目次
はじめに
序 章 研究序説
第一節 研究の目的
第二節 テキストと黄道周の著述
第一章 黄道周の生涯
第一節 黄道周の家系―「乞言自序状」を中心に
第二節 生涯略述
第三節 黄道周年譜(附蔡玉卿)
第二章 黄道周の表現営為
第一節 詞臣としての黄道周―東林から復社へ
第二節 獄中での黄道周―手書《孝経》を中心に
第三節 兵法書と黄道周―『広名将伝』を中心に
第四節 『黄石齋手書逸詩』考
第三章 地理学者徐霞客との交友
第四章 詩人陳子龍との交友
第五章 翰林倪元璐との交友
第六章 継室蔡玉卿から見た黄道周
第一節 蔡玉卿の生涯―『文明夫人行状』を中心に
第二節 蔡玉卿詩書画考
第七章 黄道周の書法観
第一節 黄道周の書法観
第二節 黄道周と沙孟海――書法審美範疇語〈遒媚〉をめぐって
第八章 後世への影響
第一節 『雪橋詩話』に見る黄道周像
第二節 『人帖』中の黄道周の詩と書
第三節 黄道周書跡考―蘇州庭園の二石刻をめぐって―
第四節 《黄倪合璧冊》解題
附 章 訳注「黄道周の学術傾向」
結 章 明末に生きた文人の一典型
参考文献一覧
掲載誌一覧
あとがき
英文目次
索引
附 録
福州後学陳寿祺編『明漳浦黄忠端公全集』目次
『明漳浦黄忠端公全集』人名一覧
〈2019年度大東文化大学研究成果刊行助成による刊行〉
内容説明
【序章より】
黄道周(一五八五年(明萬暦十三・乙酉)二月九日生〜一六四六年(明隆武二年・清順治三年)三月五日卒)は、明末の思想家・政治家・書家である。(中略)
稿者はこれまで、清朝軍と戦って捕らえられ、処刑された黄道周に着目し、なぜそのような生き方を選んだのかを考えるため、彼の交友関係およびその応酬詩文と書画を中心に、政治家としての側面、学者としての側面、思想家としての側面、芸術家(含む書法理論)としての側面等を個別に検討してきた。茲にこれらの検討を総括し、黄道周が書き遺した詩文書画と、交友関係を築いた人々の詩文書画との表現営為を通じて、黄道周を中心とする明末の文人交友の実体を立証すること、それが本書の真正の目的である。
清初には、詩文書画は文人の余技であると考える伝統派文人(遺民の傅山や顧炎武はその代表)と、職業として独自の価値を持つ芸術だと考える新興書画家(揚州八怪の鄭板橋や金農はその代表)が並存した。黄道周は明末の伝統派文人の代表者であると同時に、清初の伝統派文人にも支持され、多大な影響を及ぼした。この点についても、黄道周の後世への影響という視点から考究すると、同時代以後に受容された多くの書跡が何よりの証左となる。
それゆえ、黄道周を中心に見た明末の文人交友と詩文書画の表現営為を、交友の実体に則して総合的に研究する観点は、従前にはない明末清初期の文人論であり、文人研究の新たな方法論による展開であると考える。
A STUDY OF HUANG DAOZHOU