目次
第一節 中国古代史、特に先秦史のなかの春秋史の位置づけ
第二節 春秋史研究の学説史整理
第三節 本書の課題
第四節 本書の主要資料──『左伝』『繫年』──に対する学界の状況と本書の立場
第五節 本書の構成
第一部 伝世文献から見る春秋時代の統治権
第一章 春秋時代の君主──君主の殺害・出奔・捕虜の検討から──
第一節 君主殺害の加害者
第二節 君主殺害の現場
第三節 君主殺害時の盟と朝廟
第四節 君主の出奔と捕虜
第二章 春秋時代における統治権の変容──「器」の意味を中心として──
第一節 統治権と「器」
第二節 周の封建と「器」
第三節 「器」と天命の伝授
第三章 春秋時代の諸侯即位
──『左伝』に見える「立」「即位」「葬」と新君誕生の認識との関係から──
第一節 『左伝』に見える「立」と「即位」
第二節 「即位」の意味
第三節 『左伝』に見える「葬」
第四節 『春秋』の「葬」
第四章 春秋時代の太子──晋の太子申生の事例を中心として──
第一節 太子の役割
第二節 太子と君主
第三節 太子の“地位”
第四節 太子と嫡子
第五節 太子と長子
第六節 太子と「立」
第五章 春秋時代における諸侯の身体 ──統治権との関わりから──
第一節 古代中国における「君身」
第二節 「君身」と周王朝
第三節 「君身」に対する認識の変化
第四節 「君身」と「父」
第六章 春秋時代の周王 ──その統治権と諸侯との関係に注目して──
第一節 諸侯への干渉
第二節 周王朝の内乱
第三節 二人の周王
第四節 周王と祖先
第二部 出土文献『繫年』の春秋時代の統治権研究への寄与と展望
第一章 『繫年』より見た春秋時代の新君即位
第一節 『繫年』の「立」
第二節 『繫年』の「即位」
第三節 新君誕生における前君
第四節 『繫年』の「即世」
第二章 『繫年』より見た周の東遷──王位継承の視点から──
第一節 伝世文献が伝える王位の継承
第二節 『繫年』が描く東遷期
第三節 京師という場の性格
第三章 『繫年』が記す東遷期の年代
第一節 『繫年』記載の年代
第二節 『繫年』の「周」
第三節 「立二十又一年」の解釈
第四節 西暦との対応
第四章 『繫年』の資料的性格──歴史資料としての特徴の一端を探る──
第一節 『繫年』の君主殺害と太子
第二節 『繫年』の君主称謂
第三節 『繫年』の編纂目的
第四節 『繫年』の原資料
第五節 『繫年』と『左伝』
終 章 春秋期における統治権の特色と展開
第一節 春秋時代の統治権
第二節 前後の時代とのつながり
第三節 春秋史の資料としての『左伝』と『繫年』
第四節 先秦史研究における本書の位置づけ
引用・参考文献一覧
あとがき
索引
英文目次
内容説明
【序章より】
春秋時代の君主が有する権限、すなわち君主権には、軍事権と統治権とがあり、統治権の特に祭祀面が君主を君主たらしめていた。そこで本書では、君主権を正当化し、かつ、君主が祭祀者として、国の土地や人民を保有し、支配を正当化する根拠を“統治権”として論を進めることとするが、その際、先の『左伝』定公四年の記事にも示されているように、春秋期の君主は周王朝の諸侯という立場が前提となっている点が重要である。つまり、諸侯の統治権は周王から封建されたことが土地や人民を統治する後ろ盾となっているのであり、そのため、周王との関係を含めた統治権が考察の対象となる。(中略)
『左伝』や『繫年』の資料問題を念頭に置きつつ、春秋時代の統治権、特に、その中身や実体化していたもの、継承法や統治を正当化していたものなど、統治権の具体的な要素を明らかにし、春秋史研究の課題である春秋時代の特色をその時代的変化に注目しながら論じ、前後の時代とのつながりを見出すことで、中国古代史における春秋史の位置づけを描くことが本書の目的となる。
A Study of Governance in the Spring and Autumn Period