目次
風土記の価値
作品としての風土記
風土記の原本
本書の構成
第一部 『常陸国風土記』の基礎的研究
第一章 『常陸国風土記』の伝写について
諸本の書誌
諸本の分類
グループ間の系譜
第二章 常陸国風土記四本集成
菅本
武田本
松下本
板本
第二部 風土記の校訂
第一章 風土記の校訂本間の比較
校務訂本間の比較その1――『常陸国風土記』――
校訂本間の比較その2――『出雲国風土記』――
第二章 風土記の校訂における問題についての一考察
校訂基準について
神道大系『肥前国風土記』を事例として
終 章 風土記のテキストの現状と課題
山川本『風土記』について
復元される本文
望まれるテキスト
付 論
第一章 逸文をめぐる諸問題
※風土記逸文のうち、『常陸国風土記』の「信太郡の沿革」と「信太郡の郡名」、『筑前国風土記』の「資珂島」と「怡土郡」の四条について、校訂、訓読、語釈にわたる注釈。
『常陸国風土記』信太郡の沿革条
『常陸国風土記』信太郡の郡名条
『筑前国風土記』資珂島条
『筑前国風土記』怡土郡条
第二章 伝承とその舞台――『竹取物語』を事例として――
内容説明
【本書の構成より】(抜粋)
第一部では、風土記の基礎的研究として、『常陸国風土記』の諸本研究を収める。拙稿では十本の諸本を本文の体裁や記述形式・文字の異同などの観点から検討し、諸本のグループ分けを行ったうえで、それらグループ間の系譜づけをこころみた。その結果、武田本を前田本から出たものとして考定し得ると結論づけ、『常陸国風土記』の系譜に新たな一提案を示した。さらに、『常陸国風土記』の原本の復元に必要な写本がどのようになっているかがわかるように集成した「常陸国風土記四本集成」を収載する。四本集成の特徴は、最も重要な写本とされる菅本の一行分を基準にして、他の三本をそれに合わせ、文字異同や改行を一見してわかるようにしたところである。写本の文字については、全てを透写しそのままの姿に近いものを提示できるように作成している。さらに、風土記の校訂本の基盤となった西野宣明の板本を併せて掲載し、校訂の際に参考にできるようにした。また、基準となる菅本の一行分に対して番号を付し、研究上の便宜を図った。第二部では、現在刊行されている校訂本の現状が実態としてどのようになっているのかを確認することを主目的とし、各校訂本の校訂本文とその校訂方法に焦点を当てて、風土記本文複元の特徴を捉えることを試みた。