目次
プロローグ
第一節 本書の対象と目的
(1)古代的死者性と中世的死者性
(2)「死者性」という概念
①死生観の一般構造
②宗教的死生観と「死者性」
③「死者性」の基本的なあり方
第二節 古代中国に他界観はなかったか――銭穆の場合
(1)問題設定ならびに西洋文明に対する視点――[二元対立的]比較文化論
(2)魂と魄
(3)「心」としての永生と祭祀
(4)中国宗教のダイナミズム
(5)本音はどうなのか?
第三節 本書の構成と方法論
第一章 殷周時代の祖先崇拝と葬送儀礼のメカニズム
第一節 天命と祖先祭祀
(1)天上他界
(2)宗族と孝
①姓と氏
②大宗と小宗
③同宗と認識される親族範囲「五服」
④長子相続と族長の地位(「適」「後」「重」)
⑤同居・同財
⑥宗廟と祭祀祖先の世代数
⑦微氏家族銅器群に見る宗族
第二節 『儀礼』士喪・既夕・士虞の葬礼儀礼
(1)『儀礼』というテキスト
(2)喪服の原則
(3)儀礼が行われる場
(4)『儀礼』の葬送儀礼(1)――死から葬まで(士喪篇)
(5)『儀礼』の葬送儀礼(2)――啓殯から反哭まで(既夕篇)
(6)『儀礼』の葬送儀礼(3)――虞祭およびそれ以降(士虞篇)
(7)『儀礼』葬送儀礼の特徴
第三節 『儀礼』特性饋食の祖先祭祀
(1)特性饋食の参加人物
(2)特性饋食の儀礼シナリオ
(3)解 釈
第四節 小 結
第二章 戦国時代の死生観の変化――先行研究を踏まえつつ
第一節 魂と魄――余英時
(1)長生と不死、昇仙
(2)漢代における霊魂観と死後世界の変化
(3)『太平経』の死後世界
(4)二元的霊魂観が表していたものは何か
第二節 戦国時代の社会変動――杜正勝
(1)生命観と寿命観の変遷
(2)司命神の信仰
(3)徳と威儀
(4)長生の追求
(5)戦国時代における祖先祭祀の変化――戦国楚の卜筮祭禱簡
(6)穢れた死者の登場――睡虎地十一号秦墓『日書』
第三節 『儀礼』少牢饋食の祖先祭祀
(1)末永高康の『儀礼』研究
(2)少牢饋食礼前半――正祭
(3)少牢饋食礼後半――儐尸礼
(4)考察1――親族関係と君臣関係
(5)考察2――『儀礼』郷飲酒礼との比較
第四節 墓室構造の変化と墓祭――蒲募州・黄暁芬・巫鴻
(1)椁墓から室墓へ
(2)霊坐
(3)墳丘と墓祭
(4)墓室構造の変化から読み取れる死後世界観と霊魂観の変化
第五節 死後の永生――マイケル・ローウィ、小南一郎、伊東清司
(1)馬王堆一号墓の帛画
(2)規矩鏡
(3)西王母
第六節 死生観の類型論――康韻梅
(1)生と死を連続とする考え
(2)長生不死という神話
(3)死んでも滅びないという信仰
(4)生を以て死を制御する理性主義
(5)漢代の薄葬論
第三章 紀元前3世紀の死者が蘇る話
第一節 甘粛省天水放馬灘一号墓『丹』
(1)放馬灘一号墓
(2)放馬灘『丹』の研究状況
(3)釈文
(4)注釈
第二節 北京大学蔵秦簡『泰原有死者』
(1)北京大学蔵秦簡の概要
(2)『泰原有死者』釈文
(3)注釈
第三節 宗教職能者による喪葬改革運動
(1)「司命」神
(2)喪葬改革(「移風易俗」)
(3)「鬼」の性格――冥界の官吏なのか、無縁の死者なのか
第四節 九店楚簡「告武夷」
(1)湖北省江陵県九店墓群ならびに九店楚簡『日書』
(2)「告武夷」篇釈文・注釈
(3)コメント
第五節 コンスタンス・クックと来国龍の解釈
(1)北大蔵秦簡『泰原有死者』と放馬灘『丹』の死者世界はいかなる背景から生まれたのか?
