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節用集史の諸問題

節用集史の諸問題

◎内部徴証から時代背景を探る――節用集の文化史的研究

著者 佐藤 貴裕
ジャンル 国語学(言語学)
出版年月日 2021/02/25
ISBN 9784762936500
判型・ページ数 A5・400ページ
定価 10,450円(本体9,500円+税)
在庫 在庫あり
 

目次


口絵:是心本節用集(架蔵)
   易林本『節用集』平井版2点(国会図書館・国立公文書館蔵)
   『新増節用無量蔵』元文2年刊(福井県立文書館蔵)

まえがき

第一部 序論

 導論
 第一章 節用集の史的展開
  一 組織            
  二 成立     
  三 古本節用集  
  四 一七世紀――近世的典型の形成期―― 
  五 一八世紀――教養書化と検索法開発――
  六 一九世紀――早引節用集と大型本の二極化――   
  七 近代――近世節用集の終焉

 第二章 節用集史の後景
  一 古本節用集の志向      
  二 近世節用集の典型形成期の前後
  三 教養書化期の狂騒      
  四 検索法開発期の評価
  五 二極化期における多様化

第二部 古本節用集

 導論
 第一章 新出伊勢本節用集是心本の位置
  一 書誌的事項         
  二 書写者・是心   
  三 位置付け大概
  四 組織            
  五 語順

 第二章 中核的印度本の特異付録
  一 印度本の特異な付録     
  二 絵画を「読む」営みから
  三 過去帳的付録細見     
  四 記念・祈念の産物
  五 「石寺九郎右衛門」

 第三章 五井守香と『和漢通用集』
  一 節用集編者研究の困難と対処 
  二 五井守香     
  三 『和漢通用集』
  四 『和漢通用集』と守香
  
第三部 易林本『節用集』平井版

 導論
 第一章 平井版諸本の研究
  一 平井版研究の基本姿勢   
  二 改刻と補筆    
  三 諸本摺刷の先後
  四 先後関係の利用       
  五 欠本・雑糅本

 第二章 平井版匡郭考
  一 平井版と平井別版の判別   
  二 平井版上巻の摺刷序列の突き合わせ
  三 原刻本と平井版の匡郭高の逆転
  四 原刻本・平井版の匡郭の特殊性について
 
第四部 近世前期二本――書名と検索法――

 導論
 第一章 『珠玉節用万代宝匣』の異相
  一 「思い」をくむ       
  二 『珠玉節用万代宝匣』の書誌・来歴など
  三 神功皇后の起用       
  四 書名要素と神話世界

 第二章 『新増節用無量蔵』の意匠
  一 門内部の細分標示      
  二 門名標示の行頭集中
  三 柱における部名標示     
  四 付録       
  五 評価

第五部 『和漢音釈書言字考節用集』

 導論
 第一章 東西方言対立語にみる資料性
  一 方法と資料         
  二 『書言字考』の江戸語形
  三 近世節用集と『書言字考』  
  四 江戸語形収載の要因

 第二章 『大成無双節用集』への改編
  一 原拠の特定         
  二 不採       
  三 増補
  四 改変           
  五 『大成無双』の性格
    
 第三章 『いろは節用集大成』への改編
  一 『書言字考』と早引E類   
  二 『書言字考』と『いろは』の異同
  三 語順変更の要因

 第四章 「意」字よりはじまる早引節用集二種
  一 『早引大』と『数引』の異なり
  二 『早引大』の系統
  三 『数引』の系統
 
第六部 早引節用集

 導論
 第一章 早引節用集の分類のために
  一 問題と方法        
  二 冒頭語による分類の検討
  三 本文の相違による分類
   
 第二章 早引節用集の系統研究のために
  一 早引節用集研究の意義    
  二 早引節用集小史
  三 分類試案詳説       
  四 系統再構の方法

 第三章 A類本文の派生関係
  一 資料            
  二 語順の検討    
  三 派生関係
    
 第四章 B類本文の派生関係
  一 資料            
  二 語順の検討    
  三 派生関係

 第五章 B類増補本文の派生関係
  一 資料 
  二 語順の検討     
  三 派生関係

参考文献
あとがき
主要事項索引

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内容説明

 本書は、節用集の書名・附録に当時の社会情勢が反映していること(第2部・第4部)、匡郭よる「刷りの先後」の確度の高い認定方法(第3部)、江戸時代後期の『大成無双節用集』『いろは節用集大成』が『和漢音釈書言字考節用集』を原拠としていること及び改変の実態(第5部)、などを論じ、早引節用集類別の指標(方法)を提示(第6部)したものである。 

【まえがき より】(抜粋)

 第一部では、節用集に関する基礎的な説明や史的展開のおおよそを示した。本書の主目的は、時代ごとの諸本の特徴や問題点を指摘・検討していくことにある。が、それらが、節用集史上の、どのような流れのなかに位置するのかを、せめてあらましだけでも知らせないでは、有効な検討として読まれることはないであろう。第二部以降に扱う諸本や各章の、史的位置なり脈絡なりを把握しやすくするための見取り図として設けるものである。
 第二部では、古本節用集を採りあげる。第一章は、新たに見出された増刊本系の異本の系統論であり、第二章は、弘治二年本類などの印度本の中核的諸本の編纂経緯を問題にしたものである。第三章は、印度本の異端『和漢通用集』と、その編者像を推測・提案するものである。
 第三部は、易林本『節用集』平井版の、書籍としての根幹を考察対象とした。辞書史・節用集史の記述的研究の上で、平井版は原刻本よりも果たした役割には重いものがある。その諸相の究明のために、まず書籍としていかなる存在なのかを問うたもので、平井版研究の基礎の一つとなればと願うものである。
 第四部では、近世節用集は営利出版によって豊かな展開を迎えるが、その豊かさは、板株(近世的版権)制度下におけるプライオリティの獲得が関与すること大である。そこでどのようなことが起きていたかを、書名と内容の有りようと、検索法と見せ方の有りように注目し、効果的に例示することとした。
 第五部では、『和漢音釈書言字考節用集』の多面的な性格と後続書への影響を見るべく、方言性と、イロハ・意義検索、イロハ・仮名数検索へと改編された例を採り上げた。これらの検討を通して、近世節用集の展開の有りようを具体的に示しつつ、同書の存在の大きさを把握しようとした。
 第六部では、早引節用集の諸本の類型と派生についての大要を示した。一八世紀後半以降、節用集界を席巻してゆく早引節用集の辞書史的記述の基礎を示すものとして、効果的な分類法と諸本の派生関係の大体を示すこととした。

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