目次
序章 日中戦争期の話劇史研究という課題
第一節 日中戦争期における話劇文芸の概説
第二節 先行研究の検討
第三節 本書の視座と全体構成
第一章 戦時下話劇界の重層的生態図
第一節 戯劇春秋長夜行:近代話劇人の生態縮図
第二節 八千里路雲和月:戦時下移動演劇隊の実態と表象
第三節 双面人生共舞台:映画人鄭君里の話劇活動
第二章 中央青年劇社という存在
第一節 中央青年劇社の全体像
第二節 中央青年劇社の組織構造とネットワーク
第三節 中央青年劇社の創作と上演
【付録資料】『青年戯劇通訊』各号目次
第三章 重ね合う歴史と話劇
第一節 借古喩今:戦時下の歴史話劇というジャンル
第二節 田漢の場合:『春帆楼上的対話』と『朝鮮風雲』を中心に
第三節 楊村彬の場合:『秦良玉』と『光緒親政記』を中心に
補論 特殊な代弁者
第一節 日中戦争下中国における反戦日本人の概説
第二節 反戦日本人による抗戦話劇運動の実態
第三節 丁玲の『河内一郎』と関係させて考えること
終章 まとめと展望
関連略年表
文献一覧
後書き
論文初出一覧
人名索引
演目索引
英文要旨
中文要旨
内容説明
【序章より】(抜粋)
筆者は本書において、以下のことを目標とする。さきの「日中戦争期における話劇文芸の概説」から分かるように、この時期の文化現象は非常に流動的なものである。この動態的な枠組みにおいては、様々な衝突や矛盾が異なる範囲・異なる水準、しかも場合によっては同時進行の形で常に生じていたわけである。このような決して一定の形を保つ「固体」ではない現象を検討するさいに、できるだけその膨大かつ複雑な諸相を「脈絡」によって立体的に見ることが重要だと考える。ゆえに、筆者はここで「重畳たる戦術」という「脈絡」を導入し、日中戦争期の話劇をめぐる現象を可視化することを試みたい。
Overlapping Tactics: Spoken Drama Art in Wartime China (1931-1945)