目次
第1部 考古学からのアプローチ
考古学からみた渤海とその周辺 (中澤 寛将)
はじめに
1.「渤海」とその周辺の考古学文化
2.渤海時代の平地城と集落
3.渤海とその周辺地域の葬墓制
4.ロシア沿海地方日本海沿岸の遺跡からみた海上交通路
渤海瓦塼研究の諸問題
――なぜ、考古学者は瓦を研究するのか―― (中村亜希子)
1.はじめに
2.なぜ、考古学では瓦を研究するのか
3.渤海考古学を取り巻く諸問題
4.渤海瓦塼研究の現状
5.おわりに
第2部 文献史学の新展開
高句麗王系成立考――整備の諸段階と美川王 (井上直樹)
はじめに
1. 5世紀初の高句麗王系再考
2.故国川王紀・山上王紀・東川王紀改編と『後漢書』高句麗王系
3.初期王系整備と4 世紀の美川王系高句麗王
結語――実質的「始祖」としての美川王と4-5 世紀高句麗王系――
高句麗遺民墓誌研究の動向と争点 (植田喜兵成智)
はじめに
1.日本における研究
2.中国における研究
3.韓国における研究
むすびにかえて―高句麗遺民墓誌研究の課題と可能性
日本の渤海史研究の現状について――文献史学を中心に―― (古畑 徹)
1.はじめに
2.日本における渤海史研究の歩み(20世紀初~2007年)
3.近10年(2008年~2017年)の日本における渤海史研究1
――その歴史枠組みについて
4.近10年(2008年~2017年)の日本における渤海史研究2
――個別研究の動向
5.おわりに――石井正敏の遺産
唐代契丹の反乱と河北海運使の成立 (村井恭子)
はじめに
1. 唐前半期の東北海運の概況
2. 海運使の設置――武后期の海運使
3. 玄宗期における河北海運使の成立――国際紛争と幽州節度使の強化
おわりに
第3部 近現代史とのつながり/史学史と書誌学からの接近
韓国国立中央図書館所蔵講演録からみた稲葉君山の満鮮史観と高句麗 (井上直樹)
はじめに
1.稲葉君山の渡鮮に関する新史料
――20世紀初の東洋史学界の動向――
2.既往の稲葉君山の満鮮史観と高句麗史
――稲葉君山述『後藤新平伯と「満洲歴史調査部」』
3.韓国国立中央図書館所蔵講演録にみえる稲葉君山の満鮮史観と高句麗
「満鮮一家史論」高唱の理由――結語にかえて――
『満蒙叢書』から『遼海叢書』へ
――内藤湖南と金毓黻との「対話」―― (渡辺健哉)
はじめに
1.史料の収集
2.『満蒙叢書』の刊行
3.『遼海叢書』に向けて――内藤湖南と金毓黻の邂逅
結びにかえて
日本国内所蔵金毓黻著『渤海國志長編要刪』調査報告 (古畑 徹)
1.はじめに
2.東京国立博物館所蔵本
3.大阪大学所蔵本
4.関西大学所蔵本
5.愛知大学所蔵本
6.東洋文庫所蔵本
7.東京大学東洋文化研究所所蔵本
8.おわりに
附論:東(部)ユーラシア史という考え方
――近年の日本における古代東アジア史研究の新動向―― (古畑 徹)
1.はじめに
2.「東(部)ユーラシア史」の系譜その1
――中央ユーラシア史の系譜
3.「東(部)ユーラシア史」の系譜その2
――「東アジア世界論」批判の系譜
4.「東(部)ユーラシア史論」批判
5.「東(部)ユーラシア世界」か、「東(部)ユーラシア」か
6.おわりに
あとがき (古畑 徹)
執筆者一覧
内容説明
【序言より】(抜粋)
本論集『高句麗・渤海史の射程—古代東北アジア史研究の新動向—』は、本来、日本学術振興会の二国間交流事業(セミナー)として、2020年3月14・15日に、金沢にて開催予定であった「高句麗・渤海史に関する日中研究者会議」(以下、「日中研究者会議」と略す)の報告集として出版を予定していたものである。この国際会議は、残念ながら新型コロナウィルス感染症(Covid-19)の拡大によって一旦延期、その後、中止となり、中国側の報告論稿も届かなかった。そのため、報告集の出版は一旦宙に浮くこととなったが、編者の手元には日本側報告者の論稿が残り、これをどうするかが問題となった。個々の報告者に戻す方法もあったが、それでバラバラに公表しても、学界に対するインパクトは小さく、会議で目指したものとは程遠くなるように思われた。そこで日本側メンバーと相談し、報告予定論文に、本会議の開催に関係して報告・執筆された編者及びメンバーの諸論稿を追加し、日本の高句麗・渤海史研究の現状とそれが目指す方向性、およびその豊かな可能性を示して、停滞感のある高句麗・渤海史研究に新風を吹き込むことを意図した論文集に編集し直すこととした。こうして誕生したのが、本論集である。
The Scope and Prospect of Goguryeo/Gaogouli (高句麗) and Palhae/Bohai (渤海) History: New Direction in Ancient Northeast Asian History Studies