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宋金元道教内丹思想研究

宋金元道教内丹思想研究

宋・金・元から日本・東アジアへ――「新道教」を越え、道教内丹思想の新たな地平を切り拓く!

著者 松下 道信
ジャンル 中国思想・哲学
中国思想・哲学 > 宋元
出版年月日 2019/02/28
ISBN 9784762966262
判型・ページ数 A5・560ページ
定価 14,300円(本体13,000円+税)
在庫 在庫あり
 

目次

 口絵(カラー)

 はじめに


Ⅰ 宋・金・元代の内丹道および全真教における性命説


 序章 「新道教」再考――全真教研究の枠組みについての再検討――
  一 全真教研究の枠組みの確立     
  二 その後の「新道教」   
  三 欧米における全真教研究


第一篇 宋代の内丹道における性命説とその諸相

 第一章 全真教南宗における性命説の展開
  一 『悟真篇』における性命説     
  二 「性」の重視とその限界
  三 「命」の位置とその変容      
  四 その後の道士たち 

 第二章 白玉蟾とその出版活動――全真教南宗における師授意識の克服――
  一 白玉蟾の出版活動         
  二 『悟真篇』をめぐる師授について――「三伝非人」――
  三 白玉蟾による師授意識の克服    
  四 その後の出版事情――「敢えて天譴を懼れず」――


第二篇 金代の全真教における性命説とその諸相

 第一章 牧牛図頌の全真教と道学への影響
     ――円明老人『上乗修真三要』と譙定「牧牛図詩」を中心に――
  一 全真教における牧牛図頌受容の背景 
  二 円明「牧馬図頌」について
  三 譙定「牧牛図詩」について

 第二章 全真教の性命説に見える機根の問題について――南宗との比較を中心に――
  一 全真教の性命説に見える機根について
  二 南宗の性命説に見える機根について

 第三章 全真教における志・宿根・聖賢の提挈
     ――内丹道における身体という場をめぐって――
  一 内丹術と身体           
  二 全真教における志と信
  三 宿根と「聖賢の提挈」


第三篇 元代の全真教における性命説とその諸相

 第一章 『還丹秘訣養赤子神方』と『抱一函三秘訣』について
     ――内丹諸流派と全真教の融合の一様相――
  一 『養赤子神方』について      
  二 『抱一函三秘訣』について
  三 蕭応叟『度人経内義』と『抱一函三秘訣』

 第二章 趙友欽・陳致虚の性命説について 
     ――いわゆる「全真教の堕落」をめぐって――
  一 趙友欽・陳致虚の著作について   
  二 趙友欽と陳致虚の性命説
  三 陳致虚による命功の復権

 補論一 内丹とカニバリズム――食人・嬰児・房中術 ――
  一 内丹道と「造化」の秘密      
  二 金丹の錬成と嬰児の出産
  三 霊薬の出産、あるいはカニバリズム

 補論二 日本における全真教南宗研究の動向について 
     附:全真教南宗研究文献目録略
  一 張伯端と『悟真篇』について    
  二 翁葆光について  
  三 白玉蟾について          
  四 白玉蟾以降の道士たち
  五 『周易参同契』と「太極図説」   
   全真教南宗文献目録略


Ⅱ 神道と内丹思想――吉田神道における内丹説の受容について――


 第一章 『陳先生内丹訣』の内丹説とその伝授について
  一 吉田文庫所蔵『清静経』の構成   
  二 『陳先生内丹訣』の序文について
  三 鍾呂派と全真教南宗における「形神倶妙」        
  四 『陳先生内丹訣』と「形神倶妙」

 第二章 吉田神道における道教の影響について
     ――『北斗経』と内丹説の関係を中心に――
  一  吉田神道と『北斗経』      
  二 『北斗経』と内丹説 
  三 吉田神道における内丹文献

 資料 天理大学附属天理図書館 吉田文庫所蔵『太上老君説常清静経』
  解題・翻刻・図版 



 全真教師承系譜図略
 宋・金・元における全真教および関連人物生卒表
 書誌

 あとがき
 索引(人名・書名・事項)
 英文サマリー

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内容説明

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【「はじめに」より】(抜粋)

 本書は、中国近世期における道教の内丹思想を取り扱ったものである。

 本書は二部に分かれる。第Ⅰ部「宋・金・元代の内丹道および全真教における性命説」は宋から元における内丹思想、特にその中心となる性命説を全真教との関係の中で考察したもの、第Ⅱ部「神道と内丹思想」は日本の神道と中国の内丹思想の関係を考察したものである。

 道教では、永遠性の獲得を目的とした錬丹術が早くから行われたが、やがて唐代後期、それらの技法を全て修行者の身心の内面へと読み替えた内丹術と呼ばれる修行法が登場した。宋代以降、内丹術は隆盛していくが、北宋・金交替期の混乱の中、全真教・真大道教・太一教といういわゆる「新道教」が登場する。中でも後に消滅する真大道教・太一教と異なり、金・王重陽により開かれた全真教は、現在でも正一教と道教を二分する勢力を持ち、また教義面では、内丹術という「迷信」を廃し、革新的な教説を説いたとして重視されてきた。

 この「新道教」という呼称は、日本では戦前の研究者である常盤大定の『支那に於ける仏教と儒教道教』(一九三〇)、そして中国では日中戦争中の陳垣の『南宋初河北新道教考』(一九四一)にそれぞれ遡る。問題は、全真教を「新道教」とするこれらの言説の背後には、それぞれが著述された当時の日中双方の近代的視点が色濃く投影されていると考えられることである。ならば全真教を正確に理解するためには、我々を密かに縛る、こうした近代的な言説を解体する必要があるのではないか。これが本書第Ⅰ部を貫く問題意識である。そこで第Ⅰ部では、こうした問題意識の下、全真教が登場する直前の北宋から、全真教が変容・退行したとされる元までを範囲として、全真教を、それが登場してきた内丹道との関係の中に置き直すことで、実証的に検証する。

 第Ⅰ部が中国近世期を中心とするのに対して、第Ⅱ部では少し視点を変えて、日本の神道、特に吉田神道と内丹思想の関係について取り上げる。吉田神道は、唯一神道・元本宗源神道とも称し、神道の純粋性を目指して吉田兼倶により創唱されたものである。ところが奇妙なことに、吉田神道には仏教など様々な影響に加えて、道教的な影響も見られることが、従来、指摘されてきた。特に吉田神道には、『修真九転丹道図』が伝わり、内丹思想の影響をそこに見て取ることができる。

 なお最後に、資料として『修真九転丹道図』を収める天理大学附属天理図書館吉田文庫所蔵『太上老君説常清静経』の全文翻刻を付す。『修真九転丹道図』は、修行者の内景を描いたと思われる美麗な図版を多数収めるもので、既に中国では失われたと思われる貴重な文献である。



Daoist Inner Alchemy Thought in the Song, Jin, and Yuan Eras

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