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流布本『保元物語』『平治物語』にみる 物語の変遷と背景

―室町末・戦国期を中心に―

流布本『保元物語』『平治物語』にみる 物語の変遷と背景

◎流布本の特性や改作の方法から動乱期の文学と社会との関わりを捉えていく!

著者 滝澤 みか
ジャンル 日本古典(文学)
日本古典(文学) > 中世文学
日本古典(文学) > 中世文学 > 軍記物語
出版年月日 2021/02/25
ISBN 9784762936517
判型・ページ数 A5・552ページ
定価 15,950円(本体14,500円+税)
在庫 在庫あり
 

目次

序 章――戦後研究史を踏まえて――

第一部 流布本『保元物語』『平治物語』の成立

 第一章 流布本『保元物語』『平治物語』の生成
  第一節 成立期の下限――『榻鴫暁筆』との関係から――
  第二節 相互の影響関係――言葉の交錯の吟味から――

 第二章 流布本『保元物語』『平治物語』の特性
  第一節 全体志向の個別性
  第二節 人物造型について――為義・義朝像の拡大を通して――
  第三節 子どもの哀話の改作方法――涙の削除を中心に――

 第三章 流布本『保元物語』『平治物語』にみる物語の変遷と本質
  第一節 流布本における乱の認識と物語の改作
        ――先出諸本に対する読みから――
  第二節 合戦場面の改変の位置付け――中世文学研究の中で――

第二部 流布本成立以降の保元物語・平治物語の展開

 第一章 近世における『保元物語』『平治物語』の受容
       ――絵画と写本の世界から――
  第一節 早稲田大学図書館蔵『平治物語絵巻 六波羅合戦巻』
                       からみる模本の世界
  第二節 「六波羅合戦巻」の模本から捉える物語と絵画の世界の方向性
         ――センチュリー文化財団蔵(斯道文庫寄託)本を中心に――
  第三節 センチュリー文化財団蔵(斯道文庫寄託)
              奈良絵本改装絵巻『平治物語』と諸本の交渉
  第四節 近世における軍記物語の購入の一例
         ――津田葛根と書物との邂逅から――

 附録 津田葛根関連史料翻刻

 第二章 近代における『保元物語』『平治物語』の変様
  第一節 近代日本における『保元物語』『平治物語』の発信
         ――流布本を基軸として――

第三部 室町末・戦国期の文学と社会――流布本生成に至る土壌――
 第一章 室町末・戦国期の文学の表現の連鎖
  第一節 流布本『保元物語』『平治物語』を紡ぎ出す言葉
         ――他作品との繫がり――
  第二節 流布本『保元物語』と流布本『平治物語』が纏う〈知〉の違い

 第二章 室町末・戦国期の文学と社会の連関――乱世意識・教訓との連動――
  第一節 『榻鴫暁筆』の諸本の展開

 附録 『榻鴫暁筆』の諸本の書誌情報一覧

  第二節 「血気の勇者」にみる室町期以降の価値観と
                     文学・社会の連動

終 章 
                  
初出一覧
あとがき
索引(書名・人名)
英文要旨
(令和2年度日本学術振興会助成図書)

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内容説明

【「序章」より】(抜粋)

 『保元物語』『平治物語』は『平家物語』と同じく、日本史上のいくさを題材とする「軍記物語」と呼ばれるジャンルの作品である。軍記物語は改作されつつ人々に享受されてきた歴史を持つ。そのため、一つの作品においても内容が大きく異なる改作本が複数存在する。本書では両物語の諸本の中でも、物語の改作の最終段階に位置する、「流布本」と呼ばれる本に焦点を当てていく。流布本両物語は、十五世紀後半〜十六世紀前半頃、すなわち室町末期・戦国期に影響し合いながら成立したと考えられる本である。この時代は応仁の乱(一四六七)や明応の政変(一四九三)が起きており、社会の動乱期に該当する。動乱の始まりというイメージの強い乱を題材とする『保元物語』と、それと併せて読まれていく『平治物語』という作品は、実際に、室町末・戦国期という、実際の社会の動乱期において享受される中、どのように改作されていったのか。本書では、流布本がどのように先に存在した諸本の内容を取り込み、物語を改作したのか、そして流布本成立以降いかに作品が展開していくのかといった、『保元物語』『平治物語』の変遷の実態と、その背景に何があるのかを解明していく。それにより、従来見過ごされてきた、古態性や物語性という観点以外から見る作品の価値や、流布本という後出本の成立・受容から捉え直した物語の変遷や展開、更には室町末期から戦国期の社会における軍記物語や文学の在り方の一側面が明らかに出来ると考えられる。それと同時に、動乱期における軍記物語と社会の影響関係を捉えることは、混乱する社会と文学の関係や、〈戦争を書く文学〉の存在意義、人々がいくさをどのように受容していくのか、あるいはいくさを表現するときに人はどのような意識を持つのかといった、現代にも関わる様々な問題を考えることにも繫がっていこう。



Transformations of the Tale and their Background as Seen in the rufubon of Hōgen monogatari/Heiji monogatari: Focusing on the Late-Muromachi and Sengoku Periods

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