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中国労働史・工場法史研究序説  新刊

中国労働史・工場法史研究序説

◎三十年の時を経て、中国労働史・工場法史の專著なる!

著者 久保 亨
菊池 敏夫
広田 寛治
ジャンル 東洋史(アジア)
東洋史(アジア) > 近現代
出版年月日 2024/09/10
ISBN 9784762967467
判型・ページ数 A4・300ページ
定価 7,920円(本体7,200円+税)
在庫 在庫あり
 

目次

刊行にあたって
序章 中国労働史・工場法史への招待 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 久保 亨
一 労働者の誕生
二 社会現象化した労働争議と労働団体の結成 一九二〇年代
三 労働者の再組織と工場法体制の模索 一九二〇年代末~一九三〇年代
四 戦時から戦後にかけての労働者と労働運動 一九三〇年代末~一九四〇年代
五 人民共和国期の中国労働者
第一章 清末工業化と機械工――福州船政局の考察―― ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 菊池敏夫
一 福州船政局の経営特質[船政局の創辧/業績と経営上の問題]
二 熟練機械工の状態[生産過程と労働力編成/機械工の来源と熟練の形成/賃金水準・決定機構/
    労働者統轄など]
第二章 民国期中国労働者の構成・意識・組織 ‥‥‥‥‥‥‥ 中国労働運動史研究会報告者集団
一 民国期中国労働者の実態
二 中国労動協会の組織と活動[創設期(一九三五・二~一九三八・二)/戦時期(一九三八・三~一九
四五・八)/戦後期(一九四五・九~一九四九・一一)]
第三章 南京政府工場法研究序説 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 広田寛治
一 国民党の労働政策と工場法
[問題の所在/南京政府成立前の労働政策(ILO勧告と労働立法運動・国民党の労働政策の形成過程・北京政府の暫行工場通則)/南京政府の労働政策と法体系(労働政策の理論構造・南京政府の労働法体系)/南京政府工場法の位置(南京政府工場法の性格・南京政府工場法の位置)]
二 南京政府工場法の立案過程 一九二七年四月~一九二九年一二月
[問題の所在/「労働法典」編纂の試み(歴史的背景・労工局の成立と労働行政方針・労働法起草委員
会の活動・「労働法典」の編纂・小結)/工商部工場法草案の立案過程(歴史的背景・工商部の労働行政
方針・工商部工場法草案の成立・小結)/工商部草案に対する各層の対応(ILOと帝国主義諸国の対応・
中国資本家側の対応・労働者側の対応)/立法院での立案と工場法の成立(歴史的背景・立法院での起
草開始・工場法原則の決定と工場法の成立・小結)]
三 工場法の施行準備過程 一九三〇年一月~一九三一年八月
  [問題の所在と歴史的背景(問題の所在・歴史的背景)/資本家側の抵抗と施行延期決定(資本家に
よる施行延期・修正要求・全国工商会議の開催・工場法の租界内施行問題・工場法の施行延期決定)/実業
部の成立と施行準備の進展(実業部の成立と労働行政方針・労働者福利事業の準備活動・工場検査の実施
準備状況)/各地での工場法施行準備状況(概況・上海市の準備状況・他の省市の準備状況)/工場法
修正要求と施行の強行(「工商管理協会」の工場法修正案・労働者側の工場法修正要求・工場法施行の強
行)]
四 工場法の第一次施行とその中断 一九三一年九月~一九三二年一月
  [問題の所在/歴史的背景/工場法の施行と労資の対応(工場法施行前夜の状況・資本家側の対応と推
進派の存在・労働者側の工場法履行要求)/租界内施行交渉の進展(租界側の対応とILO代表の来華・租界
内施行交渉の進展と中断)/各地での施行状況(上海における施行状況・各地の工場検査進展状況・工場
法施行状況)/工場法第一次施行の問題点(「備忘録」と「漸進主義」の建議・工場法第一次施行の問題
点)]
五 工場法の修正と施行再開 一九三二年二月~一九三三年七月
  [歴史的背景と問題の所在/労働政策の変化と工場法の修正(労働政策の変化・資本家側の工場法批
判と工場法の修正・工場検査体制の見直し)/工場法租界内施行第二次交渉(工場検査の再開と租界
側との衝突・「土地章程」改正の動き・第二次交渉の展開・第一七回ILO代表大会)/工場法の施行再開
と労働者(労働者側の工場法認識の変化・労働者の工場法租界内施行要求)/各地の実施状況(上海市
の実施状況・他の省市での実施状況)/総括
六 恐慌下における工場法の施行 一九三三年八月~一九三七年七月
  [歴史的背景と問題の所在/中央工場検査所の成立とその活動(中央工場検査所の設立・その活動と
「漸進主義」の採用)/工場法租界内施行交渉の継続(第一八回ILO代表大会と個別交渉・租界当局と
の第三次交渉)/恐慌下の施行に対する労資の対応(恐慌下での工場法をめぐる議論・「三・八制」
取消しをめぐる争議)/各地の実施状況(工場検査の進展状況・労働者福利事業の進展状況)/総括]
資料一 中国労働運動史研究会の軌跡 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 菊池敏夫・高綱博文
資料二 『中国労働運動史研究』総目次
文献目録/あとがき/索 引

