目次
1.序説 1-1 字類抄成立以前の字書
1-2 色葉字類抄の編纂と特徴
1-3 字類抄現存諸本の関係
1-4 音注の分析方法
2.前田本色葉字類抄の仮名音注
2-1 同仮名音注のイロハ順一覧
2-2 同仮名音注の韻母別一覧
2-3 同仮名音注の声母別一覧
2-4 同仮名音注の声調別一覧
2-5 附篇
3.仮名音注の韻母別考察
〔Ⅰ韻類/Ⅱ韻類/Ⅳ韻類/ⅢB韻類/ⅢA韻類/保留(廣韻不載諸例)/韻母別考察による仮名音
注の対応〕
4.仮名音注の声母別考察
〔p- 系, pj- 系(脣音)/t- 系(舌頭音・半舌音)/ṭ- 系(舌上音)/ts- 系(歯頭音)/
tṣ - 系(正歯音二等/歯上音)/tś-(正歯音三等)/k- 系, kj- 系(牙喉音)/声母別考察に
よる仮名音注の対応〕
5.前田本色葉字類抄の声調別考察〔平声/東声/上声/去声/入声/徳声/声調把握の実態〕
6.まとめ
【資料篇】(ISBN978-4-7629-3694-4)
A前田本色葉字類抄の仮名音注/イロハ順一覧 B前田本色葉字類抄の仮名音注/韻母別一覧
C前田本色葉字類抄の仮名音注/声母別一覧 D前田本色葉字類抄/声調別一覧
E前田本色葉字類抄/同音字注一覧・反切一覧(廣韻一致例 廣韻不一致例)
内容説明
本書は尊経閣文庫蔵三巻本色葉字類抄(通称前田本)に附された仮名音注(上巻5,101例・下巻4,758例)の分析を試みたものである。分析に当たっては、『観智院本類聚名義抄』『長承本蒙求』『承暦本金光明最勝王経音義』を中心に、また適宜他の古辞書類も援用して、当該字に附された音注の用例を示し、前田本のそれと比較・対照できるようにした。そして前田本の仮名音注が示す日本漢字音の実態を、斜体のラテン文字(いわゆるローマ字)で集約し、韻母別・声母別・声調別に表示した。色葉字類抄などの字類抄諸本の編纂過程は、概ね①いわゆる「色葉和名」の基準に基づく和訓語彙の蒐集〔分類体裁としてイロハ順の検索を採用した初期段階〕、②語彙数の増加と字音の付載〔利便性の向上を目指した増補改訂段階〕、の二段階を想定でき、増補改訂が進む中で、反切・同音字注・仮名音注が附載された。早い段階における字音の把握は、反切・同音字注で対応し、仮名音注はその後の段階で附されたと覚しい。三巻本前田本色葉字類抄に附された仮名音注は、日本語に馴化した段階を示しており、もはや呉音的特徴、漢音的特徴は区別されていない。
資料篇の【A・B・C・D】の表はそれぞれ、「番号(掲出字の原本出現順の通し番号)・所在・掲出字・仮名音注・中古音(三根谷説による推定音)・韻目(掲出字に対応する廣韻の所属韻)」から構成される。なお、廣韻にない掲出字は、中古音の推定音に( )を附した。