図書寮漢籍叢考
図録オールカラー図版 約300点、奈良朝写経・漢籍旧鈔本・宋版 計107書目収載
著者 | 宮内庁書陵部蔵漢籍研究会 編 |
---|---|
ジャンル | 総記・書誌 総記・書誌 > 単行本 |
出版年月日 | 2018/02/28 |
ISBN | 9784762912269 |
判型・ページ数 | B5・486ページ |
定価 | 19,800円(本体18,000円+税) |
在庫 | 在庫あり |
ネット書店を選択 |
---|
目次
図書寮文庫の沿革と漢籍 (宮内庁書陵部図書調査官 小森 正明)
宮内庁書陵部所蔵の聖語蔵関係経巻 (小倉 慈司)
金澤文庫本『春秋経伝集解』、奥書の再検討 (佐藤 道生)
金澤文庫本『春秋経伝集解』の奥書と伝来 (齋藤慎一郎)
『古文孝経』永仁五年写本の問題点 (佐藤 道生)
漢籍の「巻」と「冊」再考 北宋版『通典』をめぐって (大木 康)
宋刊本『東都事略』現存諸本の関係について (上原 究一)
書陵部本宋版『論衡』について――上海図書館本との比較検討 (矢島明希子)
宮内庁書陵部蔵南宋刊『嚴氏濟生方』から見た士人と医士の交流
――兼ねて『全宋文』の誤りを正す (金 文京)
§ 講演録 「漢籍研究とデジタルアーカイブ」
日本所在漢籍に見える東アジア典籍流伝の歴史的研究
――宮内庁書陵部蔵漢籍の伝来調査を中心として―― (髙橋 智)
線装本と東アジア漢籍保護史 (復旦大学古籍整理研究所教授 陳 正宏)
北米における漢籍研究とデジタルアーカイブ
(プリンストン大学東アジア図書館長 マーティン ヘイドラ)
韓国における近世以前の出版文化と中国書籍の刊行方法
(高麗大学校漢文学科教授 沈 慶昊)
図録編(オールカラー)
目 録
凡 例
Ⅰ 奈良朝写経(22点)
十支居士八城人經 天平寶字4年寫(城上連人足)
大般若波羅蜜多經 卷244 和銅5年寫(長屋[王]令寫)
大般若波羅蜜多經 卷355 天平勝寶6年寫(錦織君麻呂)
佛説阿難四事經 神護景雲2年寫([稱德天皇]令寫)
楞伽阿跋多羅寶經[註] 卷3 5 天平12年寫(藤原光明子令寫) 他
Ⅱ 漢籍旧鈔本(15点)
春秋經傳集解 文永4至5年寫([北條篤時]令寫)
古文孝經 永仁5年寫(宋錢塘呉三郞入道)
史記[集解] 卷79 [鎌倉]寫
貞觀政要 卷1 [建治3至弘安元年]寫
群書治要 [鎌倉]寫([北條實時]令寫等)
文館詞林 卷668 [弘仁14年]寫 他
Ⅲ 宋 版(70点)
尚書正義 [宋孝宗朝]刊([浙])
御注孝經 [北宋]刊
三國志 [南宋]刊
通典 [北宋]刊
太平寰宇記 [南宋]刊([蜀])
楊氏家藏方 宋淳熙12 年跋刊
論衡 [宋孝宗朝]刊([浙])
太平御覽 宋慶元5年跋刊([蜀])
[大藏經] [北宋末]刊(福州東禪等覺院 開元禪寺)
正法眼蔵 [南宋前期]刊
寒山詩集 [南宋]刊
歐陽文忠公集 [南宋]刊
誠齋先生南海集 宋淳煕13年跋刊 他
参考文献一覧
後 記(宮内庁書陵部蔵漢籍研究会 代表:住吉朋彦)
執筆者一覧(*図録編・五十音順)
會谷佳光
上原究一
大木康
大木美乃
小倉慈司
金文京
黄昱
河野貴美子
佐藤道生
清水信子
住吉朋彦
髙田宗平
髙橋智
陳捷
堀川貴司
矢島明希子
柳川響
山崎明
山田尚子
(平成29年度日本学術振興会助成図書)
内容説明
