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近世における唐話学の展開  新刊

近世における唐話学の展開

◎唐話学・白話文献の受容は日本文化に何をもたらしたのか、その影響の具体相を明らかにする

著者 宮本 陽佳
ジャンル 中国古典(文学)
中国古典(文学) > 唐宋元
中国古典(文学) > 明清
日本古典(文学) > 近世文学
日本古典(文学) > 近世文学 > 小説
出版年月日 2024/03/29
ISBN 9784762936906
判型・ページ数 A5・440ページ
定価 12,100円(本体11,000円+税)
在庫 在庫あり
 

目次

序 文  (小松 謙)

序 章


第一部 白駒の『水滸傳』講義

 第一章 『水滸傳譯解』にみる岡白駒の『水滸傳』研究――その使用版本から――
  一、『譯解』の成立に関して           
  二、使用した版本について――問題の所在
  三、使用した百二十回本
  四、百二十回本以外の版本の利用
        どの版本とも一致しない例
        参照された版本
  五、使用された版本の所在について

 第二章 『水滸傳譯解』にみる岡白駒の『水滸傳』研究――研究の位置付けと講義の実態を探る――
  一、『水滸傳』の注解              
  二、冠山、南濤の解釈との関係
  三、一齋本と艮齋本①――記載される解釈の差異   
  四、一齋本と艮齋本②――項目数の差異

 第三章 『水滸傳』講義録の継承について
  一、各講義録について  
  二、各講義録の成立について
       転写
       講師の認識
  三、各講義録の関係について
       ②グループ内の継承
       ②グループの成立の背景
       その他の講義録について


第二部 白駒から一齋へ

 第一章 澤田一齋の『水滸傳』講義をめぐって
  一、一齋の講義――「風月庄左衛門説」
       講義録について
       使用版本
       解釈について――白駒からの影響
  二、白駒から一齋への継承   
  三、『水滸傳』研究および講義の変化――和刻本刊行の影響

 第二章 和刻本『忠義水滸傳』二集について――澤田一齋の関与をめぐって――
  一、和刻本初集と二集について――施訓方針の相違
  二、二集の施訓者は誰か    
  三、和刻本二集刊行の背景
       刊行予告について
       書肆同士の関係について


第三部 「和刻三言」小考

 第一章 『小説精言』『小説奇言』の底本について
  一、「和刻三言」の原拠について
  二、『精言』が依拠した版本  
        巻一「十五貫戯言成巧禍」、巻三「張淑兒智脱楊生」、
                       巻四「陳多壽生死夫妻」について
        巻二「喬太守亂點鴛鴦譜」について
  三、『奇言』が依拠した版本
        巻一「唐解元玩世出奇」について
        巻二「劉小官雌雄兄弟」について
        巻三「滕大尹鬼斷家私」について
        巻四「錢秀才錯占鳳凰儔」について
        巻五「梅嶼恨蹟」について
  四、小結

 第二章 「和刻三言」収録篇から見る小説の評価
  一、想定される選択基準とその問題点
  二、岡白駒による小説の評価
        白駒序と『古今奇觀』序の近似
        『古今奇觀』の収録篇選択について
        『精言』『奇言』に見える現実性
        『文心雕龍』の影響――「諧辭讔言」と小説
  三、澤田一齋による小説の選択・評価       
  四、施訓者二人の白話小説の認識


第四部 白駒の言語観――徂徠学との関連から

 第一章 『明律譯註』に見る岡白駒と蘐園学派の明律研究
  一、『譯註』成立について
        成立に関する問題点
        『譯註』と『國字解』『考』の関係
  二、「増改」の方法
        『明律』注釈書
        白話文解釈
 
 第二章 『論語徵批』に見る言語観――関西圏における古文辞学受容の一側面――
  一、『論語徵』と『論語徵批』
        成立について
        『徵』批判書としての『徵批』の特徴
  二、白駒が考える『徵』の「誤謬」        
  三、『助辭譯通』から見る白駒の言語観


終 章


あとがき
索引(書名・人名)

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内容説明

【「本書」より】(抜粋)
 近世期以降、唐話学・白話文献は日本文化に何をもたらしたのか。本書はこの問いに答えることを大きな目標として見据えながら、研究対象としての白話小説の有り方を追求し、更にその研究が漢籍解釈に与えた影響を考察してきた。岡白駒の文事を中心に据えるという方法を取ったため、検討した範囲は決して広くはないが、これまで見落とされてきた問題や資料に光を当てることが出来たかと思う。
……第一部では白駒が行った長編白話小説『水滸傳』の講義について検討する。これが、現在確認出来る白駒の最も早い白話研究である。日本の『水滸傳』研究史においても大変早い時期に行われており、白駒が当時の学問的流行の最先端にいたことや、当時の人々の『水滸傳』への関心の高さを表す興味深いものである。ここでは講義の実態を追求し白駒の白話文解釈のレベルを探るとともに、その講義内容がどのように継承されていったのか明らかにすることを試みる。
 第二部では白駒と深い関わりを持った澤田一齋の『水滸傳』研究を取り上げ、白駒の研究内容がどのように引き継がれたのか検討する。更に書肆の主人でもある一齋が『水滸傳』の刊行に関与していた可能性についても探っていく。
 第三部では、「和刻三言」の成立を明らかにすることを試みる。白駒が短編白話小説をどのように読んでいたのか、また一齋との認識の相違点等について探る。
 第四部では、白駒が徂徠の著書に対して残した著述を分析し、白駒が徂徠の学問をどのように見ていたのか検討する。徂徠を激しく批判した漢学者達の著述にも目を向けながら、白駒が生涯の文事活動を通して確立した言語観について考察したい。
 以上の検討を通し、唐話学が近世期の漢籍解釈にもたらしたものを明らかにしていきたい。また、本書を足掛かりとして、唐話学・白話文献の受容が今日までの日本文化にもたらした影響の具体相を明らかにすることを、大きな目標としたい。



Development of Tōwa Study in Early Modern period

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