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内容説明

 本書は、一九八〇~九〇年代に執筆・発表した論考に、書下ろしの序章を加え一冊としたものである。これまで中国労働史、工場法史を広い視野で論じた研究書はなく、また、現在の中国において二〇世紀の中国労働者と労働運動の歴史研究を志す若い研究者がでてきている状況から、本書各論考は今後の研究者に大きな示唆を与えるものである。尚、資料一「中国労働運動史研究会の軌跡」は歴史研究者必読の一文である。 

【「刊行にあたって」より】(抜粋)
 中国における労働者と労働法制の歴史をひもとき、現代中国に対する歴史的理解を深めることが、本書刊行の第一の目的である。一九世紀半ばに生まれ、今や就業人口の八割近くを占める中国の労働者は、とくに一九二〇年代から四〇年代にかけ、よりよい生活を求めて様々な運動を繰り広げ、社会変革の重要な一翼を担う時もあった。一方、そうした労働者の権利を守り、労働条件を改善するための労働法制を整える試みも、すでに百年以上の歴史を刻んでいる。中華民国期(一九一二―四九年)に着手され、人民共和国期(一九四九年以降)に整備が進んだ工場法を軸とした労働法制は、労働者の要求に応える面を持つとともに、労働者を社会秩序の中に組み込む役割も果たした。以上に略述した過程を一望の下に見渡せる歴史書は、残念ながら未だに見当たらない。序章冒頭と資料一に記されたような研究状況が、そうした叙述を困難なものにしてきた。本書は、序章で、近現代中国における労働者と労働法制の歴史全体の流れを俯瞰する。
 第二に、中国の労働者と労働法制の歴史を理解する鍵となる重要な問題について、本書は、過去に日本で発表されながら必ずしも十分に注意されてこなかった個別研究を収録し、紹介する。第一章は、西欧諸国や日本における場合と同様、中国でも最初に組織的な労働運動を主導する役割を果たした機械工業労働者の形成過程を具体的に明らかにした研究である(「清末工業化と機械工」)。続く第二章は、軽工業を中心とする輸入代替工業化が急速に進んだ中華民国期の労働者の状態を概観し、一九三〇年代から四〇年代にかけ最も重要な役割を果たした労働団体である中国労動協会の運動を解明している(「民国期中国労働者の構成・意識・組織」)。そして工場法を軸とした労働法制が一九三〇年代に整備され、実施されていく過程を全面的に明らかにした作業が第三章である(「南京政府工場法研究序説」)。それぞれの研究の意味については序章の中でも触れるようにした。
 本書刊行の第三の目的は、一九七〇年代末から一九八〇年代にかけて活動した中国労働運動史研究会の足跡と研究成果を記録に残しておくことである。その概要は、資料一として収録した「中国労働運動史研究会の軌跡」、並びに資料二として収録した研究会の会誌『中国労働運動史研究』総目次によって、知られるであろう。なお本書に収録した第一章・第三章は、いずれも同誌に掲載された論文が初出であり、歴史学研究会大会近代史部会報告を転載した第二章も、中国労働運動史研究会の活動を反映した成果である。

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