◎宮内庁書陵部図書寮文庫収蔵の漢籍を通じて日本における漢籍受容と伝流の実態を明らかにする!――デジタルアーカイブ「宮内庁書陵部収蔵漢籍集覧」公開記念・研究成果論文集並びに図録解題
図録オールカラー図版 約300点、奈良朝写経・漢籍旧鈔本・宋版 計107書目収載
【後記より】(抜粋)
書籍文化の真骨頂は、息長いその伝流にあるのではないか。時々に生み出される書籍を集め、遺し、受け継ぐ営みには、書籍を生み出した力にも劣らない活力が伴っており、蔵書の形成と流転は、人文学の対象として省みるべき精神活動の表徴である。この流動は、今なお続き止むことのない将来への導線であって、書籍の真価と収蔵の実態を明らかにし、その軌跡を後世につなぐ役割が、当事者に求められるのであろう。本書の刊行に至る研究事業は、そうした書誌学研究の視点から開始された。
日本には多くの漢字文献が伝来し、これを支えとして展開された日本文化は、いわゆる漢字文化圏の一翼を成すことになった。その漢字文献の多くは、漢語の使用を基軸とする社会に向けてものされた書籍、いわゆる漢籍や漢訳仏典であり、それ自体、日本に流れ込んで文化形成の核となり、日本で著された書籍への影響にも色濃いものがあった。そこで、日本の書籍文化を考える時、古代以来の漢字文献収蔵の潮流は、その中心に位していた、と考えられる。
本書では、そのような視点に立ち、日本文化研究の中心的課題として、漢籍の収蔵と伝来を考えることとした。これは、中世の金沢文庫や、近世の紅葉山文庫、続く明治の新政府から主要な典籍を引継いだ、旧宮内省図書寮、現宮内庁書陵部図書寮文庫収蔵の漢籍を研究する上から、必要にして闕くべからざる認識でもあった。
本書の制作は、デジタルアーカイブ「宮内庁書陵部収蔵漢籍集覧―書誌書影・全文影像データベース―」(http://db.sido.keio.ac.jp/kanseki/)の構築過程で得た研究成果を詳述し、書籍として広く大方の参考を仰ぐために構想された。このアーカイブは、宮内庁書陵部と、宮内庁書陵部蔵漢籍研究会の協定に基づき、平成24至28年度日本学術振興会科学研究費補助金・基盤研究(A)「宮内庁書陵部収蔵漢籍の伝来に関する再検討―デジタルアーカイブの構築を目指して―」および、東京大学東洋文化研究所付属東洋学研究情報センター共同研究(平成24至25年度)日本漢籍集散の文化史的研究―「図書寮文庫」を対象とする通時的蔵書研究の試み― 」、同(平成26至27年度)「 日本所在漢籍に見える東アジア典籍流伝の歴史的研究― 宮内庁書陵部蔵漢籍の伝来調査を中心として―」 の成果として作成され、平成28年(2016)6月4日をもって、ウェブ上に公開されたものである。(中略)
本書に取り上げた図書寮文庫収蔵の漢籍は、これまでにも幾度となく著録と研究を経てきた、隠れもない名品であって、論説編の各章や、図録編末尾の参考文献一覧に掲げたように、近代以降も先学の著しい業績が重なっている。そこに、新しい知見を加えることは容易ではなかったが、本研究では原本の全容に基づくことで、その端緒をつかもうと試みてきた。本書の著者各員は、それぞれの学識を手がかりとし、そうした困難な課題に取り組んでおり、研究会の代表、また本書の編者として、各員の論述や著録が、学術研究進展の一階梯となることを確信している。(以下略)
(平成29年度日本学術振興会助成図書)