目次
凡 例
序章 研究史
第一章 多田南嶺
第一節 南嶺伝記考証(一)――生年の再検証――
第二節 南嶺伝記考証(二)――俳諧活動――
第三節 南嶺伝記考証(三)――半時庵淡々――
第四節 南嶺伝記考証(四)――伊藤東涯への入門と当時の住所――
第五節 南嶺伝記考証(五)――八文字屋との地縁――
第六節 南嶺伝記考証(六)――尾張での学問教授――
第七節 南嶺伝記考証(七)――師・友人・弟子――
第八節 南嶺浮世草子(一)――当代俳壇との関係を軸に――
第九節 南嶺浮世草子(二) ――『忠盛祇園桜』と天津禅師――
第十節 南嶺浮世草子(三)――古義堂との関係を軸に――
第十一節 西鶴『好色一代男』と山本与次兵衛――南嶺以前のモデル小説――
第十二節 秋成『諸道聴耳世間狙』とモデル――南嶺から秋成へ――
第十三節 南嶺『花襷厳柳嶋』から浄瑠璃『仮名手本忠臣蔵』へ
第二章 八文字屋
第一節 八文字屋の経営(一)――堅実な出発――
第二節 八文字屋の経営(二)――売れる作者の確保――
第三節 南嶺と八文字屋出版物(一)――役者評判記――
第四節 南嶺と八文字屋出版物(二)――劇書『古今役者大全』――
第五節 南嶺と八文字屋出版物(三)――絵本――
第六節 浮世草子挿絵(一)――八文字屋本様式――
第七節 浮世草子挿絵(二)――典拠調査における効用――
結章 多田南嶺と八文字屋
初出一覧
あとがき
索引(人名・書名)
内容説明
【「はじめに」より】
多田南嶺(ただ なんれい)は、国学・有職故実・歌学・兵学に優れた学者であり、和歌・俳諧を好み、八文字屋刊の浮世草子等の代作もしていた。興味を引く研究対象である。しかし厄介な〈謎〉があった。
南嶺代作が想定される十年ほどの間に、八文字屋は四十作弱の浮世草子を出版している。ところが、従来、南嶺代作と確定できたものは、『武遊双級巴』『花襷厳柳嶋』『忠盛祇園桜』『鎌倉諸芸袖日記』のみだった。南嶺の〈謎〉、それは多くの推定作・推測作等の存在である。南嶺作らしくもあるが、言い切れない。何とももどかしい。
そして、〈謎〉は〈謎〉を呼ぶ。代作者南嶺の〈謎〉は、版元八文字屋の役割も〈謎〉にしてしまう。南嶺研究と八文字屋研究は、〈謎〉の連鎖に陥っていた。
状況を変えるには、南嶺の〈謎〉を解き、八文字屋の〈謎〉も消していくしかない。