目次
序 文
第一編 南朝寒門寒人研究
第一章 梁末陳初の諸集団について
――陳覇先軍団を中心として――
一 陳覇先集団の形成過程
二 広州の陳覇先グループ
三 嶺南地方と江南将帥層
四 陳覇先グループと嶺南・南川の土豪
五 梁末陳初の諸集団
六 南朝後期の任侠的結合関係
第二章 東晉・南朝の民衆運動と水上交通
――南康の営民鵃舟了船の越人――
一 六朝期の南康郡について
二 東晉末期盧循北上期の南康と原住種族、及び水上交通者
三 梁末陳初の南康と水上交通者
四 劉宋期から梁末にいたる南康について
第三章 劉孝標をめぐる人々――南朝政治史上の平原劉氏――
一 劉孝標の出生と北魏における生活
二 南朝への帰還と南斉時代
三 梁代の劉孝標と平原劉氏
おわりに――残された課題
第四章 南朝貴族と軍事
――南斉の雍州刺史王奐を中心として――
一 南朝貴族と中央・地方軍
二 王奐の出自と劉宋期の経歴
三 南斉期の王奐
おわりに――残された課題
第二編 南北朝中書舎人研究
第五章 梁の中書舎人と南朝賢才主義
一 梁代中書舎人と賢才主義
二 梁代中書舎人の変容とその諸要因
おわりに――南朝賢才主義の行方――
第六章 北魏後期・東魏の中書舎人について
一 南北朝の中書舎人と賢才主義および兼官制
二 北魏孝文・宣武帝期の中書舎人
三 孝明帝期の中書舎人
四 孝荘帝期・東魏の中書舎人
おわりに――北魏後期・東魏の舎人と兼官制
第七章 北斉の中書舎人について
――顔之推、そのタクチクスの周辺――
一 文宣帝期の中書舎人
二 北斉後期の中書舎人
第八章 西魏末・北周の御正について
一 西魏末から北周明帝期まで
二 武帝即位から字文護の死まで
三 武帝親政期
四 宣帝期
第三編 南朝帰降北人研究
第九章 帰降北人と南朝社会
――梁の将軍蘭欽の出自を手がかりに――
一 北族蘭氏
二 北魏南辺城民
第十章 南斉の柔然遣使 王洪範について
――南朝政治史における三斉豪族と帰降北人――
一 王洪範の遣使をめぐる国際情勢
二 王洪範の出身と遣使までの経歴
三 帰朝後の王洪範と南斉軍事史
第十一章 侯景の乱前史
――寿春・帰降北人・蛮・在地豪族をめぐって――
一 東晉から南斉にかけての寿春
二 北魏の寿春占領とその影響
――在地豪族と南北境界線上の蛮――
三 北魏の寿春支配
四 梁軍の寿春攻撃
――北魏南辺軍鎮の動揺と帰降北人・蛮の南叛――
五 梁の寿春奪還――淮水堰建設と帰降北人王足――
六 侯景と寿春――梁王朝と在地社会――
おわりに――武帝と帰降北人、および中原の夢――
内容説明
【はしがきより】(抜粋)
本書は、書下ろしの第十一章を除き、筆者がこれまでに発表してきた論考のうち主なるものを集めたものである。寒門寒人研究と題した第一編のみならず、全体のテーマは南北朝期における寒門寒人問題である。
六朝、特に南北朝社会には所謂門閥貴族によって否定的価値を意味する「寒」という語を冠せられるところの様々な新興勢力が存在した。彼らは門閥貴族に蔑視されながらも次第に政治的軍事的、さらには文化的力量を蓄え貴族層に対抗していった。その対抗・挑戦の歴史を考察することで、南朝社会がいかに次代の隋唐世界に影響したのかを問いかけようとするのが筆者の基本的姿勢である。なお筆者のいう寒門は、それなりの族的或いは地域的背景を有し文武の官僚組織に官として参与しうる存在とみなされながらも、貴族層によって彼らよりも卑しい身分とみなされる人々を指し、寒人は本来全く官には無縁な庶民出身者を想定している。
Political History of the Hanmen and Hanren ― The Emerging Forces in the Southern and Northern Dynasties in China