について/賓国について〕
附論 1 前期北魏の支配共同体と民衆支配
第一節 支配共同体の創出
第二節 前期北魏国家の民衆支配とその財政基盤
第三章 鮮卑拓跋部の専制国家形成――太和十九年の諸政策を中心に
第一節 三長制の施行と編戸制の確立
第二節 北魏における支配共同体の解体
第三節 「洛陽、我れの豐沛なり」
第四章 新民政策から見た北魏の支配
第一節 移動させられる新民たち
第二節 境界の新民たち
第三節 流動化する新民たち
第四節 北魏における新民
第二部 政治体制編
第五章 爾朱栄政権論――末期北魏における「代」の再定位
第一節 爾朱栄執権前の時代状況〔官僚登用制度――旧代人を中心に/皇帝の正統性〕
第二節 爾朱栄政権における新たな傾向
第三節 政権としての爾朱栄集団
第六章 北斉の政治体制
第一節 北魏末から東魏までの政治体制
第二節 北斉における代体制〔天保十年の政策/乾明元年の政変と孝昭帝政権〕
第三節 北斉における諸集団と両都制〔北斉における諸集団/北斉の両都制〕
第七章 西魏・北周における第二次「代人共同体」の形成
第一節 西魏・北周における国姓政策と本貫の関隴化
第二節 保定四年東征の軍事編成
第三節 軍事から見た北周の領域編成
第三部 国制原理編
第八章 可汗の論理
第一節 可汗号が機能する場――西郊祭天と東廟儀礼〔西郊祭天儀礼/東廟儀礼〕
第二節 北魏可汗号の権力の由来〔天女の子拓跋力微/皇帝・天子号との関係〕
第三節 その後の可汗号〔北魏可汗号の終焉/後期北朝から隋唐期における可汗号の展開〕
第九章 北朝における漢魏故事
第一節 前期北魏における故事〔前期北魏における先行王朝の故事/前漢の故事〕
第二節 北魏における漢魏故事の定位〔漢魏故事の採用/正統性と漢魏故事〕
第三節 継承と拒絶の間――後期北朝における漢魏故事
〔継承と拒絶の背景/拒絶から継承へ――北周から隋へ〕
おわりに――漢魏故事時代の終焉
附論 2 漢魏故事の成立
第一節 泰始新礼の成立
第二節 漢魏故事の内容
第三節 西晋における漢魏故事の受容
第十章 北周のイデオロギー政策
第一節 「魏の後を紹」ぐ者〔北周における元氏/元羅と元謙〕
第二節 宇文氏の始祖説話
附章 北朝国制史の研究動向
第一節 戦前から一九六〇年代までの研究〔政治史研究/制度史研究〕
第二節 一九六〇年代における新たな展開――谷川道雄氏の研究を中心に
〔支配層を中心とした北朝史理解の転換/共同体論と小農民の再生産〕
第三節 部族制の再評価
〔前期北魏国家の性格をめぐって――「部族解散」理解を中心に/制度における北族的側面の見直し〕
第四節 近年の研究動向
〔礼楽制度および正統性に関わる研究/ユーラシア史的観点の導入/制度史研究/国家論研究〕
終章 北朝国家の歴史的特質
第一節 中国史上における歴史的特質――第二次専制国家の形成
〔専制国家受容層の拡大/「漢」の拡大/戸数原理に基づく人為的編成の貫徹と徹底化〕
第二節 世界史上における歴史的特質
〔「拓跋国家」論批判/アラブ帝国との比較/朝鮮三国における国家との比較/世界史上における支
配共同体型国家〕
参考文献/あとがき/索引
内容説明
【序章 本書の課題と分析方法 より】(抜粋)
本書は……北魏、さらにそれを継承した東魏・北斉、西魏・北周がどのような統合・支配のあり方を模索したのか、言い換えればどのような国家を形成したのかを「反覆」・「継承」・「蓄積」・「展開」・「変形」という点に留意しながら、明らかにしようとするものである。……第一部は支配構造編として、鮮卑拓跋部が北魏建国前に創り出した初期政権、および前・後期北魏国家の支配構造を分析対象とする。……第二部は政治体制編として、六鎮の乱以降の末期北魏から北魏分裂を経て建国した東魏・北斉および西魏・北周の政治体制を分析する。……第三部は国制原理編として、北朝諸国家における国制原理を分析する。……附章「中国北朝国制史の研究動向」は、国制史の視点から中国北朝に関する研究動向をまとめる。本来であれば研究動向を本書冒頭に付すべきであろうが、バランスを考えてここに回した。終章「北朝国家の歴史的特質」では、第一章から第十章までの考察結果をふまえて、中国史上および世界史上における北朝国家の歴史的特質を論じる。