目次
第一部 天と人との媒介として機能する神々
第一章 天と地との分離を語る神話――蚩尤に関する神話を中心として――
第一節 蚩尤に関する先行研究
第二節 『史記』に記された蚩尤
第三節 『史記』に先行して存在した蚩尤に関する資料
第四節 重黎の天地分離神話
第五節 共工神話における「天柱」
第六節 蚩尤による天地分離
第七節 天地分離に関わる三柱の神――蚩尤・重黎・共工の三つの神話――
第二章 「長沙子弾庫帛書」に見る天地創造の神話
第一節 「八行文」について
第二節 「八行文」に見られる天地分離神話
第三節 「十三行文」について
第四節 「四神」・「百神」・「群神」の性格について
第三章 五行説成立以前の四方神と「四神」との関係について
第一節 殷代四方風
第二節 『山海経』・『尚書』堯典に見える殷代四方風の伝承
第三節 『毛詩』に見える「方社」
第四節 祭祀を受ける対象
第五節 『山海経』に見える三組の四方風と「子弾庫帛書」の「四神」
第四章 山川の「神」の性格について――「其の為(おこない)を蠲(いさぎよ)く」しない「間行」ある神々―
第一節 上帝の下位に位置し禍福を降す「神」
第二節 祭るべき神々
第三節 祟りを降す山川の神々と「民神」
第四節 君主と「神」の関係について
第五章 「明神」の役割と性格について
第一節 『毛詩』大雅・蕩之什「雲漢」に見える「明神」
第二節 伝世文献の載書に見える盟誓の神
第三節 出土載書
第四節 国家の興亡に関わる「明神」
第五節 「明神」に期待される役割
小結
第二部 仲介者としての巫とその特徴
第一章 古代中国における宗教職能者の諸相――巫と祝(しゅく)宗(そう)卜(ぼく)史(し)――
第一節 「巫」とシャマンについての諸論
第二節 殷代の巫
第三節 巫と祝・宗・卜・史との相違
第四節 史料から見る巫の職能
第二章 「日書」に見える巫と狂との関係について
第一節 「日書」に記される「巫」
第二節 伝世文献に見える「狂」と「巫」
第三節 「狂」について
第三章 巫となる際の神秘体験について
第一節 古の「巫」の姿とは
第二節 「巫」となる過程
第三節 「巫」となる過程での「狂」
第四章 蛇の夢――蛇と女性との複合的な観念について――
第一節 嶽麓秦簡『占夢書』について
第二節 蛇の夢と女性
第三節 蛇・口舌・火・女性
第四節 蛇の祥と子ども
終章
初出一覧・あとがき・索引
内容説明
【序章より】
本書は、中国神話の構造を論じた第一部と、民間の宗教者である巫の特徴を論じた第二部との、全二部から構成されている。(中略)本書では、ある神について、先史時代にまで遡ってそれを信奉したであろう民族や部族を探求することはしない。あくまで文献が書かれた先秦時代を対象とする。また、それぞれの神話群の中から、特定の幾柱かの神々のみを取り出して比較する比較神話学が抱える問題を回避するため、より普遍性があると考えられる、神の持つ役割や機能的側面について考察していく。そうすることで、この時代の神観念を理解し、他の地域の神観念と比較する上での土台となる枠組みが得られると考えるからである。
本書第一部の考察対象である神とは、上帝や天のような至上神の下位に位置し、至上神と地上の人々との間で媒介として機能する存在である。第一部では、神の持つこうした仲介者としての役割とその性格の多様性を考察する。(中略)次に、第二部では、「神」の役割が後退した漢代以降に、人々と神々との媒介者・仲介者となった「巫」について検討する。