目次
第1章 唐宋粟米考
1 粟と米の換算
2 輸送・納税・貯蔵・糴法は粟か米か
3 民間の経済生活
第2章 宋代先進地帯の階層構成
1 地域区分と統計表
2 両浙の階層
第3章 南宋勧農論――農民支配のイデオロギー――
1 農耕上の指導督励
2 農業生産阻碍の要因
3 勧農文の論理
第4章 煕豊変法の歴史的位置
1 宋初の農村と農業
2 農村で実施された煕豊変法
3 宋初の流通経済
4 物流にかかわる煕豊変法
5 変法の成果と歴史的特質
学説史編
第5章 宋代農村社会史研究の展開
1 地主と農民をめぐる諸問題
(1)50~60年代前半――周藤・宮崎・仁井田の学説――
(2)60年代後半~70年代前半――草野・丹・柳田の学説――
(3)70年代後半以後――高橋以後の学説――
2 主戸客戸論争
3 唐宋社会変革論
(1)50年代
(2)60年代
(3)70年代
第6章 唐宋変革と流通経済
1 自然経済から貨幣経済へ
2 唐宋間における流通経済発展の諸現象
3 前期的資本論・市場階層論
4 前期的資本と農村社会構成の結合
5 専制国家体制下の流通経済
第7章 日本における宋代貨幣史研究の展開
1 第1期――1940年代までの研究――
2 第2期――1950年代から1980年代前半までの研究――
3 第3期――1980年代後半以後の研究――
第8章 1970年代後半以後の日本における宋代財政史研究
1 両税法と官田・公田
2 その他の課税
3 宋代財政の特徴・原理
4 役法と地方財政
5 行役と免行銭
6 財政的物流
(1)上 供
(2)市 糴 法
(3)市 易 法
(4)輸送と物流圏
(5)専 売
(6)国家為替
(7)南宋の財政的物流と地方財政――総領所体制――
第9章 春秋戦国から元にいたる中国経済史研究の展開
1 課題と方法
2 生 産―-農村の経済関係と諸産業――
3 流 通――商人・市場・貨幣――
4 財 政
学説史5編の統合参考文献
あとがき
索 引
中文提要
内容説明
【あとがき より】
本書は二部構成である。第1章から第4章は論文編、第5章から第9章は学説史編である。論文編第1章「唐宋粟米考」は穀物を計量するとき、どのような状態の穀物を計量しているのかという、私が以前から抱いてきた疑問を解決しようとした考証論文である。第2章「宋代先進地帯の階層構成」は先進といわれる長江下流地域の両浙路について、浙東と浙西の社会の違いを統計資料を駆使して明らかにしようとした考証論文である。第3章「南宋勧農論」は農業政策のイデオロギー的側面を、主戸でもあり佃戸でもある小経営農民を対象として説諭した勧農文の分析を通じて明らかにしたものである。本文の【付記1 】で述べたように浙東と浙西の生産力水準について論旨を改めた。第4章「煕豊変法の歴史的位置」は、煕寧元豊期の改革を宋建国以来100年と唐宋変革期の最終段階という二重の歴史的位置を持つものと捉え、その革新性と保守性、体系性と限界を確認し、歴史的意義を論じたものである。変法各法について発布当初のものを史料に密着して確認することを目指したので変遷については殆ど触れなかった。学説史編第5章「宋代農村社会史研究の展開」は農村社会を、第6章「唐宋変革と流通経済」は、流通経済(とくに商人組織、市場経済)を、第7章「日本における宋代貨幣史研究の展開」は貨幣経済を、第8章「1970年代半ば以後の日本における宋代財政史研究」は財政史(とくに歳出、財政的物流)を扱った学説史である。第9章「春秋戦国から元にいたる中国経済史研究の展開」は宋代経済史の位置を確認するための作業である。中国の専制国家が形成されつつあった、すなわち財政が成立した時点からモンゴル=元朝までの期間を対象として、日本における代表的研究を跡づけた。第5章は他の4章の学説史と比べ発表年次がはやい。1993年時点での当該テーマに関する私見であることをご了承いただきたい。また1993年以後の展開については第9章「2 生産――農村の経済関係と諸産業」で、不十分ではあるが多少補うことができる。