内容説明
【本書の内容】
近世堂上歌壇については、和歌作品の内容や、詠歌行為をめぐるさまざまな試行錯誤、活発になされた古典注釈、また歌壇において撰集された種々の歌集類などが、旧来の研究史が見做していたよりもはるかにすぐれた内容を有しており、その結果、同時代また後代の文学史に与えた影響も極めて大きかった。したがって、近世堂上歌壇の研究によって、従来の研究史の空白を埋めることは、より豊かでより細密な文学史を構築するための方途として極めて有効な視座を獲得するものである。
第一部論文編では、第一章において後水尾院、霊元院両歌壇を概観し、その和歌作品について論じた。第二章は、後水尾院、霊元院両歌壇の史的位置について論じた。三玉集をはじめとする、近世以前の歌人や作品を取り上げ、それらがいかに意識され、また摂取されたかを考察した。第三章は、和歌と漢詩の関係を主に和歌の側から和漢比較文学的に考察した。
第二部年表編は、近世堂上歌壇の主要事項年表であり、これによって個別の文学的事項に関する情報を提供する。書誌的事項を詳しくし、人間関係を細かに列挙することで、より実証的で立体的な歌壇のありかたを示そうとした。
【内容目次】
第一部 論 文 編
第一章《歌壇》とその和歌
第一節 後水尾院・霊元院歌壇の成立と展開
近世堂上歌壇史概観/後水尾院歌壇の成立と展開/
霊元院歌壇の成立と展開/中院家の人々
第二節 後水尾院・霊元院とその周辺の和歌
近世堂上の和歌作品について/後水尾院の和歌世界/
後水尾院の和歌添削方法/霊元院歌壇における詠象歌
第二章 史的位置
近世堂上和歌の史的位置/後鳥羽院と後水尾院/
近世における三宝集享受の諸相/
源氏詞「ひたやごもり」の解釈と享受/堂上和歌と連歌
第三章 和歌と漢詩
近世和歌における和漢比較研究の意義/中院通勝
〈句題五十首〉論/句題「小扇撲蛍」考/詩に和す和歌/
近世五言句題和歌史のなかの堂上/句題「南枝暖待鶯」考/
句題「幸逢太平代」考/『唐詩選』の日本的享受―
千種有功の『和漢草』
第二部 年 表 編
第一章 後水尾院歌壇主要事項年表
第二章 霊元院歌壇主要事項年表
補 説
初出一覧・後記・増訂版後記・索引・英文要旨