内容説明
【序論】より 本書は,貨幣史上の清代前期というべき順治元年(1644)から乾隆40年 1775)までに実施された制銭(官鋳の銅銭)供給政策の展開を,支配の根幹に関わる複数の政策課題に包括的に取り組んでいた清朝政府の政策意図に即して整合的に理解し,その上で,論理を異にする制銭供給政策と市場との相互影響のもとに推移していた当該時期の貨幣史を歴史的に跡付けようとするものである。
【内容目次】
序 論
Ⅰ 本書の視座と方法/問題の所在・本書の研究方針
Ⅱ 先行研究/清代貨幣史・清朝国家論
Ⅲ 史料/編纂史料・档案史料・起居注冊・筆記史料
Ⅳ 本書の構成
前編 銭賤から銭貴へ
第一章 明清交替と貨幣
明代後半の銀と銅銭/清朝の成立と銀と銅銭/
清朝の中国進出と制銭供給の開始/鋳造差益と戸部
第二章 清朝の中国支配確立過程と制銭供給政策のゆらぎ
中国内地の平定と順治14年の制銭重量加増/
京師における制銭供給の継続と各省の停鋳
三藩・鄭氏の鎮圧と康熙23年の制銭重量軽減/
京師・各省における制銭供給と鋳造差益
第三章 康熙後半の京師における私鋳銭問題と銭貴の発生
康熙後半の私鋳銭問題/洋銅採買と京師の制銭供給の増大
京師と周辺地域における銅銭遣いの拡大と銭貴の発生/
京師と直隷における銭貴の推移
第四章 雍正年間の各省における私鋳銭問題と乾隆初年の銭貴の発生
雍正年間の私鋳銭問題/黄銅器皿の禁と各省の制銭供給の実施
江南における銅銭遣いの拡大と銭貴の発生/
銭貴問題の全国化とその実態
後編 最盛期の制銭供給とその行方
第五章 京師の銭貴と制銭供給政策
京師の銭貴と八旗兵丁の生計/洋銅採買から滇銅輸送へ
京師両局の制銭鋳造の増大/八旗兵餉への制銭搭放の拡充
第六章 各省の銭貴と制銭供給政策
江南の銭貴と都市労働者の生計/「余銅」としての洋銅と滇銅
江蘇・浙江両省の制銭供給再開/福建・江西・湖北・湖南・貴州・四川等省の制銭供給再開
第七章 雲南省の制銭供給政策
「放本収銅」制度の導入と雍正元年の制銭鋳造再開/
制銭供給開始後の銭価下落と制銭移送
乾隆元年における対銀換算率の切り下げとその後の供給拡大
第八章 乾隆中葉の制銭供給体制とその後
京師の制銭供給政策/雲南省の銅息と制銭供給政策/
その他の諸省の鋳造差益と制銭供給政策
その他の諸省の鋳造差損と制銭供給政策/
制銭供給量の地域的偏りとその影響
結 論
補 論
Ⅰ 中国第一歴史档案館所蔵「戸科史書」について
清初の題本と史書/
史書の現存状況と康熙・雍正の「戸科史書」概要
「戸科史書」に収められた康熙・雍正の銭法関係題本
Ⅱ 中国第一歴史档案館所蔵「議覆档」について
軍機処・奏摺・議覆/マイクロフィルム「議覆档」概要/
「議覆档」に収められた乾隆前半の銭法関係奏摺
あとがき/図表一覧/史料(編纂・档案・起居注冊・筆記)/
参考文献一覧/索引