(2)死者の行き先に関するコンスタンス・クック(2006)の解釈
(3)九店『日書』「告武夷」篇に対する来国龍(2015)の解釈
第四章 前漢時代の告地文
第一節 告地文釈文・注釈
(1)湖北省江陵県謝家橋一号墓木牘3枚
(2)湖北省江陵県高台一八号墓木牘
(3)湖北省江陵県毛家園一号漢墓木牘
(4)湖北省江陵県鳳凰山一六八号墓竹牘
(5)湖北省江陵県鳳凰山一〇号墓六号牘
(6)湖北省随州市孔家坡八号漢墓木牘
(7)江蘇省邗江県胡場五号漢墓文告牘
(8)湖北省雲夢県龍崗六号秦墓木牘
(9)湖南省長沙市馬王堆三号墓木牘
第二節 告地文の他界観
第五章 香港中文大学文学館蔵「建初四年序寧簡」
第一節 序寧簡釈文・注釈
第二節 序寧簡の全体的構成
第三節 序寧簡が表す死生観
第六章 後漢時代の買地券と鎮墓文
第一節 契約文書としての買地券
(1)初期の買地券研究
(2)買地券の弁偽――契約文書がなぜ随葬されるのか
(3)買地券・鎮墓文の蒐集と体系的著録
(4)北宋『地理新書』における斬草儀礼と買地券
(5)神と死者の契約、死者と死者の契約
第二節 喪葬儀礼の一環としての鎮墓文
(1)死生観・他界観からの鎮墓文研究
(2)罪と罰
第三節 “呪符”としての瓶――鎮墓瓶の墓内配置
(1)鎮墓文の発信者
(2)鎮墓文の墓内配置
(3)その他の買地券・鎮墓文の設置位置
(4)考察ならびに敦煌鎮墓瓶の設置位置
第四節 初期道教と鎮墓文
(1)鎮墓文と符
(2)鎮墓文と『太平経』
(3)鎮墓文と天師道
(4)鎮墓文を道教の産物とする説への批判
(5)死者性における鎮墓文と道教の違い
附表【『赤松子章暦』上章文一覧】
附表【『中国道教考古』における鎮墓瓶の器形分類】
第五節 鎮墓文と六朝志怪
(1)六朝前期(3・4世紀)の志怪における死者
(2)六朝後期(5・6世紀)の志怪における死者
(3)死後世界の観念における鎮墓文と志怪の違い
(4)鎮墓文の太山君と六朝志怪の泰山府君
資料【六朝志怪における死者にかかわる話】
第六節 鎮墓文・買地券の時代的変化と継続性
(1)後漢時代から南北朝時代まで
(2)隋・唐・宋・元・明
(3)清・民国・現代
(4)天帝使者は巫祝の自称ではなかったとする黄景春の説について
第七節 結論的考察――後漢時代の鎮墓文・買地券の基本論理と世界観
(1)陳亮「漢代の社会変化における墓葬文書――来世概念の類型論的考察」
(2)鎮墓文の内在的論理
第七章 描かれた死後世界――帛画・壁画・画像石
第一節 崑崙山への昇仙というテーマ
(1)戦国~前漢時代の帛画
(2)前漢時代の画像石
(3)後漢時代の画像石・磚
(4)後漢時代の祠堂画像石
(5)小結
第二節 神話的要素というテーマ
(1)前漢時代の河南省の画像磚
(2)後漢時代の画像石における樹木
(3)死後の楽園と冥界神の支配
(4)半開きの扉
第三節 祠堂祭祀というテーマ
(1)祠堂画像石の楼閣礼拝図と車馬出行図
(2)戦争、狩猟および庖廚図
(3)前漢後期~後漢初期の画像石棺
(4)後漢時代の墓室画像石
第四節 門番というテーマ
(1)山東・河南・江蘇地方の初期画像石に見られる璧玉像と門闕像
(2)璧玉と樹木、闕
(3)三番目の車馬行列と死者の行方
第五節 旅というテーマ
(1)宇宙、不死の楽園、楽しき我が家 my happy home
(2)霊坐と死者のペルソナ
(3)旅
第六節 画像と道教
(1)馬王堆一号墓
(2)太陰煉形
(3)老子真形図と道書の伝授
(4)姜生説の評価
(5)小結
第八章 墓碑と墓葬題記における顕彰の構造
第一節 墓碑の基本的性格
(1)顕彰としての墓碑の特徴と構成要素
(2)葬送儀礼の一環としての墓碑――空間配置と建立時期
(3)祠堂題記と墓室題記
第二節 墓碑に描かれる死者
(1)孝
(2)寿命の有限性の認識
(3)制度による制約、余悲
(4)死者による嘉納
(5)死者から子孫へ対する恩寵
A. 恩寵=降福の祈願
B.子孫の繁栄が死者の恩寵に依っているという認識
C. 恩寵=範型・規範
第三節 ケネス・ブラッシャーによる漢代の「死者性」理解
(1)『古代中国における祖先の記憶』
(2)『古代中国における公共の記憶』
第四節 小結――死後の救済儀礼としての立碑
エピローグ
第一節 戦国秦漢時代の死生観の変化は何を表していたのか
第二節 中国的聖俗観念――「絶地天通」神話
後漢買地券・鎮墓文著録表
参照文献一覧
人名索引
内容説明
【本書より】(抜粋)
本書は古代中国の死生観ならびに死者観の変遷を追った書であり、分析の主対象になるのは戦国秦漢時代のいわゆる出土資料になる。
……構成であるが、死生観にかかわる材料(資料)ごとに、大雑把に時代的に配列することにした。戦国秦漢時代の死生観研究で使われる材料は、伝世文献を除くなら、戦国時代の『日書』(特に死者が蘇る話)、前漢時代の告地文、後漢時代の香港中文大学蔵「序寧簡」、買地券、鎮墓文(鎮墓瓶)、画像(戦国末~前漢時代の帛画・壁画、後漢時代の画像石・壁画)、後漢時代の墓碑である。この順番で構成する。
Reversal of the “Deadship” in Ancient China
―― Changes of the ideas of Life and Death in Zhanguo, Qin, and Han Periods ――