目次
第一章 孔子論
第一節 孔子の人間観と聖化──王陽明の人間理解に向けて──
第二節 「思う」ことと「学ぶ」こと──孔子の知のダイナミズム──
第二章 孟子論
第一節 孟子の心と気──儒家における身体論序説
第二節 孟子性善説の可能性と限界
第三節 孟子の道徳的人間の創造──他者と共に義に生きる──
第四節 孟子の「思い」の哲学
第三章 荀子論
第一節 荀子の「欲」について
第二節 『荀子』の性説──行為論としての性悪偽善──
第三節 荀子の「身体」──性悪説と化性説の戦略──
第四節 『荀子』の天人論──新たなる天人合一を求めて──
第五節 荀子の戦略としての礼治システム
第四章 老子論
第一節 戦略としての言説『老子』
第二節 『老子』の道と身体──言分けから身分けへ──
第五章 荘子論
第一節 荘子の遊ぶ身体──グロテスクなカラダの意味──
第二節 荘子の遊びのトポス──身体、大樹──
第三節 荘子の胡蝶の夢──物化の構造と意味──
第四節 『荘子』研究への前哨
第六章 陸象山論
第一節 陸象山の「悟り」の構造
第二節 陸象山の「心」の立場
第七章 王陽明論
第一節 王陽明の生涯──朱子からの自立──
第二節 王陽明の事的世界観──「格物」解釈を巡って──
第三節 中国思想における身体──王陽明の身体知──
あとがき(工藤卓司)
初出一覧
参考文獻
書名索引
人名索引
内容説明
【まえがきより】(抜粋)
中国哲学思想の研究者であった橋本敬司(一九六〇年一月七日─二〇一一年五月一六日)は、若い世代に向けて、最後に次のような言葉を遺していた。
もともと名の無い道は、我々の思考によって常にさまざまに利用可能な何かである。このことが、道が今日まで中国哲学思想の中で重要な概念であった理由の一つである。そして今後、道が変わらず哲学的思想的アクチュアリティと生命力を持つとすれば、それは私たち自身の哲学的思索にこそかかっている。(湯浅邦弘編著『概説中国思想史』―第十一章 道の思想―二〇一〇年一〇月)
この一節に、橋本の学問に対する姿勢が凝縮されて表されているように思える。………橋本は、常に現在的な関心から中国哲学思想と対話し続け、新たな思考を紡ぎ、古典にさらなる価値を与え続けた哲学者であった。
本書『人間性とは何か──中国思想のダイナミズム──』は、橋本の代表的な論考を集成したものである。内容をふまえ、橋本の論考から橋本らしさをもつキーワードを選び、組み合わせて書名とした。「ダイナミズム」は橋本においては哲学的思索・哲学的営みを意味している。
What Does It Mean to Be Human?: The Dynamism of Chinese Philosophy