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東アジア資本主義形成史論

東アジア資本主義形成史論

◎斯界の泰斗が東アジア資本主義形成過程を論じる!

著者 中村 哲
ジャンル 東洋史(アジア)
東洋史(アジア) > 明清
東洋史(アジア) > 近現代
東洋史(アジア) > 朝鮮
東洋史(アジア) > 台湾
出版年月日 2019/04/25
ISBN 9784762966316
判型・ページ数 A5・266ページ
定価 4,180円(本体3,800円+税)
在庫 在庫あり
 

目次

序言


第Ⅰ編 総論

 第1章 東アジア資本主義形成史序説

  はじめに――分析視角
  1.第1段階(萌芽期)――16~18世紀       
  2.第2段階(形成期)――19~20世紀前半
  3.第3段階(確立期)――20世紀後半~21世紀

 第2章 東アジア資本主義研究の課題

  はじめに
  1.東アジア資本主義論・アジアNIEs論の今日   
  2.世界資本主義の発展段階
  3.東アジア資本主義形成の内的諸条件 
      
 第3章 現代の歴史的位置

  1.現在、世界で起こっている重要な変化      
  2.資本主義の終焉についての考え方
  3.資本主義の成熟                
  4.人間の再生産とその社会化
  おわりに


第Ⅱ編 小農社会・複線的工業化・中進国型帝国主義日本


 第4章 小農社会と複線的工業化

  はじめに
  1.小農社会   
  2.複線的工業化   
  3.1930年代東アジアの工業化と貿易――転換期
  まとめ

第5章 小農経営の比較史的検討――日本・朝鮮・台湾――

  はじめに
  1.労働力        
  2.多角化・複合化   
  3.商品化・集約化   
  4.経営規模別構成    
  5.地主制と小作料   
  まとめ――いくつかの論点

第6章 転換期の1930年代東アジア

  はじめに
  1.研究の視角
    ――両大戦間期を19世紀資本主義から20世紀資本主義への過渡期・移行期と捉える
  2.1930年代を中心とする東アジアの工業化と貿易 
  3.中進国型帝国主義としての日本         
  4.1930年代における東アジア国際経済関係


第Ⅲ編 東アジア三国(中国・日本・朝鮮)の18世紀における分岐と「源蓄国家」の不在


第7章 東アジア三国経済の近世と近代(1600~1900年)

  はじめに
  1.小農社会の成立と発展     
  2.東北アジア三国(中国・日本・朝鮮)の分岐
  3.支配体制と財政の類型的差異  
  おわりに――東北アジア工業化への展望

第8章 「源蓄国家」の不在――西ヨーロッパとの決定的差異

  はじめに
  1.東北アジア三国(中国・日本・朝鮮)の国家財政(17~19世紀)
  2.西ヨーロッパの国家財政(16~18世紀)
  3.東北アジア三国(中国・日本・朝鮮)の近代国家への移行と財政
  4.主要な結論 近代移行における国家・土地所有・経済の類型
                 ――東北アジアと西ヨーロッパ――
  おわりに

事項索引

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内容説明

【序言より】(抜粋)

 東アジア資本主義は、非欧米で初めて本格的な資本主義が成立したという点で世界史的意義を持つ。東アジア資本主義は日本に始まり、20世紀にはいると朝鮮・台湾・中国に広がり、1930年代には東南アジアにもその萌芽が出てきた。その中には植民地であったところも多かったが戦後独立を果たして資本主義化が本格化した。
 現在、東北アジア(中国・日本・韓国)と東南アジアは経済関係を強化して、東アジア経済圏を形成している。さらにインド・バングラデシュ・スリランカ・パキスタンの南アジアも含む経済圏に拡大し始めている。その内部の構成は極めて多様であり、経済の統合化と多様化が同時に進行している。そして最近、東アジア経済圏は世界の経済成長のセンターになり始めている。将来、東アジア資本主義が欧米資本主義に代わって世界経済の中心になる可能性もある。

 しかし、政治、とくに安全保障面に大きな問題を抱えている。その点では欧米に比べはるかに遅れている。その改善が極めて重要であり、域内の政治的協力・協調を強力に推進しなければならない。困難が大きいがそれなしに東アジア資本主義の長期的発展は保障されない。

 本書の目的は東アジア資本主義の形成過程を歴史的に研究することであるが、研究の方法としては比較史を重視する。東アジア経済圏を構成する諸国の資本主義は、そのタイプ(類型)、歴史が極めて多様である。また、欧米資本主義とは非常に異なる面が多い。これまでの比較史は欧米資本主義を基準にして、それとの比較という方法をとることが多かった。資本主義は西ヨーロッパで形成・発達したし、資本主義の歴史研究も欧米の研究者が欧米の資本主義を研究することが主流である。しかし、欧米資本主義を基準にする比較史では、欧米と歴史もタイプも異なる東アジア資本主義を研究するのには適当ではない。欧米基準の比較史では、東アジアの欧米とは異なる面が抜け落ちたり、遅れた面と評価されたりすることになりやすい。

 欧米基準ではない、東アジアの研究の中から生まれた、東アジアの特徴を基準とした新しい比較史が必要である。それは同時に従来の欧米中心主義的歴史観・歴史認識の批判を内包するものになるはずである。言うまでもないが、東アジアの歴史に基づく比較史が独善的な欧米批判になってはならない。欧米の優れた研究成果の吸収は東アジア比較史のために必要である。

 このような課題と方法は“言うは易く行うは難し”であり、私も自覚的に努力してきたつもりだが、本書でどこまでそれが実現したかは自信があるわけではない。今後もさらに努力を重ねたい。

 一つ付け加えておきたいのは、比較史の方法は一国単位の研究にも役立つことが多いということである。歴史研究者は殆どと言っていいほど一国史の研究者である。もう少し複数国史・多国史を研究する人が増える必要があると思うが、いろいろな原因でそれは難しい。欧米では、言語的・歴史的・文化的・政治的・地理的に東アジアよりも国家間・民族間の交流が容易であり、密である。東アジア研究は欧米に比べると困難が多く、遅れている。しかし、一国史研究でも比較史的な視角を持つことによって、新しい・一国史的視角だけでは得られない知見が得られることがかなりある。一国史研究者にも比較史的関心をもつことを勧めたい。

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